桃井はるこ LIVE'08 Sunday early morning SHIBUYA AX

桃井はるこはまだ迷っている。そんな感じがする。
彼女は何でも出来るが、それだけに何をすればよいのか、アンセブ解散後の自分の未来に、未だ疑問を持っているように思う。
それは、彼女のライブのセットリストにも現れている。普通なら自分のライブには自分のオリジナルソングを固めてくるものだろう。それこそが自分の世界なのだから。しかし、彼女はカバー曲をある程度織り交ぜる。それを一寸したファンサービス程度には収まらない重さを持って提供する。オリジナルソングも、極端に古い曲と新しい曲のばらつきを感じ、彼女が今進めている楽曲の世界の、先が見えないように思う。
ライブのMCも、どこか心ここにあらず、といった印象を受けた。彼女ほどの、この世界に達観した様な人間にして、まるで手探りでライブを進めている感じだった。
ただそれだけに、それらを振り払う為か、彼女は全ての楽曲に関して誠心誠意、がむしゃらに当たっており、それはそれで心を打たれるものが有った。彼女の持つエネルギーは凄まじい。その声のパワーだけでなく、客の心を強引に掴み、引きずり回すことが出来る「精神の腕力」がある。そのパワーに翻弄されて、会場の盛り上がりはかなりのものだった。
それでも、心の奥底でどこか釈然としないものが残るライブでもあった。やはり、桃井はるこが過去に置いてきた物は、かなり大きい。その穴を完全に埋めることが出来るのか、彼女の挑戦は未だ続いている様に思う。