フェイトの目的と長谷川千雨の目的は同じ 〜「完全なる世界」の目的を推理する〜

今、ネギまは錯綜している。そんな印象を受ける。クラスメイトの半数を残して魔法世界に来てしまい、魔法世界においてもネギチーム+aはバラバラに行動中。フェイトという大きな敵は居るが、彼らの正体は未だ不明で、次にどう接触してくるのかも分からない。そんな中でラカンの過去編とかが展開し、新たな情報によって謎が整理されるのかと思いきや、更なる謎が噴出する始末。魔法界編に入った当初は、何はともあれ現実世界に帰還する事だけを目的としていたネギ達だが、知らぬ間にそれだけでは済まない状況に陥っている。なにより、読者の感情としてそれだけでは収まらないところだろう。
ネギ達の敵、フェイトは「世界を救う」と言っている。つまり、それを単純に無視するのは誤った選択かもしれないというかなり重い留意点がある訳で、無闇な断定が出来る状況に無い。現在、ネギはフェイトを倒すためにやたらと強くなっているし、朝倉たちは残りの仲間を探し帰り道を見つけるために情報収集に躍起だ。しかし、色々とやるべき事が多いように思えて、実際に「本当にやるべき事は何なのか」という事になると、もっと他にあるのでは無いかと思わずにはいられない。
今、読者が最も知りたい、知るべきなのは魔法世界の構造そのもの。ひいてはフェイト達「完全なる世界」の目的。それが分からなくては何が正しいのか分からないし、つまり、魔法世界でネギ達がどう戦っていけばよいのか分からない。これをすっきりさせない内には、現実世界に帰るにも帰れないだろう。
「完全なる世界」の目的・・・それを断定する情報は未だ出揃っているようには思えないが、それが分からないとどうにも落ち着かない。ここでは、無理を承知で一つの推測を提示してみる。

  • 「世界の始まりと終わりの魔法」は過去にも発動していた?

先の大戦時に「完全なる世界」は最終的な行動目的らしきものを実際に行使している。それは魔法無効化能力の所有者「黄昏の姫御子」を触媒(?)にした、「世界を無に返す儀式」「世界の始まりと終わりの魔法」の発動だ。つまり、この儀式によって実際に起こる結果が分かれば、「完全なる世界」の目的が分かった事になるだろう。
アルは「世界が終る」と言っているが、フェイトは「世界を救う」と言っている。その両者の矛盾をどう捉えればよいのか。少なくとも、文字通り「世界が消える」様な事ではないのかも知れない。そこで気になるのがネギが魔法世界に来て初めて飛ばされた地にあった遺跡群。もしかしたら、魔法世界においてこの「世界の始まりと終わりの魔法」は過去に何度も発動した事があるのでは無いか。そしてほとんどの人間が死に絶え文明が滅びるという大災害が過去にも起こっているのではないか。その大災害をもってアルは「世界が終る」と言っているのかもしれない。
では、その大災害を引き起こす儀式が、なぜフェイトにとって「世界を救う」事になるのか。そこで考えるべきは「黄昏の姫御子」の存在だろう。魔法無効化能力者である彼女の存在が核になる儀式だとするならば、普通に考えてこの儀式の本質は魔法を消滅させる事になるだろう。
魔法を消滅させる事が大災害になるのかという疑問もあるが、それ以前に気になるのが、なぜ消滅させねばならないのか、という事だろう。それを考えるには、「魔法とは何か」という事を考えてみる必要があるかもしれない。また、そうすればおのずと大災害についても分かってくるのでは無いだろうか。

  • 「魔法とは何か」が鍵を握る?

魔法とは何か? もちろん、この疑問は「ネギま世界における魔法とは」であるのは言うまでも無い。しかし、ネギまは魔法使いの物語であるにも係わらず、この疑問について考える為の情報はかなり少ない。
今まで提示されて来たものからピックアップしてみると「魔力容量は天賦の才」(60時間目)「大気に満ちる魔力を従えるもの」(92時間目)、「魔法発動体は自己と世界をつなぐ扉」(172時間目)など。これらから魔法とは魔力を使うもので、魔力とはほとんどの場合大気中に存在するものを取り込む事、であるらしい。
しかし、それらの魔法の前提が、どうやら表面的な認識らしいと思わせる新たな技が出てくる。それが「闇の魔法」。どうやら、闇の思考と魔法とは相性が良いらしい。闇の思考=魔力の発生というわけでも無い様だが、闇の思考を深く持つ事によって魔力と同化する事が「闇の魔法」。自然界にあるはずの魔力なのに、それと闇の思考が深く結びつくという事はどういう事なのだろうか。それを考えると、魔力とは人の思考、それも闇のような原初の思考と関連する、精神面と直接関係する存在なのではないか、という推測が生まれてくる。
そもそも、大気中にあるという魔力は、一体どこから生まれたのか。それは今まで明らかにされていない。それは、やはり人の精神から生まれているのでは無いだろうか。もちろん、それは個人としては微々たる物であり、それをそのまま魔法として行使するほどの量ではないかもしれない。しかし、それが過去の戦争や大災害などによって、多くの人の闇の精神から生み出されているとすればどうだろう。それが大気に滞積しているとすれば、そんな存在と闇の思考に親和性があると言うのも肯ける。
つまり、魔力は「精神世界から漏れ出した現実世界に影響を与える力」と考えると良いのかもしれない。

  • 世界の「異形化」を防ぐ?

