古菲は本当にバカなのか

ネギまクラスメイツの中で「バカ」といえば、まずバカレンジャー5人組を指すが、その中でも誰からも「バカ」と認識されているのが、「くー老師」こと古菲だろう。彼女は事あるごとにクラスメイトから「バカ」呼ばわりされ、彼女自身も持ち前の明るさから、それを甘んじて受け入れている。
しかし、最近、彼女は本当にバカなのか、と疑問に感じるようになってきた。
最初に気になったのが、15巻136時間目8pのセリフ
「わからなくなったネ。整理してもらえるアルカ?」
このシーンは、わざわざ「バカイエロー→」と表示されていて、一見、人の話が理解できない彼女のバカな面を表しているように思える。しかしこのセリフ、よく考えて見ると本当のバカからは出てこないセリフのように思う。
この時の話題は、超のとんでもない設定の数々であり、通常の人間であればそう簡単には受け入れられず、聞き返すのはごく普通の対応のように思える。そしてそのきき返し方。
「整理して欲しい」という要求は、つまり、「難しい物事も整理すれば理解も可能」という事を彼女が認識している事を意味している。
これは、彼女の普段の思考方法を表しているはずであり、普通この思考方法を身につけていれば、人からバカと呼ばれるような人間にはならないだろう。
ならばなぜ、古菲は「バカ」と呼ばれるのか。確かに彼女には「バカ」という印象が強い。そこで、過去の彼女の行動を見てみた。
すると驚く事に、彼女は「バカ」と呼ばれるシーンはとても多いのに、彼女自身が明らかにバカと思えるような行動をとっているシーンは、ごくごく少ない事に気がついた。それは、私の感じた限りたった2箇所。
一つは、バカレンジャーとして「英単語野球拳」に負けていた時。(7時間目8p)
しかし考えてみると、彼女の成績が悪いのは、留学生として日本語の勉強が大変、という立派な理由がある。これを元に彼女をバカと決め付ける事は出来ない。彼女は、元々バカレンジャーの中で最もその命名にふさわしくない立場にいる、と言っても良いのだ。
そしてもう一つは、ネギへの特訓シーン。(57時間目5p〜)
確かに、ここの彼女は「バカ」だ。ここぞとばかりに「バカ」呼ばわりされており、このシーンの印象で古菲=バカのイメージが定着してしまっているともいえる。
しかしこのシーンも、良く考えてみると少し奇妙だ。彼女はこのシーンのすぐ後、的確なネギの指導をしている。また、麻帆良祭の際の「ちびっこカンフースクール」(90時間目11p)でも子供相手に指導しており、相手に合わせた的確な指導が出来る事がわかる。そう考えると、古菲は、あえて無茶な特訓をしていたのではないかという推測が出来る。そしてその理由は、たった2日間で強くなりたいという、ネギの焦りを取り除く為、その無意味さを遠まわしに教えていたのかもしれない。
しかしもしそうならば、なぜ古菲は自分を道化にしてまでその事を言葉で直接伝えなかったのか、という疑問も沸く。そして、それこそが彼女の性格の面白さといえるかもしれない。
彼女がこの学園にきた目的は、武術において自らを高める為だ。そして彼女自身「一般人最強」と言われるほどの実力の持ち主だ。しかし、学園生活において、そのような力を持った人間がいたらどうなるだろう。普通は恐れられ敬遠されるに違いない。そこで彼女は、自分の中に「バカ」という「隙」をあえて作っているのかもしれない。最初は、日本語が分からず成績が悪かった古菲に、それを良いきっかけとして話し掛けてくるクラスメイトが嬉しかった、という過去などがあったのかも。
古菲は、クラスの行事に良く参加する。それはクラスメイトと仲良くしていたい、という彼女の願望によるものだ。そこに畏怖や遠慮が入り込まない様、あえて「バカ」であろうとする。ドッジボールの際、英子に無視されたのも(6時間目9p)、この彼女の普段の配慮があったとすれば納得がいくだろう。
武術を極めたいという志を持ちながら、同時に、人との繋がりも大切にしたいという、少し寂しがり屋の面もある少女。それこそが古菲の本当の素顔なのかもしれない。
今、そんな彼女が大切な親友を失うかもしれないという局面で、その素顔を表に出している。それは、「バカ」と呼ばれる普段の彼女の印象とは程遠い、実に切なげな表情だ。
そんな古菲の為にも、超には幸福な未来がくる事を願いたい。