IFエピソード 「夕映のリベンジ」

これは、まだ麻帆良祭の真っ最中、142時間目頃(虚構の未来の辺り)に構想したエピソードです。
つまり、今となっては全く価値がありませんw。

  • 第1章 ドラゴン

時は、麻帆良祭も終了して数日後。チームネギ坊主は危機に陥っていた。
場所は、図書館島最下層、あのナギの手掛かりがあるという、扉の手前。クウネルの招待は実に意地が悪かった。ただ自分の居る場所を示すのみだったのだから。
そう、ネギ達は今、あのドラゴンの前に居る。
ドラゴンとは、ただ大きいだけの魔獣ではない。その巨体には膨大な魔力が内包され、その存在自体が正に魔術的なモノ。いかな達人であろうとも、いや、それなりの大魔道士であったとしても、その行動を制御する事は、不可能に近い。
ネギ:刹那さん、危ない!!
チームの第一線に立ち、ドラゴンの足止めをすべく立ち回っていた刹那だが、その顔には、既に苦悩と絶望の表情が浮かんでいる。
楓:刹那・・・
サポートに回っている楓の表情も暗い。気付いているのだ。
刹那:(これは・・・無理だ。)
自分が神鳴流剣士として、未だ未熟者である事を痛感せざるを得ない。いや、魔を打つ神鳴流剣士だからこそ、対策を誤った時の反動が大きい。ドラゴンと魔物の違いが、これほどとは思っていなかったのだ。
刹那:ネギ先生
刹那はネギに、お嬢様を連れて逃げてください、と言いたかった。ネギは、自身の非力を自覚し、先鋒を刹那に任せてくれた。木乃香や他のメンバーと共に、大魔法を撃てる機会が巡ってくるのを、辛抱強く待ってくれていたのだ。しかし、それももう限界だろう。ネギは、クラスメイトを、仲間を見捨てて逃げる事の出来る少年ではない。もちろん木乃香、明日菜達、他のメンバーも同じだろう。
ここまで戦ってしまい、ドラゴンに手傷を負わせてしまえば、ただ逃げる事は不可能だ。自分のピンチはメンバーのピンチなのだ。今ここに集まっているチームのメンバー、木乃香、ネギ、明日菜、のどか、楓、くーふぇい、その全員が危機に晒される。刹那はその事実に気付き、自分が陥っている状況に絶望した。
明日菜:私、もう我慢できない! いくよ!!
明日菜は、刹那とドラゴンを食い入るように見つめながら、言外にネギからの魔力を要求する。ネギは、あえて明日菜への魔力供給を抑えているが、明日菜は、一瞬後にでも強引に魔力を奪って飛び出してしまうだろう。自分が何も出来ない事を知りながら。
しかし、飛び出したい衝動はネギ自身にもある。明日菜を押さえるという思考が働いているからこそ、自身も我慢しているだけなのだ。
ネギの傍らでは、身体を大きく震わしながら、木乃香が刹那の絶望的な戦いを、ただ耐える様に見つめている。
そんな木乃香の腕を、のどかはしっかりと掴んでいる。ただ、それは木乃香を安心させる為なのか、自分の恐怖を紛らわせる為なのか、彼女自身にも分からないだろう。
くーは、自分の無力を実感しながらも、真剣な表情で自体の推移を見守る。最悪、非戦闘員である木乃香とのどかの身だけでも庇う必要がある。
この場に、同じく戦闘力の低い夕映とパルが来ていないのは、不幸中の幸いだった。彼女達は、新しく手に入れたAFを調べるとかで、ここ数日姿を見せていない。最悪の事態になったら、くーは木乃香とのどかの二人を担いで、絶望的な逃走をする事になるだろう。
ドーン!!
木乃香:せっちゃん!!
ドラゴンの爆炎とも言えるブレスで、刹那の最後の結界符が破られ、その身体が大きく吹き飛ばされる。
刹那:ぐっっ、来ないで!
ネギ・明日菜:刹那さん!!
もう限界だった。
ネギと明日菜は、同時に飛び出す。ネギは明日菜への契約執行を開始する。それが絶望的な死地に向かう際、何の意味も無い、矛盾した行為である事を承知しながら。
その時、
「待つです!!」
図書館島最深部の大坑道の中に、少女の声が大音響で響き渡った。

