展開予想寸劇「ラカンが語る、驚きの真実!!」

時は、ナギ・スプリングフィールド杯も決勝を終え、その表彰式の後。
ネギは様々な手を尽くし、辛くもあの伝説の英雄ラカンとの戦いに勝利していた。
ネギは勝者として、ラカンの前に立っていた。
ネギ:僕が勝てたのは、みんなの力があったからかもしれません。けれども、ラカンさん、これで僕の事を一人前と認めてくれますか?
ラカンぼうず、いや、ネギ。勝ちは勝ちだ。お前はこの俺に勝ったんだ。もちろん一人前と認めてやるぞ。
ネギ:それなら・・・、教えて欲しい事があります。
ラカン(ニヤリ)テオドラから聞いているぞ。お前の母親の事だな。
ネギ:・・・、違います。
ラカンなに!?
ネギ:母さんの事は、確かに知りたい事です。けど、その前に、どうしてもラカンさんに尋ねなければならない事があるんです。
ラカン・・・、何だ?
ネギ:ラカンさん、あなたは何故、僕を鍛えてくれたんですか?
ラカン?、何故そんな事を聞く。
ネギ:僕には、この魔法世界に来た時から、いえ、あのフェイトと遭遇した時から気になっていた事が一つあるんです。
ラカン・・・
ネギ:あの時、フェイトは僕に言ったんです。「死なれては困る」と。それは、一体どういう意味だったのでしょう。そして、フェイトは僕の事を仲間ごと世界の各地に転移させた。なぜ、そんな面倒な事をしたのでしょう。
ラカン・・・
ネギ:この二つの謎を併せて考えてみると、導き出される答えが一つあります。それはもしかしたら「僕を鍛える為」だったんじゃないでしょうか?
ラカン・・・(ニヤリ)
ネギ:僕を鍛える為・・・、そう、それはラカンさんが僕にしてくれたことでもあります。フェイトが、そしてラカンさんが僕を鍛えた・・・、そう考えた時、僕はとんでもない仮説を思いついてしまったんです。
ラカン・・・言ってみな、ネギ。
ネギ:ラカンさん、あなたはフェイトの仲間ですね。
ラカン・・・
ネギ:そう考えると、全てが繋がってくるんです。フェイト達は11のゲートを同時に破壊した。その一つのテロ現場に、フェイトの顔を知っている僕たちが居合わせたのは、本当に偶然だったのでしょうか? ラカンさんは僕の案内人として、僕が来る事を知っていましたね。テロ現場には姿を見せませんでしたが。
そして、僕が飛ばされた場所は「偶然」ラカンさんがいる場所に近い地域でした。それもまた、偶然でしょうか? 僕には、なにかの思惑が絡んでいるとしか思えません。
さらに、ラカンさんのいた街には、「偶然」奴隷にされた亜子さん達がいました。もしかしたら、これも思惑の内かもしれない。なぜなら、亜子さん達の身請金と武闘大会の優勝賞金の額が「偶然にも」全く同じだからです。亜子さんを奴隷にした人物もフェイト達の仲間かもしれない。いや、もしかしたらラカンさん、あなたでは無いですか? フェイトから連絡を受けていれば、亜子さん達の事を知っていてもおかしくありません。そして、武闘大会に参加しようとする僕の前に、あなたは「偶然」姿を現し、修行をつけてくれた・・・。
これほどの「偶然」があるでしょうか。いえ、これらが全て一つの思惑の中の出来事であるのならば、つまり「偶然では無い」とすれば、なにもかもに説明がつくんです。どうですか、ラカンさん!
ラカン・・・ネギ、やはりお前、ナギのヤツとは随分と違うな。ヤツだったら、きっと気付かないと思うぜ。
ネギ:ラカンさん!!
ラカン怒るなよ。いや、無理も無いがな。だが、お前が聞きたかったのは、もっと別の事だろう?
ネギ:そうです。僕が聞きたいのは、こんな回りくどい事をしてまでして「なぜ僕を鍛えたのか」という事です。それが判らなければ、ラカンさんが裏切った理由も聞きようがありません。
ラカン・・・お前、薄々感付いているんだろう?
ネギ:・・・
ラカン面倒だが、ここまで辿りついたお前に免じて答えてやるか。
ネギ、お前に見せたあの「紅き翼」の映画な。あれには嘘は一つも無い。あの映画に出てきただろう。「黄昏の姫御子」、そして「始まりの魔法使い」。あの映画の中じゃ「黄昏の姫御子」がやんちゃしていたが、問題はもう一人の方「始まりの魔法使い」だ。ネギ、あの「始まりの魔法使い」てのは、一体どんな奴だと思う?
