悲しき“自虐の(?)守護剣士”刹那

187時間目において、刹那の目の前でネギがフェイトからの攻撃を受け、重症を負ってしまった。
刹那は神鳴流剣法の使い手として、また烏族のハーフとして、クラスメイト中エヴァに次ぐ絶大な戦闘能力の持ち主である。
それなのに、刹那が立ち会った戦闘において、残念な結果になるケースはかなり多い。
フェイトとの因縁で言えば、46時間目の木乃香の実家の、風呂場での遭遇戦。これによって刹那は自身が一番護りたい人、木乃香を連れ去られてしまう。
これはフェイトがあまりにも強いからか? しかし、刹那の失態はこれ以外にもある。
ヘルマン卿潜入事件の際、スライムの木乃香への擬態によって手も無く拉致されてしまう。(68時間目)
麻帆良祭でネギが暴走した際、後のネギに気付かず明日菜の捨て身に助けられて転倒し、その隙に明日菜はネギにあられもない事をされてしまう。(85時間目)
細かい事なら、もっとある。
修学旅行時、木乃香が風呂場でサル軍団に拉致されそうになった時、緊急事態にもかかわらず、後からネギに抱きつかれて転倒し、裸体を曝してしまう。(30時間目)
1週間後の未来に行った際、後から千雨に突っ込みを入れられてしまう。(139時間目)
武道会でのエヴァ戦における序盤、エヴァをみくびっていた事もあり、好きなようにされた事もあった。(107時間目)
刹那は、いざ戦闘になったらとことん強い。それは、これまでの彼女の戦闘シーンをみても明らかだ。
けれども不意を突かれた時、刹那はとことん弱い。それは、まるで呪いの様に彼女の戦歴に傷を付けている。
なぜ、刹那は不意打ちに弱いのか。
気になる描写がある。麻帆良祭における最初の超とのガチバトルにおいて、超がカシオペアを使って瞬時に刹那の鼻先に現れた際、刹那は何もする事が出来なかった。
戦いにおいて一番基本的な心構えは敵に対する攻撃心だ。訓練された戦士ならば、敵を確認した時、感情より先に手が出てしまいかねない。それなのに、ここでの刹那は驚きが先に立ち、攻撃の手を完全に止めてしまっている。
どうも刹那には、戦士にとって一番基本的な資質「攻撃心」というものが、決定的に欠けている様に思える。
刹那は根がとても優しい。この攻撃心の欠如はそんな刹那の性格の現れだろうか。ただ、今あげた数多くの事例を見るに付け、単に刹那の「優しさ」だけで説明できないようにも思える。「優しさ」による攻撃心のセーブならば、人を守る時までもセーブがかかるはずは無い。
刹那は、過去に非常に暗い記憶を抱えている。同じ烏族から「不幸の象徴」と言われる羽の色を理由に、子供の頃にかなりひどい迫害を受け続けていてた様だ。
もしかしたら、刹那の攻撃心の欠如はそんな迫害のトラウマによるものなのかもしれない。
「不幸を招く存在」と言われ続け、何事も悪い事が起きたら自分のせい、という性根を叩き込まれてしまっている可能性があるだろう。その為、彼女は戦闘の咄嗟の時、まず相手の攻撃を受けてしまう。それは、幼少の頃に叩き込まれた、内なる自虐心がそうさせているのかもしれない。
刹那は木乃香お嬢様の守護者を自任している。それは刹那の「全て」なのだともいう。
しかし、守護者とは「結果が全て」だ。どんなに能力があっても守るべき対象を守れなければ何の意味も無い。守護者は、例え彼我の差が圧倒的でも、どんな理不尽な状況に立たされたとしても、あらゆる手を使い、絶対的にその人を守る義務があるのだ。刹那には、そんな守護者の資質が決定的に欠落しているように思う。以前エヴァと手合わせした時、これほどのポテンシャルを持ちながらも「ネギに守ってもらえ」とまで言われた事(108時間目)の真意も、この辺りにあるのかもしれない。
刹那は何かにつけて受身であり、自虐的だ。それは一番気心がしれているはずの幼馴染み木乃香お嬢様に対して一線を引こうとしている態度からも感じられる。
しかし刹那が、そんな木乃香お嬢様を守る事の出来る守護者になる為には、その受身で自虐的な心を拭い去り、より強い心を持たなければならないだろう。それはおそらく、烏族ハーフであるという自身の劣等感を克服してこそ、成し遂げられるはず。
刹那が真の守護者になるには、更なる心の成長が必要と言えるだろう。
お嬢様を幸せにするには、自分自身も幸せになる必要がある、ということだろうか。