フェイト美少女軍団は人を殺せるか

今回、224時間目において、フェイト美少女軍団の一人、調ことブリジットが読心術者ののどかの「排除」を考えていた。それは、のどかを拉致監禁するつもりだったのだろうか。それとも、命を絶つつもりだったのだろうか。
これはかなり大きな問題だ。
おそらく、従来の赤松健作品から推測すると、このフェイト美少女軍団は、十中八九人を殺せない、殺さないキャラになるだろう。赤松健作品は、基本的に娯楽作品である事を最大の目的とし、基本的に根っからの悪人が登場しない事になっている。クラスメイトと相対する年恰好の彼女達が人殺しだとすると、余計なストレスを読者に与える事になると考えられるからだ。
また、彼女達を人殺しにするという事は「子供の殺人」というテーマを作品内に持ち込むことになりかねない。それは、作品の雰囲気をより重くしてしまう。
さらに構成の問題もある。人が殺せるキャラが出てきたとして、それと相対するクラスメイト達が誰一人死なないでいるのは「あまりに不自然」となりかねない。何時か誰かが「死なねばおかしい」という状況に陥ってしまう危険性もあるだろう。
しかし、フェイト美少女軍団は人を殺せるキャラであっても良いのでは無いか、と思える。
一つには、フェイトというテロ行為をも辞さない人物に付くキャラとして、それなりの境遇と覚悟を持っているべきだから。
また、バランスの関係もある。現在、ネギま!において「ある面」で大きくバランスを欠いていると思われるキャラが一人いる。それは明日菜。明日菜はおそらく、過去に一つの国を滅ぼしてしまったアスナ姫と同一人物だろう。そうなると、明日菜はその肩に何万もの人の命を背負って生きている事になる。そんな明日菜の境遇と相対する敵として、同質の境遇と覚悟を持っている方がその存在意義も深まるだろう。
そして「子供の殺人」というテーマ。この様なテーマ性を、あえてネギま!に持ち込んで作品の幅を広げるという手段もあるだろう。かなりデリケートなテーマではあるが、現代の若者にとって単に興味本位で納まらない、重たいテーマと思える。
もちろん、クラスメイトの誰かを殺すべき、とか思っている訳ではない。ネギま!特有の娯楽性も、ある程度分かっているつもりだ。ただ、既にネギま!は、この程度のテーマを持ち込んでもぐらつかない、懐の深さを備えているのではないかと思える。赤松健の力量を持ってすれば、このくらいの設定は上手く料理できるのでは無いだろうか。
フェイト美少女軍団が人を殺すキャラだとすると、それはネギま!という作品にとって結構大きな冒険になるのかもしれない。けれども、やってみる価値はあると思える。