「精神世界から漏れ出した現実世界に影響を与える力」。その様な物が実際に存在しているとすれば、それはかなり危ない事なのかもしれない。「闇の魔法」の本質からも、精神の力は闇である方がより強く働く。恐れや悲しみが具現化するという事に繋がるだろう。
例えば、魔族の存在とは、一体どのようなものなのだろう。彼らはあくまでも一個の生命体として存在している(精神体とかでは無い)様なのに、その姿はまるで人の恐怖心がそのまま具現化したような姿をしている。もしかしたら、彼らは魔力の影響が強い所に生まれたために、その影響が強く出てしまった、異形化した生命体なのかもしれない。
魔力の存在が強まれば強まるだけ世界は異形化する。それは何時か、精神世界との垣根を完全に無くし、現実世界の崩壊に繋がる。恐怖や悲しみが実在する世界、それは地獄そのものだろう。「完全なる世界」は、そんな世界崩壊を引きとめ、物理法則のみの「完全なる世界」を復活させる為に行動していると考える事が出来る。
これはつまり、「完全なる世界」の目的は、長谷川千雨の「私の現実を守る!」という目的と実は全く同じという事なのかもしれない。

  • 「魔法世界」は世界の浄化装置?

最後に、上記推測に基づいて、世界の成り立ちについても考えてみる。
前から気になっていた事に、ゲートポートテロ時の描写がある。ゲートが破壊された時、ゲートから魔力が流出しているとされている。画で見ると、魔法世界に魔力が流れ込んでいるようにも見える。魔法世界は現実世界に比べて魔力密度が高い世界のはずだ。なので、どちらからどちらに「流出」したのかは分からないが、少なくとも二つの世界には本来ゲートを通じて魔力の流れが存在していたが、同時にゲートによって制御されていた、と考える事が出来るだろう。
そう考えると、本来ゲートとは、現実世界からの魔力の汲み出し装置だったのかもしれない。そして、魔法世界は汲み出した魔力を除去する場所だったのかも。つまりゲートと魔法世界はセットで、超古代の文明が魔力の除去装置として作ったものなのかもしれない。
そして、「始まりの魔法使い」と「黄昏の姫御子」はセットでその装置の核となる存在。「始まりの魔法使い」は、魔法世界に充満した魔力を全て取り込んで魔法として行使することが出来る。「黄昏の姫御子」は、それを受け取って全てを無に帰す。その存在は、常に世界に存在するよう設定されており、死んでも生まれ変わったり、常に候補者が数名存在したりする。明日菜が元々そのような存在だったのに対して、現在のネギの急速な魔法力行使能力の向上も、実はこれに繋がる伏線かもしれない。つまり、ネギは最終的に「始まりの魔法使い」の役割を求められているのかも。
因みに、魔法世界ほどあらゆる場所に魔法が取り込まれている世界において魔力そのものが無くなってしまうと、全ての事象に影響が出てしまう。文明が崩壊するのは当然として、あらゆる魔法生物(亜人も含む)も絶滅するとか。
また、なぜ今回フェイト達が装置の要となるゲートを破壊したのかというと、それは前回失敗したから。既に想定以上に魔法世界には魔力が充満し、その為定期的な逆流出現象も通常の22年周期より1年早まる危険な状況。現実世界にどのような悪影響が出るかも分からず、また、今回は戦争という魔力増幅の手段を講じていないので、魔力対流を制御する為にゲート停止が必要だったから、とか。
さらに、超の目的はというと、この魔法世界は遥か遠未来の火星であり、近未来、超の時代に超古代から来た人類の侵略で、火星が魔力除去装置、つまり滅亡が繰り返される場所にさせられるという事件が有り、その時間を越えた人類間の侵略行為において、なぜか特異点ともいえる時代になっている現代に影響を及ぼす為、やってきたとか。(ちと苦しいがw、歴史改変が可能ならば、何が吉に働くかはどの様にでも設定できるはず。)
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これだけ書き綴っても、今のネギま全ての設定を網羅する事はかなわない上、非常に薄い可能性の推測にしかならない。「完全なる世界」の目的という、今絶対に欲しい情報一つでこのような有様だ。
考察一つするのに、本当に骨が折れるなあ。(^^;