  • 第2章 救世主

その声は、魔法で拡声しているのだろう。我を忘れて飛び出したネギ達すらも引き止める力を持っていた。
のどか:夕映!
楓:うむ・・・
楓の顔が曇る。
そこには、魔法のフードを身にまとい屹然と立つ夕映と、ベレー帽をかぶり、余裕たっぷりの顔をしたハルナがいた。
さっきの大声で、皆の視線がこの2人に向かう。そして、それはドラゴンも同様だった。ドラゴンの目には、痛めつけられた鬱憤を晴らす新たな獲物の登場に映っただろう。事態は更に悪くなったと言える。
ドラゴンは咆哮をあげると、2人に対して突進を開始した。
のどか:!!
しかし、次の瞬間、意外な事が起こった。
夕映が胸の前に小さな壷をかざし、なにやら呪文を唱えたとたん、2人に向かっていたドラゴンの体が大きく傾いだのだ。
そのまま、大音響と共に倒れ、動かなくなるドラゴン。
大坑道内は、一瞬静寂が戻ってくる。
明日菜:・・・た、倒したの?
到底信じられない思いで、明日菜はつぶやく。それは、この場でドラゴンと対峙していた者全てが、そう感じている事だろう。
しかし、夕映は淡々と言葉を返す。
夕映:まだですよ。気を失っているだけです。
その事自体が、既に信じられない程の偉業と言える。唖然とする一同。
夕映:不覚ですね、刹那さん。
夕映は続ける。その言葉は他意の無い淡々とした物だが、刹那にとっては厳しい。
夕映:西洋龍にはそれ専用の準備が必要ですよ。一寸した準備があれば、力押ししなくても眠らせる事くらいはできるです。
明日菜:じゃ、じゃあ・・・
明日菜に喜びの表情が浮かぶ。
明日菜:助かったのね。これで私たち、クウネルさんの所に行けるのね。
わっと、喜びの声をあげようとする一同。しかし、
夕映:まだです!
夕映が一喝する。そのまま、すたすたとドラゴンの方へと歩き出す。
夕映:時間がありませんです。皆さんはその場を動かないでください。木乃香さんもですよ。
木乃香は、刹那の状態が心配で、走って向かおうとしていたのだ。
明日菜:ちょっ、ちょっと、どういうことよ。夕映!
明日菜の問いを無視して、昏倒しているドラゴンの周りを遠巻きにうろつく夕映。
明日菜:ねえ!
いらだつ、明日菜。そこにハルナが声を掛ける。
パル:あのドラゴン、ギアスがかかっているんだってさ。
のどか:・・・パル! 今までどうしてたの?
ハルナ:ゴメンねぇ、のどか。ゆえっち探求モードに入っちゃってさ、もう、他の事完全に頭に無いのよ。私も、都合が良いとかでつき合わさせて、えらい目にあったわ。
ネギ:ハルナさん、ギアスというと・・・?
パル:え?そうそう。あのドラゴン門番役でしょ。魔法で強制されているらしいのよね。今はねてても誰かが門に入ろうとしたり、大きな魔力を感じたら、魔法で起こされてまた向かってくるってわけ。寝起きのドラゴンて、より凶暴になるらしいよん。
物騒な事を平然と言うハルナ。
のどか:じゃあ・・・
パル:うん、状況はそんなに変わってないんじゃない?まあ、尻尾巻いて逃げるのなら、今だけどね。
明日菜:なら、夕映は何やってんのよ。
その時、夕映がハルナを呼ぶ。
夕映:ハルナ、こっちに来るです。
パル:はいはい。
さも仕方なさそうに、夕映の方に向かうハルナ。手をひらひらさせながら、後姿で呟く。
パル:竜をただ眠らせるならば、いくらでも出来る。けど、それで駄目ならば・・・
ネギ:それって! もしかして、夕映さん!!
ネギの声が届いたのか、夕映は少しはにかんだ微笑を浮かべて、ネギのほうを向く。
夕映:はい、ネギ先生。このでっかいトカゲは、これから私が、倒すです・・・

