The ROUDOKU 第3夜 『世界の終わりという名の雑貨店』 内幸町ホール

当然の事ながら清水愛が目当て。
原作はファッションとSEXに偏った、ある意味歪んだ、それでいて純粋なラブストーリー。スキャンダラスでもあるこの物語を清水愛がどう演じるのかと、少しドキドキしながら参加した。
ところが、そのファッションとSEXの要素が大幅に削られている。その為、本来の鮮烈さは無いものの、二人の男女の惹かれ合う心理がより繊細に表現された構成になっていた。
この物語の主役は語り部である主人公ではなく、あくまで清水愛の演じる「少女」。この物語は主人公の前に現れて鮮烈な生を見せつけ去っていく少女の存在そのものを描く事を目的としている。そして、その少女は物語の中では「声」を持たない存在である。彼女の言葉は書き文字としてしか現れない。この場合、読者の中でその少女の声は限定されず、想像上、全くの理想としての声を当てる事も可能になる。この少女に声をあてるということは、言ってみれば、天使や精霊に声をあてるに等しい。なんとも難しい役に挑戦するものだ。
はっきり言って、ファンである私の立場では公正な評価が出来ないのだが、この朗読劇における清水愛のキャスティングは絶妙だったと思う。衣服に対するこだわり、少し自信無さげな態度、耽美に通じる心、そして魅力的な可愛らしい声。「少女」と重なる部分が多々あり、実にすんなりとその声を受け入れる事が出来た。より穏やかな構成に変えることで、まさにこの「少女」は清水愛の為の役になっているといえた。
清水愛自身の世界がまた広がったような気がして、その世界を楽しむ者としては嬉しい限り。終演後、無性に清水愛のアルバム「発芽条件M」が聴きたくなり、リピートで聴きまくったり。