堀江由衣クリスマスライブ〜由衣がサンタに着替えたら〜 両国国技館

まるで絵本の世界に迷い込んだようなイベントだった。
このイベントに参加して、そのステージが進む内に思った事は「なぜ堀江由衣は“ライブ”をやらないのだろう」という事。
「ライブ」と銘打ってはいる物の、このステージはほとんど「ミュージカル」に近い。シナリオに沿って堀江由衣を主人公にした物語が進行し、その中で歌が披露されている。この構成は前回のツアーライブの時も同じだった。そして、それ以前に堀江由衣が一般客に向けてソロライブを行ったのは、一体何時のことなのだろうか。
このミュージカル仕立てのライブを本当に「ライブ」と呼べるのかという事については、少し疑問がある。ライブとは、あくまで「自身の持っている音楽」、つまり音楽性をただ提示するだけの物であり、そこに物語などの他の意味を付け足してしまうと、それは「ライブ」というよりも「イベント」になってしまう。
堀江由衣は、もしかすれば自身の音楽性に自信が無いのだろうか。少なくとも「当代随一の声優アイドル」が行うライブとして、「ただ音楽だけ」では不足してしまうという事を恐れているのだろうか。いや、実際の所、彼女の声、歌の乗り、ビジュアル、どれをとっても充分魅力的であり、決してそのような事を気にする必要は無いだろう。これは、堀江由衣という人物の性格によるものなのかもしれない。より観客を楽しませるにはどうしたら良いのか。それを考えた時に、「自分の歌」を提示する事に加えて、「メルヘンな世界観」も提示する。ファンを最高に喜ばせるアイデアの為には、自身の音楽性もその材料の一部と考えてしまう。その考え方は、自分が歌手ではなく、あくまで声優であるという彼女の立場とすれば、実に真っ当な事なのだろう。
とは言え、やはり当代随一のアイドル声優たる堀江由衣による、「ただ音楽だけ」のライブというものを体験してみたいというのも、本心としてはある。
ステージは、そのような「絵本のような」ステージとして、とても楽しいものだった。
それも、「やまとなでしこ」や「Aice5」の歌など、堀江由衣が“係わった”楽曲すべての中のベストとも言うべきセットリストであり、正に堀江由衣の最大の魅力が詰まったステージだったと思う。
また、個人的に堀江由衣のライブには、彼女を見る他にもう一つの目的もある。
それは岡崎律子の楽曲を聴く、という事。
クリスマスイブの夜に、彼女の楽曲を聴き、そのコーラスに彼女の歌声を思い起こし、とても満ち足りた気分。これがある限り、堀江由衣のライブには参加し続けたいと思う。