鍵姫物語 永久アリス輪舞曲 第13話

がっくり。まったくトンデモ無い終わらせ方をしてくれるものだ。
副題「A Golden Afternoon」は、本来のアリスにおいては、物語に対するその物語を描いた現実の時を指すが、ここではこのシリーズを通じて綴られ続けていた物語の事を指すようだ。最終回において有人が書いた物語を1話を通じて描いている。しかし、それでは物語として全く展開していない。実に拍子抜けの幕切れだ。
実際の所、この物語は前回までの怒涛の展開で、物語に内包されている論理的設定の仕掛は全て使いきっているといえる。それであるからこそ、その後に残された、有人の心の問題が実に切なく、未処理の問題として存在していた。なので、最終回はその問題を、論理的展開を超えた感情的跳躍、いわゆる「お約束」によって解決する展開が待っていると推測していたのだが、このとんでもない物語は、物語として何もしない事によって、お約束すら覆している。本当に最後の最後まで意表を突く物語だったといえるだろう。
ただ、物語として予想を超える点では面白いのだが、ヒロインであるところの有栖川ありすの存在がぞんざいな扱いのまま終わってしまったのは実に哀しい。この終わり方では、主人公有人の本当の想い人が誰であったのかすら定かではない。設定からすれば、有人が物語世界から生まれた有栖川ありすに恋をした事によって超常的な力が生まれ、邪悪な存在とも対抗できた、という構造があるはずで、これが明確になればなるほど、物語に魅力が出たのだが、結局妹きらはの存在の方がクローズアップされていて、そのあたりがうやむやなまま終わってしまった感がある。妹きらはの実の兄に対する想いという倒錯性、またそのストレートな愛情表現を描く事の楽しさに作り手も惹かれてしまい、物語の本質が歪んでしまったかのようだ。もしくは、アニメ第二期等を視野に入れ、未完結性を求めたのだろうか。どちらにしても尻切れとんぼな印象があるのは確かで、決して褒められた終わり方でなかったと言うほかない。結末以外は実に魅力的な作品だっただけに実に残念だ。