ネギ:わかりません。
ラカン奴はな、「黄昏の姫御子」と対の存在なんだ。「黄昏の姫御子」は魔力をなんでもかんでも飲み込んじまう。そして、「世界を終らせ」ちまう。でな、「始まりの魔法使い」は、膨大な魔力を吐き出すんだ。それこそ、世界に必要な魔力全部を出しちまう。そして、「世界を作る」んだな。この魔法世界ってのはな、案外脆いものらしい。どんな神様が考えたのか知らんが、こうやって定期的に魔力の全取っ替えをしないと、魔法世界そのものが崩壊しちまうんだ。そんな、世界の大掃除をやっているのが、この二人という事だな。
ネギ:・・・
ラカンで、ここからが本筋だ。そんな、神様みたいな存在「始まりの魔法使い」とは、どうやって生まれるのか。それはな・・・「魔法使いなら誰でも良い」んだ。いや、少し違うな。
「黄昏の姫御子」はな、どうも必ずある血筋から生まれるように決まっているらしい。あのお嬢ちゃんなんかもそうだぜ。
しかし、「始まりの魔法使い」は違う。魔法使いの中には、たまに生来大きな魔力を持っている者が現れる。そいつらは、鍛えれば鍛えるほど途轍もない魔法を使えるようになる。そして・・・ある時「何か」と繋がっちまうんだ。「何か」ってのは、言ってみれば「魔力の根源」みたいなもんかな。そうなると、そいつはその時から「始まりの魔法使い」だ。「偉大な世界の創造主」誕生って訳だ。
「始まりの魔法使い」になるとな、自然と自分のやるべき事が判るらしい。自分の内側から溢れてくる力が世界再生の力だとわかれば、それを使う為に何をすべきか、という事だな。「始まりの魔法使い」は、まず「世界を終らせる」為に行動する。その為に世界のどこかに居る「黄昏の姫御子」を探し出し、「世界の始まりと終わりの魔法」の儀式を執り行う。そして世界を終らせ、世界を創造するんだ。
ネギ:・・・
ラカン話が長くなったな。が、大体判ってきただろう? ナギのバカはな、「先代の」「始まりの魔法使い」を倒すために、よりにもよって自分自身が「始まりの魔法使い」になっちまった。それどころじゃねえ。あのバカ、「始まりの魔法使い」になっても自分の考えを曲げねえ。「世界を終らせる」時にはどうしても何百万の人が死ぬ。それが許せないんだろう。世界崩壊が近づいているってのに、それを誰よりも判ってるはずなのに、自分が「始まりの魔法使い」になる事で、儀式を止めて居やがるんだ。奴自身からこの話を聞いた時には唖然としたぜ。
ネギ:ラカンさんは、人が死ぬのは平気なんですか。
ラカン言うと思ったぜ、優等生。なら、世界が崩壊してもいいのか? 人はな、何かを選択しなければならない時ってのが、どうしてもあるもんだ。俺にとっては、なにより生まれ故郷であるこの魔法世界が、ヘラスの地が残る事の方が大切なんだよ。
ネギ:何故・・・、何故僕なんです。
ラカンフッ、確かに、人にやらせる前に自分がやるべきだな。しかし、俺には出来ない。あの時、先代とナギの戦いを見た時に、自分の限界を悟っちまった。それじゃあ駄目なんだ。限界を突き抜ける何かが俺には足りないんだろう。やはり資質があるんだろうな。
ネギ:けど、僕にその資質があるとは限らないし、なにより、父さんと同じ選択をするかもしれない・・・。
ラカンいや、お前には資質がある。修行をつけて確信したよ。奴の子だという事もあるかもしれないが、それ以上に、お前の「心」を見てそう思った。
ネギ:僕の心・・・
ラカンそうさ・・・、さっきも言っただろう。ナギとお前は全然違うって。ナギは儀式を止める為に「始まりの魔法使い」になったが、お前は、そんなナギを止める為に生まれてきたんだな。
ネギ:そんな・・・
ラカンお前なら判るはずだ。「世界を終らせて救う」事と「世界を守って崩壊させる」事の、どちらを選択すべきかという事を。そして、間違った選択をした父親に会った時、お前は何をする? お前の願いは憧れの父親に出会い、それを超えることだろう? それがこの時だ。お前は、父親を超えるために「始まりの魔法使い」になり、間違った父親を正して、世界を救うのさ。
ネギ:・・・嘘だ・・・
ラカンそうかな? まあ、とにかく会ってみる事だ。
ネギ:・・・、え?
ラカン奴はいるぜ、あの旧都オスティアに。その最深部、魔法災害の爆心地でお前が来るのを待っている。きっとな。
ネギ:・・・
ラカンまずは奴に会ってみればいい。そうすれば、お前の身体が、何をなすべきか教えてくれるはずだ。
・・・俺が、お前の身体を、そう反応できるように鍛え上げたからな。
ネギ:!!!
=終幕=