綾瀬夕映について その二 恋のタネを掘り起こす

前に「その一」を書いてから3ヶ月たつ。遅れた理由は色々あるが、一番の理由は、書きたい事が多すぎてまとめる事が出来なかったから。今回書くのは、単にまとめるのを諦めただけ。「いつかは何かがある」さんの「夕映のネギへの恋の軌跡」に触発され、まずはこの事から書いてみたくなった。(書くにあたっても、「夕映のネギへの恋の軌跡」を多いに参考にさせてもらっています。)
内容は、題名のとおりかなり無粋。評論的にも対人的にも無粋なモノだが、書いている人間が無粋なのだから仕方が無い。
夕映はいつネギの事を好きになったのか。
夕映は、あの性格からも分かるとおり、そう簡単に人を好きになるタイプではない。それなりのきっかけが必要なタイプだ。(逆に言うと、きっかけがあると脆いタイプでもある)
読者に分かるような明確なきっかけとして描かれているのは、やはりラブラブキッス大作戦時(37時間目)の偽ネギからの告白だろう。この時ネギの事を意識してしまい、それが後の麻帆良祭時におけるネギへの助言シーン(87時間目)の、恋の自覚に繋がっていくという流れが、実に良く分かるよう描かれている。
しかし、このラブラブキッス大作戦時において、夕映は既にネギに対して「好意らしき物」を抱いている事を自覚している。また、本人が「好意」と思っているものが、かなり「恋」に近いものである事も、偽ネギから逃げられない態度からも明らかである。つまり夕映は、この時既にネギへの恋心をかなり強く抱いており、その気持ちを、親友のどかへの裏切りにならないよう、無意識に封印していたと見る事が出来る。事実、そのすぐ後、のどかの「いどのえにっき」よって覗かれた夕映の心境(38時間目)は、自分の感情(恋)の存在を既に自覚し、それを処理する事になれている風に思えるものである。
では、これ以前のきっかけはいつかというと、それを示す言葉が35時間目にある。夕映はネギの事を「最もまともな部類に入る男性」と評し、のどかとは別の言葉でネギの事を認めている。そして、このように感じるようになったのが一体いつかというと、それは図書館島探検の際、ネギがゴーレムから生徒たちを身を挺して守ろうとしたシーン(10時間目)であろう。
この時のネギの勇姿は、夕映を含むバカレンジャー木乃香しか見ていない。つまり、のどかが見ていないネギの姿を夕映は見ていることになる。また、夕映にとってこの少し前に足を挫きネギに背負われそうになった事もかなり重要だ。ネギが自分の年齢に関係無く、夕映を含む生徒達を被保護者として見ている、という事が夕映にはより強く感じられていたに違いない。
それまでの夕映は、ネギの事をのどかが好意を寄せている子供の先生、としか見ていなかっただろう。のどかが好意を寄せるくらいなのだから良い子供に違いない、程度だったのではないだろうか。しかし、この二つの出来事で「年齢は関係無い」「勇敢な面がある」という事に気づかされてしまった。実際、「男性」に身を挺して守られる、などという事はそう滅多にある事ではない。ここで夕映がネギに惹かれるのも当然といえるだろう。
そしてその後、夕映はネギが故郷に帰ってしまうかもしれないという状況に立たされる(11時間目)。これは一種の感情の確認作用となるだろう。もし、ネギがいなくなれば自分はどう思うのか、その事をしっかりと感じさせられたに違いない。この時、「恋心」といっても良い感情がそこに芽生えていてもおかしくは無いだろう。この時の夕映の様子は、ネギが麻帆良を旅立とうとする駅の改札のシーンに一コマだけ描かれている。皆が慌てた表情でネギに駆け寄る中、夕映だけがどこか戸惑いの表情を浮かべ、駆け寄る姿にも若干の躊躇が見られる。自分の感情に戸惑っていると見る事が出来るだろう。
ただ不思議な事に、この一連のシーンにおいて、この改札の一コマを除き、夕映の表情はほとんど描かれていない。意図的に隠されているといっても良いだろう。赤松健はのどかと夕映の三角関係は当初より案としてあった事を臭わしている。(ネギパ!2巻。明確には言っていない)つまり、ここに夕映の「恋のタネ」を撒いたけれども、芽が出なくても不思議ではない程度に隠していたのではないだろうか。もし、夕映のエピソードが描ける時が来たらしっかりとつながるように、こっそりと。
夕映はこのすぐ後のネギのパートナー騒動の時(15時間目)、ネギの気持ちを知りたい一団に混じっている。これはネギを好きなのどかの為では無い、「ネギ自身」を気にかける、明らかに自分自身の為の行動だろう。以前の夕映にはありえない行動だ。
しかし、その後夕映のネギに対する「感情」を感じさせるシーンは35時間目に至るまで出てこない。その間の感情は、出てこないのだから想像するしかないが、それこそ、その感情の処理方法の結論としては「いどのえにっき」に描かれたものだったのだろう。
今、その「恋のタネ」は芽を出し、ほんの少しづつではあっても成長中である。それが実を結ぶ事はかなり難しいだろうが、夕映には幸福な展開が来る事を願いたい。