木乃香の愛情

「今度書こう」とか書いてしまったから、後に引けなくなってしまった。(^^;
木乃香が刹那に対して一線を越えているとも言えそうなほど深い愛情表現を示す理由について。
別に特別な事を書こうという訳では無い。「刹那の幼児性」を考えた時に、セットで出てくる事だと思うから。
刹那が心を開いたのは、もちろん木乃香がそれを導いたから。その導き方も絶妙だった。
一番印象に残っているのが「甘食」のシーンだ。(42時間目)このシーンほど木乃香の顔が崩れているのは他に無いだろう。
この頃、刹那はネギ達に自分の立場(木乃香を守るために行動している)を伝えはしたものの、木乃香に対してどのように接してよいか分からず、刹那自身も戸惑っている様な状況だった。そこに道筋を作ったのが木乃香だ。刹那はこの「甘食」で緊張が解け、「ずっとこんなふうに遊びたかった」と思うようになる。刹那の、特に木乃香の前で良く見せる幼児性は、このとき誕生したと言えるだろう。性格的に、蘇ったと言った方が良いかもしれないが。
こうした幼児性は、刹那が親愛をもって他人と接する際に現れている様に思える。つまり、刹那が他人と親愛を持った関係を持つために、この道筋は必要だったと言えるだろう。刹那の今現れている幼児性は、刹那が全人格的な人間になる為に必要なものであり、それを引き出したのは木乃香だったといえる。
で、話を更に過去に遡らせて、刹那がこのように心を閉ざしていた原因についても考えてみたい。
刹那が烏族のハーフとしてかなり暗い過去を持つ事はご承知のとおりだが、それは幼少時の木乃香との出会いの時に一時解消している。それは刹那にとって大いなる救いであり、刹那が木乃香に対して絶大な感謝の意を持つ原因となった出会いでもある。
しかし、それは長く続かなかった。木乃香が川に流され刹那自身がそれを救えなかったという事件を機に、刹那は木乃香から距離を置くことになる。この時の事を、刹那は悔やみ、木乃香に対して申し訳なく思い続け、剣の道に邁進した事は作中多く語られている訳だが、では、木乃香の立場とすればどうだろう。
川に流されたのは刹那の責任ではない、言ってみれば木乃香自身の責任だ。そして、その事件によって刹那は木乃香の前から姿を消し、護衛者として、感情が欠落した人間として成長し続けていた。
つまり、刹那の一見冷たい性格や、人と親愛を持って接する方法すら持っていない現状を作ったのは、木乃香だと言えなくも無い。
そして、そこから抜け出す道筋である幼児性も木乃香自身が作っている。
木乃香は、実に大らかかつ朗らかな性格だ。自身に何か非があったとしてもそれをくよくよ悩んだりしないし、人知れず自分の責任を認め、全てを受け止めてしまえるような大きさを持つキャラとも言えるだろう。だから、木乃香が実際にどのように感じているのかはわからない。けれども、妄想する事は出来る。
木乃香は、刹那に対して強い責任を感じているのかもしれない。自分の事だけを見守り続け、その為に人としての多くを得ずに育った刹那の人生に対して。
だから、刹那の木乃香に対する愛情は、それがどのようなものであっても全力で返す。刹那が幼児性を持っているのならば木乃香も一緒に足踏みするし、刹那が護衛者として性別も無いほどの修行の後、女の子として豊かに過ごしてきた木乃香に対して持ってしまうであろう感情にも、それを感じるのならば全力で受け入れる。その事を、木乃香自身も求めているから。
もしかしたら、それらは擬似的な愛情といえるかもしれない。しかし、その基になるものは実に真摯な、木乃香の母性愛にも近い愛情と言えるだろう。
刹那と木乃香、二人の間に交わされる愛情表現は、危ういほど深い。
しかし、それは二人にとって必要な事だと思えるし、その先には、きっと二人にとって幸せな未来が有るのだろうと信じることが出来る。