[アニメ]涼宮ハルヒの憂鬱 第12話 ライブアライブ

この回凄いのは後半のライブシーンである事は当然だが、そこに行きつくまでに積み上げられた、構成の上手さも見逃せない。
この回の主役はあくまでキョンである。当たり前の事のようだが、他の回の彼の役割は主に傍観者であり事件の報告役に徹している。しかし、今回彼の心の変化が明確に表現されている。これはもしかするとこのシリーズを通じて(TV放映順では)初めての事ではないだろうか。この回だけでこのシリーズが最も描きたい事を表現しており、ある意味、集大成的な回といえる。
物語当初、キョンは彼にとっての学園祭における重大事をあげるが、それは単なるヤキソバ割引券の使用である。実質たった5分で彼にとっての学園祭は終了する。その後、あての無くなった彼は学園祭を身意味に過す。
このあたり、彼の学園生活に対する態度の結果が実によく現されている。彼はハルヒに代表されるような超常現象はもとより、「夢のある学園生活」すらも期待していない。それは実際の現学生の大多数にとっても同様であろう。だからこそ共感する部分がでてくる。
その後、キョンハルヒに徹夜で映画作りに付き合わされた事を理由にダウナーな行動を取り続ける。映像もしつこくそれを描写する。そして、そこにいきなりハルヒが登場する。このあたり、正に実際のライブの演出効果の定石どおりだ。無意味なトークで客の虚をつき、心が空白になった時に激しい曲をぶつけると、その衝撃は倍増する。ライブにおけるメンバー紹介など、一見無意味なコーナーも、単なる時間稼ぎなどではなく必要不可欠な演出効果。そういった事を良く理解した上で、構成しているのは間違いないだろう。
ハルヒの登場は、キョンにとっていつもどおりのあきれた行動に過ぎないはずだ。しかし、彼はハルヒの行動が人を乗せ、楽しませるのを見る。そして普段ではなかなか見る事の出来ない彼女の満面の笑顔も。
この時、キョンにとっての学園祭は、朝比奈さんのコスが見れた以外大して意味の無い学園行事、では無くなる。ハルヒの喜びがキョンにとってどの程度の価値があるのかは、彼の心の内でしか計れないが、それが彼にとってよい事であるのは、彼の指のノリで表現されている。
無茶な女の子に引きずり廻されて、灰色の学園生活に彩りが生まれる。これはキョンの側から見たこのシリーズの根幹だ。キョンの物語としてはこの回だけで充分完結しているといっても良いだろう。