既に、手傷を負った刹那は、気配を殺した楓が少し後ろに下がった木乃香の元へ届けている。木乃香は魔力を抑え気味に刹那の手当てをする。
ネギと明日菜、それにのどかは、その場を動けないでいた。下手に近づいてドラゴンが覚醒すれば、もっと近くに居る夕映達が危ないし、かといって後ろに下がる気にもならない。
夕映の作業は着々と進んでいるようだ。
エヴァ:どうやら、間に合ったようだな。
ネギ:師匠!
明日菜:エヴァちゃん!
そこには、エヴァ茶々丸が居た。茶々丸は浅くお辞儀をする。エヴァは、近くまで茶々丸に乗って来て、そこから歩いてきたらしい。
明日菜:夕映ちゃんにあの魔法を教えたのは、エヴァちゃんなの?
エヴァ:ふん、だからどうした。
若干非難がましい明日菜に少し気色ばむエヴァ。しかし、このバカは相手にしても仕方が無い、と思い直す。
エヴァ:何も教えて無いよ。教えを請いに来たのは確かだがな。やつめ、実際に欲しかったのは、私の別荘に居る「時間」だったのだろう。そんな無礼な奴は、本来なら取り殺してやるのだが・・・。
「利害が一致しているので、ある条件を付けて受け入れてやった」とエヴァ麻帆良祭も終了し、魔力を失ったエヴァにとっても、アルの招待は意地が悪い物だったのだ。
のどか:そ、その・・、じょ、条件って、なんですか?
のどかが恐る恐る訊く。エヴァはのどかを一瞥すると、殊更無視してネギに言う。
エヴァ:ぼうや、おまえの魔法戦闘スタイルは、前衛メインが希望だったな?
ネギ:?・・・、ハイ。
エヴァ:その戦闘スタイルで、最も求められるのは何だ。
ネギ:まずは攻撃を相手に当てる事。つまりスピードです。
エヴァ:そうだ。前に出て殴りあうのなら、まずは当てなければ意味が無い。もちろん、避ける事も重要、つまりスピードが求められる。しかし、後衛魔法使いのスタイルは違う。
ネギ:スピードでなければ、何ですか? もしかして、夕映さんにはそれがあるんですか?
エヴァ:奴は優秀だぞ、ぼうや。奴は来て早々こう言った。「ドラゴンを倒す方法を見つけるまで、ここに居たい」とな。それは私にとっても都合の良い話だった。ぼうや達が失敗する可能性は高いからな。だから、こう条件をつけて許してやった。「方法を見つけるまで、外界と接触するな」と。奴は無言でその条件を飲み、私の図書室の中に潜り込んで研究に没頭し始めた。
・・・一同は、エヴァの話に聞き入る。
奴は気に食わない奴だが、あの集中力は評価しないでも無いな。後衛魔術師に求められる物はな、ぼうや。大魔法を練り上げる為の持続力だ。例え、どんなに自分の魔力が貧弱でも、優れた後衛魔術師はそれをハンディキャップにはしない。魔道は理論によって生み出され、理論は積み重ねる事が出来る。魔術は知識によって練り上げる事が可能であり、それは単なる魔力の大小など問題としないレベルまで高める事が可能なのだ。それに、奴の持っているアーティファクトも絶妙すぎるな。あんな後衛魔術師の手に渡れば、想像も付かない力を発揮するだろうというものだ。
・・・エヴァは何時に無く饒舌だった。夕映という奇妙な逸材を見つけて、上機嫌なのかもしれない。
エヴァ:奴のやる事を見ておくんだな、ぼうや。きっと良い勉強になるだろう。
アルの鼻を明かす事ができるのも手伝ってなのだろう、ネギと明日菜は、夕映の事をべた褒めするエヴァに驚きを隠せない。
ひとしきりエヴァが語り終えた後、のどかはエヴァに訊く。
のどか:夕映はいつから修行していたんですか?
エヴァ:・・・こちら側で三日ほど前かな。
茶々丸:正確には3日と4時間前です。時間に直すと76時間。別荘の中では・・・
ネギ:76日間。二ヶ月半・・・。その間ずっと、たった一つの魔法だけを研究していた・・・
のどか:夕映・・・
のどかは、作業をしている夕映の姿を、改めて見つめ直した。

