TBSアニフェス2007に見るオタク大国日本の未来

TBSアニフェス2007に行って来た。これはもう例年行事の様になっている。
この手のイベントの面白みは、いろんな種類のアニメ作品に出会え、また、なによりその作品に対する観客の反応を肌で感じることが出来る事。
今年のアニメ作品の中で、一番気になった作品がある。「観客の反応」という意味で。
その作品は「ラブコン」。
漫才コンビのような関係のデコボコカップルが主人公のラブコメだ。
等身大の学生時代を描いた、実に正統派の青春ストーリーと理解してよいだろう。
ところが、この作品の紹介が流れるや否や、会場の温度が下がった様な気がした。明らかに、観客が白けている様なのだ。
その時、少し前に話題になった、あの記事を思い出した。

http://d.hatena.ne.jp/tobofu/20070722/1185086563

  • 時をかける少女』を見て死にたくなる人はほかの学園ものを見ても死にたくなるのか?

http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070724/tokikakeutu

自分の思春期はあんな楽しそうじゃなかったから、そういう作品を見ると死にたくなる…

この様に感じる人間が、今のご時勢結構な数居るというのは、とてもよく分かる気がする。
そして、この「ラブコン」は正に「時かけ」と同じ空気を、いやそれ以上の空気を放っていると言ってよいだろう。
その空気とは、つまり「恋愛至上主義」。
この「恋愛至上主義」は、二次元キャラに恋愛幻想を求めるオタクにとって、ある意味「敵」と言っても良いかもしれない。二次元キャラの恋愛描写はよいとしても、「恋愛至上主義」に支配されるキャラの恋愛模様は苦痛でしかないのだ。
それにしても、オタクは以前からこの様な作品に、こうもあからさまな拒否反応を示していただろうか。以前は、もう少し場を取り繕う様な反応を示したようにも思う。つまり「恋愛至上主義」に対し、自分達の方が引け目を感じていたと思うのだ。
そして、この事から少し前に参加した一つのイベントの内容を思い出した。

http://d.hatena.ne.jp/crow2/20070802#1186331108
この時、岡田斗司夫が語った情報で「30代までの独身率が50%を超えている」というものがあった。つまり、オタクは今まで少数派だったが、世の潜在的オタク層が今後多数派になっていくという事が、統計的に予想されているという。
会場の空気で感じた「恋愛至上主義」に対するオタクの負い目の無さは、正にこの事実を証明しているように思えたのだ。
ところで、この様な反応を示す観客にとって、この日一番の人気作品はというと、それは「ひだまりスケッチ」と「クラナド」だったと言っても良いだろう。
どちらも非常に出来の良い作品なので、人気があるのは当然なのだが、この二つの作品には、それ以外に一つ、共通するテーマが存在している。
それは、「擬似家族」。
どちらにも、家族から離れたり、家族が崩壊した者が、別の環境で、血縁関係が無い者と擬似的な家族を構成する、というテーマが込められている。
これは、「恋愛至上主義」を忌避する者にとって、正に理想の人間関係と言っても良いだろう。
「ラブコン」を否定する者が、これら「ひだまりスケッチ」と「クラナド」を熱狂的に支持するというのも、実に納得のいくところだ。恋愛を必要とせずに家庭を持てるという、正に夢を提供してくれるのだから。(クラナドの方は最終的に別の方向に行くだろうが。)
また、この日紹介された作品に「ベクシル」というSF3D映画があった。
これは、日本のロボット産業が先行しすぎてしまい、鎖国体制になってしまうという、ちょっとした未来予想SFだ。
けれども、今日のようなイベントに参加すると、この未来予想は間違っているとしか思えない。
その国の産業が発展するのは、基本として国力があるから。そして国力の源は人口だ。
今の日本に対して、この様な楽観的な予想は到底出来ないだろう。
もしあるとするならば、娯楽大国への道だろうか。
人口をどんどん減らしていく中で、オタク産業の技術力だけが増進し続け、国内においてはオタク産業に享楽する老人があふれ、国外においては闇で流れるオタク産業から転化したヴァーチャルセックス技術がもてはやされつつも当然忌避されて、文化的に逆鎖国されているとか。
オタク鎖国日本の誕生・・・。ありそうで怖いなあ。