今の「ネギま!」が、まるで「カイジ」みたいな事

もう、いい加減、ネギまが「ギャンブル漫画」である事に気付き始めた。実際には随分前から気付いていたから、思い知れされた、と言った方が良いか。
ネギまが萌え漫画というよりも燃え漫画=バトル漫画になりつつある、とか言われているけれども、実際にはその雰囲気はギャンブル漫画に近い。それも、滅茶苦茶でっかい借金を背負っている借金返済ギャンブル漫画。つまりこれは「カイジ」みたいな漫画だ。
事の起こりは、魔法界編への突入。ただ父の情報を知る為に「ピクニックみたいなもの」として魔法世界に旅立ったネギ達が、そこでテロリスト・フェイトに遭遇してしまう。これって、いわば「ヤー公のロールスにぶつけた」みたいなものか。これによってメンバーはバラバラな地に飛ばされ(拉致られ)、テロリストとして賞金をかけられるという、最悪の状況に陥る。つまりこれは、多額の借金を背負ったようなものだ。
そして、その借金返済の物語が始まるのだけれども、それは返済しても返済しても到底追いつかない、とんでもないカラクリが潜んでいた。いわゆる「無限債務」みたいなものだった。
まず、飛ばされたメンバーとの合流は、賞金稼ぎに狙われたり、死地をさまよっている者がいたりしたものの、なんとか順調に進む。これは、人が賭け金を付けられてゴールを目指すレースのようなものか。(カイジ「人間競馬 」)
しかし、その中に奴隷にされてしまっている者が居ることが判明。その身請金は魔法世界の紙幣で100万ドラクマ。正に借金を背負って、強制労働地下施設に沈められたようなもの。(カイジ「地下強制労働」)
その借金は全世界的な格闘大会の優勝賞金で返済可能という事を知り、お尋ね者の不自由さも手伝って、一も二も無く飛びつくネギ。しかし、それが無謀な賭けである事は、手練カゲタロウとの死闘により、腕一本の代償つきで思い知る。これは、正に指を落としたようなもの。(カイジティッシュ箱くじ引き」)
そしてネギは、借金返済のために更なる賭け、「闇の魔法」修行に走る。それは、自分の人生や命を賭けて、見返りに莫大な力を手に入れようとするもの。これはまるで、鼓膜や脳髄をかけたゲームの様だ。(カイジ「 Eカード」)
なんとか、その賭けをクリアーするものの、再度フェイトに邂逅したネギ達は、敵の挑発に乗ってより大きな目標をもってしまう。それは「フェイトを倒し、世界を救う」という、とんでもなく大きなもの。成り行きで魔法世界の水先案内人となっているラカンは、神にも匹敵する戦闘力を持っている自分と、フェイトはほぼ同格だという。そして、フェイトを倒すためには、俺と戦って勝て!とネギに挑戦してくるのだ。
ネギが負った借金は、気がついてみると、なんと「神(に匹敵する強さを持ったラカン)と戦わなければ返すことが出来ない」程に膨れ上がっていたのだ!!・・・これって、笑って良いところ?w
まるで、赤松健という胴元の思惑の中で、「ネギの強さ」という返済金が無限に膨れ上がっていっている感じだ。赤松健=兵藤和尊かw。
バトル漫画の基本的性質は、主人公の戦いへの欲求や正義への思いというプラス思考が根底に流れている。主人公が偽悪的な態度を取っていたとしても、その裏では熱い想いが有ったりする。しかし、今見たように、ネギまの方向性は全く逆だ。何よりクラスメイトを引率する責任のある「先生」ネギは、基本的にバトルを「やらざるを得ない」状況に追い込まれ、より大きくなっていく代償(=借金)の為に戦っている。これは、正にカイジのような借金返済ギャンブル漫画と言えるだろう。
実際の所、ネギ個人のキャラクターを見てみると、ネギまという漫画がこんなキリキリした展開である事はそれほどおかしな事では無いように思える。
カイジは、自分の落ち度で逆境に落ちても、自身が持つ「人間としてのプライド」を糧に、なんとか這い上がってくる一種のヒーローだ。対してネギは、子供時代の悲劇によって持ってしまった「他人への罪悪感」を糧に、それをただそうとあがくヒーローと言える。二人は、方向性は全く違うが、「ぎりぎりの線であがく動機を持つ」という点で共通している主人公と言える。そういった点では、最近のネギまの展開は正しいと言えなくも無い。
しかし・・・、ネギまは主人公ネギだけの物語では無いはずだ。ネギまは、魔法先生ネギと31人のクラスメイトとの関わりを描いている物語のはず。ネギの性格だけを視野に入れ、そんなキリキリした展開の中では、他のクラスメイト達はどんどん振り落とされていってしまう。現実世界に取り残されたいいんちょ達が長いこと登場していない、などと嘆いているどころの話では済まなくなって来ているのではないだろうか。
もし、ネギが神にも匹敵する力を持ったとして、そのまま3年A組の先生を続けている必要性が本当にあるのか? それがゆるされるのか? そう、魔法世界編の「次」が本当にあるのか、疑問にすら思えてくる。魔法世界編に入り、全く性質の異なる展開の中でネギというキャラクターが変質してしまう事は、もしかしたら取り返しのつかない事になっているのでは無いだろうか。
ネギは今、戦闘力パイプッシュだ!(これはアカギか)などと、粋がっていて良い場合なのだろうか。生徒を第一に考えるべき「先生」という看板を背負っている以上、堅気であり続ける為には嵌ったギャンブルにも「降り時」があるように思う。