  • 第4章 リベンジ

準備が完了した。
夕映:いくですよ。
夕映にとっての、ここ数ヶ月の集大成のはずであろうが、特に感慨は無い。行うべき事があり、それが大切な時ほど、心を冷たくする必要がある事は心得ている。ハルナは、さすがにドラゴンの目の前で軽口を叩く気は無いのだろう、憮然とうなずく。一瞬の躊躇も無く、夕映は呪文詠唱を開始する。
魔力の高まりが生じ、ドラゴンの回りには魔法陣が輝き始める。
ゴグアァァーー!!
ドラゴンの身体が一瞬痙攣したかと思うと、耳をつんざくような咆哮が響き渡る。ドラゴンがギアスによって叩き起こされたのだ。
夕映が詠唱を続けながら、ハルナのほうを向く。
パル:おーけー!
ハルナは夕映からの合図に応える。彼女の手に持つ「落書帝国」を掲げると、
パル:パル特性、「魔法トカゲトリモチ君」ズ、起動!!
ドラゴンの周りに円を描くように、地面から白くて細長い物体が伸び始める。まるで、うどんかそうめんのようなそれは、パルがアーティファクトで作ったゴーレムのようだ。それらは、ひとしきり上に向かって伸びると、その後ドラゴンに向かって倒れ掛かる。ドラゴンは、細い白い糸のようなもので覆われた形になる。
そんな貧弱な物は、ドラゴンに対して何の役にも立ちそうに無い。ドラゴンも、少し鬱陶しそうに身体をよじり、それを振り払おうとする。しかし、それはドラゴンの身体にピッタリと張り付き、払い落とす事が出来ない。それどころか、地面にも繋がっており、ドラゴンの自由を奪っている。
ガアァァァッッ!!
トリモチ君ズは伸縮自在のようだ。ドラゴンの怪力は受け流されて、思うように動けないでいる。
ネギ:あれは何ですか?
エヴァ茶々丸、説明してやれ。
エヴァは、さきほど喋りすぎた事を、少し後悔しているようだ。少し憮然としている。
茶々丸:夕映さんは平均的なドラゴンの身体能力を調査しました。その結果、短期間ドラゴンの自由を奪う事のできる強度の捕獲用ゴーレムを開発したようです。ゴーレムの起動は魔力波動も少なく、今回の件には適していたようです。「落書帝国」は、それを安価・大量に用意するのに最適であると、ハルナさんの別荘召喚もマスターが許可しました。また、夕映さんは、ハルナさんの「落書帝国」に、もう一つの役割を与えています・・・
茶々丸がハルナ達の方を見やる。
パル:夕映、次いくよー。
夕映は暴れるドラゴンを見つめ、呪文詠唱を続けながらうなづく。
パル:作戦第二段、呪文詠唱ゴーレム「マンドラゴラ君」ズ起動!!
パルの「落書帝国」から、大根に手足の生えたような生き物が数体飛び出す。それらは、夕映の周りに陣取ると、のっぺらぼうな身体に唯一つだけついている大きな口を広げて、夕映の唱えている呪文を復唱し始めた。夕映の唱える呪文詠唱がより強くなる。
ネギ:師匠、これって!!
エヴァ:ああ、そうだ。「雷の暴風」だな。ただ、うちらが戦闘中に唱える簡易呪文とは違う。正式に精霊達に伺いを立て、その力が集うのを待つ、本来のやり方だ。同じフレームを数回繰り返すこの詠唱は、最も正式な形の物だろう。
ネギ:けど、ドラゴンにただ雷の暴風をぶつけただけでは、倒せるとは思いません。
エヴァ:まあ、そうだな。そこは工夫のしどころだろう。本当はもっと効率の良い方法もあるのだろうが、奴はこの呪文で倒すことにこだわった。何故だろうな?
「にやり」とネギの方をみやるエヴァ。ネギは、分かっているのかどうなのか、曖昧な表情を見せる。
エヴァ:そうだ、ぼうや、奴に自分の魔力が流れている感覚はあるか?
ネギ:そういえば・・・、特に感じません。
エヴァ:ふむ、どうやら地脈からの魔力供給も上手く行っている様だな。ここは世界樹の根っこの中だ。地脈を捉まえられれば、自身の魔力など、ほとんど不要だろう。
確かに、ネギから見ても夕映の周りには、彼女に不釣合いなほどの膨大な魔力が集約しているのが感じられる。
ネギ:けど、このまま大魔法をぶつけても、ドラゴンの魔法障壁に遮られてしまうはず・・・
魔力の高まりに反応し、ドラゴンの暴れる力は更に強くなっている。ドラゴンの地団駄により、大坑道内はまるで大地震のように地面が揺れる。
その時、夕映が呪文詠唱を中断する。
ネギ:え?
しかし、ハルナのゴーレム「マンドラゴラ君」がその続きを唱え続ける。夕映は、その間、新たな呪文を唱え始める。それはどうやら、ドラゴン専用の魔法障壁キャンセル呪文のようだ。
ネギ:そうか!
「雷の暴風」の正式な呪文詠唱は、既に繰り返しのフレーズに入っている。それは、ただ呪文の威力を高める為だけではなく、ゴーレムに詠唱を肩代わりさせる事を可能にさせる為でもあったのだ。
これは一種の「遅延魔法」と似たような効果を発揮するだろう。しかし、「雷の暴風」のような大魔法の遅延魔法など、本来出来る物ではない。
ドラゴンの抵抗は、もう限界まで高まっていた。「トリモチ君」ズも地面から引き剥がされ始め、一瞬後にでも、その拘束力は無くなってしまいそうだ。
しかし、その時、夕映も障壁キャンセル魔法の呪文詠唱を完了する。
ネギ:夕映さん!
明日菜:夕映ちゃん!
のどか:夕映!
夕映が振り向くと、皆が見守る中、ハルナがゴーサインを出しているのが見える。
夕映は、ドラゴンに向き直る。ドラゴンに取り付いていた「トリモチ君」達は、ほとんど引き剥がされている。
夕映:いくですよ、デカトカゲ!いつかの借りを返すです!
「マンドラゴラ君」達の呪文詠唱のフレーズが終わりを迎える。ドラゴンは完全に自由を取り戻し、自分の敵が夕映である事を認識している。
夕映:ドラゴン特性「雷の暴風」!!
今にもドラゴンが夕映に喰いつこうかといういう時、夕映の元から、ドラゴンの障壁をキャンセルする魔法を伴った、特性の「雷の暴風」が放たれる。
グゴガアァァァァーー!!!
坑道内が魔法の光に溢れる中、巨大な魔力の奔流に晒され、ドラゴンが苦悶の咆哮をあげる。
夕映自身も、自らの魔法の衝撃で後方に吹き飛ばされる。
誰もが、そこで何が起きているのか、把握できないでいた。
そして・・・
魔力の嵐が収まり、坑道内に静寂が戻る。
そこには・・・、完全に意識を失っているドラゴンの巨体が横たわっていた。

