スカイ・クロラ

やっと見た。
なんだか、押井守が目指している「映画」の集大成なのかな、と言った印象。
映画の雰囲気は「人浪」シリーズ、感覚は「BD」、テーマは「パト2」、みたいな。今までの押井映画の肝のような部分を混ぜ合わせて作っている感じがする。それでいて、ごちゃごちゃしてなくて、全体的にスマートな印象。
押井守の「これこそ世間に提示できる映画だ」、という自信の様なモノを感じたり。
しかし、それは今までの押井作品とは少し違う感覚のような気がする。押井作品は、良くも悪くも世間の評判などよりも、よっぽど自身の情念を優先させる尖がったもの。だから、世間が求めている以上のものが過剰に入り込んで、取っ付きは悪いけれども、強い「引っかかり」を感じさせる所が魅力と言える。しかし、この作品は一つ一つの「引っかかり」がどれも行儀良く収まっていて、あまり強い印象を与えない。
これは、強い焦燥感を抱える「子供」ではなく、子供を俯瞰する「大人」が作った映画と言える。つまり、今までの押井守こそ「キルドレ」であり、それを俯瞰する大人の視点を、今は彼がもったからこそこのような映画を作り得たような気がする。
ともあれ、押井守映画にラブシーンがあったのにはびっくりした。そして、これがあるだけでより映画っぽく見える辺りが皮肉な感じ。ここまで男女の恋愛感情が表に出ている押井守作品なんて、結局の所「うる星」まで遡らなければならないのでは無いだろうか。それこそ、押井守自身が「映画じゃない」と言っている「オンリーユー」くらいまで。