魔法先生ネギま! 165時間目 マジカル悪戯魂 その2

素晴らしい。これぞ赤松流ダイナミズム、プロの力というモノだろう。
何事にもイイカゲンに接する事が「出来る」美空が、今いるネギに係わりのある人間の中で一番外側にいるという利点を生かして、物語そのもののケアをさせている。美空の役割は通風孔。2年にも及ぶ大長編となった麻帆良祭編で、ある意味袋小路に行き着いてしまうかのようなシリアスな流れを立ち切る為に、様々な事象をハッピーな方向に転換させている。
例えば、のどかと夕映の三角関係。ネギの根源的な悩みに通じて、後から来た夕映の方がネギと心を通わせているという事実。これはのどかの立場にとってみれば、(彼女がそれを知っている、いないに係わらず)暗い関係に立ち入ってしまう危うい問題だ。それをケアする為に、まずのどかが夕映とネギの関係をしっかり理解している事、その事に対してちゃんと嫉妬の心を持っている事、それなりの解決策試案(妻妾同衾w)を持てた事、を明確にし、さらには、パルやくーの様な精神面で心強い友人に知っていてもらう。ここまでケアされていれば、この二人はまだ暫く健全な関係を続けられるだろう。
そして誰よりも、ネギ。この少年は超との戦いの中で「父に会いたい」という願いの他に、「世界を救う」(w)という願い、いや、義務まで背負ってしまっている。10才の身に余る教師活動を抱えた上で、それを完全に上回る超重い使命を背負ってしまえば、そのやたらと真面目な性格ではパンクしてしまうのは必然。しかし、実際の所そんな重大なものが10才の少年の悩みなどという事は、傍から見れば滑稽とも言える。「ネギま!」という作品としては2年間かけて積み重ねてきたネギの立場ではあるものの、その美空の客観的な視点から見た可笑しさを上手く取り入れて、その重要なものを「ギャグ」に落としこんでいる。
実際の所、この「ネギの使命」は、「ネギま!」という作品にとっては作品が終わるまで、つまりネギ達の卒業式までの9ヶ月間に片付けるべき問題であろう。だから、それを今ネギに完全に断ち切らせる事は出来ない。けれども、物語としてはネギにはもっと様々な体験をしてもらい、気がついたら問題も片付いていた、という展開が望ましい。宿題となった「好きな子」もまさにその様々な体験の一つであり、美空はネギを、「ネギま!」という作品にとって実に的確な方向に導いた事になる。
それにしても、美空のお言葉はどれをとっても実に的確だった。ある意味、「ネギま!」という作品が袋小路に向かおうとしている危機に対して、一種の「超人」として活躍したとも言える。しかし、それも懺悔室の向こう側、それも「イイカゲン」な性格の者から「テキトー」な言葉として「偶然」生まれたとすれば、なんとなく納得してしまう。とは言え、そんな「偶然」を生み出せる資質を持つ美空は、案外シスターに向いているのかもしれない。
ところで、今回描かれたネギの心象風景もなかなか面白い。明日菜への想いは、彼にとって既に肉親に近いかのような雰囲気だし、アーニャはやはり無視出来ない存在のようだし、集合絵ではより深く愛情を注いでくれて関係性を持っているキャラほど大きく描かれているかのようだ。例えば、エヴァこそ彼に強い影響を与えている存在は他にいないだろうし、少し斜めに見遣っている表情も関係性そのままだ。夕映は、それ以上に深いつながりがあるにも関わらず、あまりに近すぎてネギ自身に被さり、ネギは彼女の真の心を知らずにいる。木乃香はストレートに大きな愛情を注いでくれているし、まき絵も無邪気に好意を向けている。亜子は少し別の方向へ好意が向かっているし、千雨はネギにとって未だその心が隠れている存在のようだ。面白いのがいいんちょだろう。この表情は、ネギ自身を見るものでは無く、ネギを通じて何か別のものに慈愛の念を注ぐ時のものだ。ネギ自身はいいんちょが自分に対して愛情を向けてくれる根源的な意味を薄々察しているのかもしれない。そして、麻帆良祭を通じてネギの心に一番アプローチしたのがやはりのどかだったということ。恋愛は結局能動的な者が勝つ。明らかにネギとの関係性に進展がありそうで、今後の展開に注目したい所だ。
さて次週、最後のリミッターが外れた刹那が遂にお嬢様を襲う(w)のか、それとも、呪殺されそうなほどの乳を持つゆーなの父の存在が明らかになるのか、はたまた、ちづ姉が賞金で手に入れた(?)大量のネギの使い方が明かされるのか。どんな気楽な展開でも受け入れられる流れになっているといえるだろう。美空には御苦労様。暫くはお空のお星さまになって見守っていて欲しい。アーメン。