  • 第5章 親友

ネギ:夕映さん!
明日菜:夕映ちゃん!
歓声をあげながら、夕映の周りにネギ達が集まってくる。
夕映は、地面にへたり込んだまま、自分が倒したドラゴンの、山のように大きな姿をぼんやりと眺めていた。
夕映:やった・・・デスか。
明日菜:そうよ、倒したりよ、あのドラゴンを!凄いじゃない、夕映!
ネギ:凄かったです、夕映さん!
楓:完全に昏倒しているようでござる。ギアスとやらが残っていたとしても、起き上がる事は当分ないでござろう。
メンバーが次々に声を掛ける。
刹那:夕映さん、ありがとうございます。
刹那も、傷の治療を終え、木乃香、くーふぇいと共にやってくる。
木乃香:ありがとうな、夕映。
夕映は、皆から声を掛けられても、なかなか実感出来ないでいる様子だった。
そんな中、メンバーの間からのどかが姿を現す。
のどか:夕映・・・
夕映は、初めて気付いたかのようにハッとする。
夕映:のどか・・・
夕映はあわてて立ち上がると、のどかに話しかけようとするが、最初は上手く言葉にならない。
夕映:のどか・・・、今まで連絡できずに、申し訳なかったです。本当は相談したかったのですが、これには事情があってですね、連絡できずにいたです。その事情というのは、つまり、ドラゴンを倒す魔法を手に入れるにはエヴァンジェリンの別荘で勉強する必要があってですね、それをお願いする替わりの条件として、エヴァンジェリンから・・・うぷっ
言葉を続けようとする夕映を、のどかは抱きしめる。
夕映:・・・のどか?
のどかは、夕映を抱きしめながら、泣いている様だ。
夕映:のどか・・・、泣いてるですか?
のどか:ううん。
夕映:相談しなくて、ごめんなさいです。
のどか:ううん。
夕映:のどかには、最近あやまってばかりですね。
のどか:ううん。
夕映が声を掛けても、のどかは首を振るだけだった。
そんな2人をそっとしておくべく、メンバーは2人から離れる。
その内、落ち着いたのだろう、のどかの手が緩む。
夕映:のどか、本当にごめんなさいです。
のどか:夕映・・・
のどかは、夕映から身を離すと、夕映の顔を見つめる。
のどか:夕映・・・、背、伸びたね。
夕映:え? そんなこと、分かるですか。
夕映は、意外な事を言われて驚く。
のどか:わかるよ。
のどかは、にっこりと微笑みながら言う。
のどか:私達、親友だもん。
・・・
END

本当は出すつもり無かったのに、最近の夕映の活躍が嬉しくて、つい出してしまった・・・。
実際に書いたのは現在。構想だけ頭の中にあった。もう少し校正すべきだろうけど、これだけ長文だとめんどうなので、まずあげてしまった。何か致命的なミスがあったら、修正するかも。
つーか、あげること自体がミスのようなものだけどw。
注1:このエピソードは、142時間目時点に明らかになっている設定を基にして作られているので、現在の設定と矛盾があります。
注2:例えば、ドラゴンはこんなに強くありません。
注3:出来るだけオリジナル設定は排除したつもりですが、独自の解釈も含まれています。
注4:このエピソードは、基本的に夕映が活躍する事だけを目的としています。
注5:よって、刹那ファンの人には、ごめんなさい。