アイカツシステムの裏に隠された真のアイドルの戦いを夢想する

アイカツアニメも既に二期の最終盤に差し掛かっている。それに伴い「トゥインクル・スター・カップ」とか「2wings」とか「あかりの成長」とか色々と動きがあるみたい。
こうなってくると、ここは今までの総括として色々と感想を書きたいところなのだけれども、これが結構難しい。というのも、今のアイカツの展開は作り手の意図が見えづらい状況にあると思うから。
物語の意図が見えづらい。物語のどこかに違和感がある。そう感じ始めたのは美月が自分の目標ほ明確に口にし始めたころから。いや、美月の目標に違和感がある訳ではない。むしろ美月ならばきっとそのような目標を見出すはずと以前から感じていたくらいなので、実に順当な展開だろう。問題はそれに対する回りの反応。美月がその目標に向かってアイカツの「勝負色」をより鮮明にし始めたことに対して、それを肯定的に受け止めているいちご達まわりの反応に違和感を感じてしまう。
これはアニメ一期からの展開にも関わってくる。最初いちごは美月の姿に憧れアイドルを目指し、美月に迫るほどのアイドルになっていく。しかし、一期最終回でいちごは美月には勝てず、自分を見直すためにアメリカに武者修行に出る。いちごは二期に向けて美月を超える力を付けてくることが出来るのか、という展開だ。
ここで問題になるのが、美月を超えるには一体どうすればよいのかということ。アイカツシステム上の勝負を決めるパフォーマンス技術の高さや人を引き付けるオーラの量は、美月の言うように世の中そのものを意識したり人々を元気付ける覚悟によって決まってくるものなのか。
いや、そもそもアイカツシステムという、パフォーマンスを披露し合ったあとの人気投票の結果を、その数値だけをもってアイドルとして「超えた」という事が言えるのか。
美月の勝負に乗るということは、それら美月の言動を肯定することになる。その美月と同じ方向性の中で人気投票と言う数値勝負で上回ったとして、本当に美月に勝てたことになるのだろうか。
それはどこか違うように思う。いちごにはいちごなりのアイドルとしての良さがあり、それは決してアイドルとしての視野の広さとか覚悟とかが本質では無い。だからこそいちごはアイカツの主人公足り得ているとも言える。そんないちごが、言わば美月の単純再生産になる必要はまるでない。一期最終回のいちごの一念発起は、いわばいちごなりの可能性があることを示唆していたからこその展開だった様に思う。
美月は確かに正しい。正しい側面を持っている。しかし同時にそれは脆さや、場合によっては本質の取り違えに迷い込んでしまうほどの危うさを持っている。なぜなら、彼女の言っていることは、アイドルの外側だけでしかないから。多くの人に知られたい。伝説のアイドルを超えたい。社会現象のような存在になりたい。世の中を元気づける存在になりたい。これらは全て「アイドルの外側」だ。そして、その外側を形作るために、只々アイドルの「勝負色」を強めている。その考えのどこかに脆さや危うさがあるということについては、一期の「トライスター編」においても匂わせていたはずだ。
これらから考えると、アニメアイカツという物語としては、決して美月の指し示す方向性だけではなく、他の、想定としては主人公たるいちごの指し示す方向性が用意されていないとおかしいはず。それなのに、今の展開では誰もが美月の言動に翻弄され、いちご自身もそんな美月の勝負に積極的に乗る様子しか見せていない。それは大きな違和感であり、作り手の意図がどうしても読みづらい状況だと思える。
しかし、このような展開にせざるを得ない理由は、実は分からないでもない。それはアイカツという今後も継続し続けるゲームの世界観を壊したくないから。美月はいちごも含め誰もが憧れる存在という設定は動かしようがないし、なにより、アイカツというゲームはカードが命であり、点数が命。勝負事を否定すること自体ありえない。それはアイカツの世界観そのものの否定とも言えることなのだから。以前にも書いたことがあるが、アイカツはある意味「大人な物語」だと思う。大人が子供に与えるように作っている物語。子供が安心してアイカツのゲーム世界にいられるよう配慮するためには、このような展開を維持せざるを得ないのだろう。
しかし、それでも物語が動き始めるとそこにいるキャラクターは自らの意思で動きだし、物語の本質を提示してくるものだ。今「大人の事情」で表面上は無難な言動に終始しているとしても、その裏にはいちご達が感じている物語の本質が見え隠れするもの。
その一つの表れが「あかりのアイドルへの道」だろう。何ひとつ無い、ただいちごに憧れる心を誰よりも強く持つ少女。主人公いちごは、そこにこそアイドルの「何か」を見出し育てることになる。
それは「アイドルの内側」に関わる物語だと思う。アイドルの本質と言ってもよい。アイドルが他のエンターティナーと違う部分。人から愛される存在として何が大切かということ。それは主人公いちごが強く持っている部分であり、それが次なる主人公あかりへと引き継がれることにより、物語の本質として描かれ続ける事になるのだろう。
そして、その引き継がれること自体がいちごが美月を上回る本当の意味になるのかもしれない。
アイカツというゲームコンテンツに乗っている中で描かれている表面上のアイドル物語と、しかし、その裏側で確実に描こうとしている本質としてのアイドル物語。それを両立させているあたりが、アニメアイカツの凄い事だと改めて思う。

アイカツ!アイドル名鑑

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