elements3rdライブ『秋色オーケストラ♪』前夜祭 StudioCube326

うーん、困ったなあ。あまり正当な評価が出来そうに無い。それも悪い意味で。
実は、声優のライブについて一つ評価方法を決めている事がある。それは選曲について。
声優ライブの中で古い曲が使われた時、その曲が「その人の持ち歌ならば一流、他人のアニソンならば二流、アニソンでもない単なる懐メロならば三流」と考えているのだ。
なぜ、その様な事を思うのかというと、「アニメロを懐メロと考えるのが嫌」という事に繋がる。古いアニメを懐かしさだけで見返したりするのが嫌だったりするからだ。本人が持ち歌を歌うのならば、それが古い歌でも常に新しい存在として復活している事になる。しかし、他人のアニソンはどうしても「昔聞いた」という懐かしさに頼りがち。もし歌うのならば、自分なりの解釈をした「カバー」に昇華出来て無い限り、二流の選曲としか言えないだろう。そして、単なる懐メロならば、いわずがもがなだ。誰もが知っているという安心感で選びがちだし、客も乗りやすいと言えるが、実際には後に何も残らない。自らのライブを単なる「身内のカラオケ」に堕する、残念な選曲となってしまう。
今回のライブは、そんな三十代なら知っている懐メロにelementsのオリジナルソングを織り交ぜ、途中に串田アキラのソロライブショウが挟まっているような構成。クッシーの歌は、聞くたびに新鮮さを感じさせて全然OK。というか、やはりこのコーナーが一番盛り上がっていた。ところが、elementsのオリジナルソングに関しては、他の懐メロに埋没してしまい魅力的に感じない。懐メロより悪いという事ではなく、懐メロのノスタルジーに頼る力に引かれてしまい、独自の輝きが出てこないのだ。印象に残った曲は、下田麻美の歌う「声を聞かせて」くらいだろうか。彼女が必死なほどに自分の思いを込めて歌ったこの曲は、唯一といって良いくらい深く印象に残っている。
おそらく、彼女達の人気の源はやはり「ネギま」「アイマス」だろう。にもかかわらず、それらの楽曲を封印し、独自の世界を作ろうとする志しについては立派だと思う。しかし、オリジナルソングが足りない以上、他の楽曲を持ってくるしかない。そして、その選曲には、オリジナルソングを作るのと同じくらい、彼女達の「在り方」としてのセンスが問われるのだ。それを30代のオヤジがカラオケで喜ぶような楽曲で占めるのは勿体無さ過ぎる。「おっさんホイホイ」など、自宅でニコっている時くらいで充分だ。こんな僻地のライブハウスにわざわざ足を運んだのは、彼女達の先に繋がる活動を見たいからこそ。二人の係わる作品にまつわる曲だとか、自分の趣向を表現する思い入れのある曲だとか、まだライブでほとんど聴けない最新アニソンだとか、いくらでも選ぶべきものはあるだろう。そういった先に繋がるような楽曲を挟む事で、自身のオリジナルソングも先に繋がる力を得ていくはずだろう。
彼女達自身のパフォーマンスに関しては大いに評価したい。しかし企画力という点において、残念なライブに感じてしまった。

elements3rdライブ『秋色オーケストラ♪』後夜祭 StudioCube326

そんなこんなで、クッシーライブ以外は、個人的にぬるっとしたノリしか出来そうにないので、ノリを楽しむのはすっぱり諦め、彼女達のパフォーマンス見学に専念する事に。
下田麻美は、さすがアイマスからの出で、歌唱力についてはなかなかの迫力がある。狩野茉莉は、若干歌唱力におぼつかないところがあるものの、そこは独自の強烈過ぎる個性で充分以上にカバー。「まりまり空間」とも言える可笑しな雰囲気を作り出し、客を楽しませていた。
そして二人とも、どんな場面においても、なにより観客を楽しませようと一所懸命なのがよく伝わってくるのが嬉しい。トークにしろダンスにしろ、必死なくらい一所懸命で、それに見合ったエンターティメントになっている。そんな誠実さが、彼女達の一番の魅力と思える。
このライブ、そんな誠実さの表れなのか、あくまでelementsのライブという事で、彼女達の武器である「ネギま」や「アイマス」を利用しないストイックさで攻めている。しかし、もっと貪欲に、あつかましいくらいに自分の手にある武器を利用して、もっと上を目指して欲しいなどと感じてしまった。