パル様能力

物言いがついてしまった。
いや、こうやってクラスメイトの能力について論争(?)を繰り広げるというのもネギまの楽しさなので、非常に嬉しいのだけれども。それに、各クラスメイトが危機に際し自分の能力を披露するという展開は、やはり熱いものだ。
という事で、折角物言いをつけてくれたので、思いっきり反応しよう。

  • パルは無能か

まず、状況を整理しよう。
274時間目の舞踏会会場からの脱出において、ハルナがパーティ全員の指揮をとった。
私は、その指揮にはかなりの問題があると思い、それを感想の中で述べたのだか、それに対してMasaxaさんから反論が出た。
ハルナの指揮能力は高く、この場でも誤った判断はしていないという感じで。
実を言えば、私もハルナの指揮能力はかなり高いと感じている。なので、その部分については反論しようとは思っていない。
ハルナは、皆の精神状態を把握する鋭さを持ち、常に自信に満ち、即座に決断を下せる強さを持っている。この場でも、最後までみんなの精神的中心としてその指示を出していた。
ただ、彼女の場合、その指揮能力に付随する指示の方向性がかなり特異な事を考慮しなければならない。彼女は何事をも面白がる。そして何でもお祭りにしてしまおうとする。彼女の指揮の中には、必ずといってよいほどその方向性の指示が含まれてしまう。だから、例えば「宴会の指示」であったり、「学園祭の」であったりすれば、その指揮能力は本当に素晴らしい活躍を見せる事になるだろう。パルは「そういった方面」においては非常に有能と言える。
しかし、この場合は?というと、やはり問題があると言わざるを得ない。つまり、この様な場面における「判断」については、疑問の余地があると考える。

  • 脱出計画を検証する

この場のパルの計画について、再度検証してみよう。
パルの選んだ方法は、バルコニーにグレート・パル様号を乗り付けて、みんなで揃って逃げるというものだった。
この脱出方法には、三つの大きな欠点が揃っている。
一つは時間の遅れ。パル号を呼び寄せる為に、パーティを足止めさせる事になってしまった。実際、その間にパーティは衛兵に囲まれてしまう。さよが中継していた事は敵に伝わっていないはずなので、交渉決裂即脱出の当初の予定であれば、かなり時間的に優位だったはず。その優位を丸々捨ててしまったという事になる。
次に、目立つ事。これはパルが無意識にこの脱出方法を選んだ理由かも知れない。が、脱出においてこれほど避けるべき事は無い。特に、この土地は正に敵地のど真ん中なので、目立てば目立つほど脱出は困難になる。
そして三つ目は、戦力を制限してしまう事。白き翼の戦力は個人の能力頼りである。貨物船に乗り込んだ時点でそれは制限されたも同然だろう。反比例して敵は戦艦を艦隊クラスで持っている事を当初から示して威嚇していたのだから、相手の最も優位な場面を作ってしまったといえる。これでは、最たる悪手と言っても良いくらいだ。
おそらく、パルの頭の中には、怪盗がヘリコプターで颯爽と逃げていく、という「まるで漫画のような」計画が浮かんでいたのだろう。しかし、それは当然阻止されてしまったというわけだ。

  • 指示について

さらに、その後の指示もいけなかった。
本来であれば想定しておかねばならない戦艦からの威嚇射撃を受けて、脱出計画が頓挫する。そこでどのような指示を出せばよかったか。
パルは即座に、この場に居れば砲撃は受けないという事から、留まるように指示を出す。
即座に指示を出すという姿勢は良いが、それは、衛兵から逃げるという当初の目的からぶれている。なので即座にまき絵から指摘される。
そして、楓に皆をマントに入れて船に乗せるように指示を出す。
しかし、船に乗せたとしてその後どうするか展望があったのだろうか。船に乗っていては最後には戦艦に取り付かれて捕獲されるか砲撃されるだけだ。ここでのパルは、おそらく、まき絵からの指摘に機械的に反応して答えただけで、全くの脱出構想が出来ていなかったといえるだろう。
つまり、パルはこの手のイレギュラーが発生した時、即座に構想を練り直して新たな指示を出せるような能力を持っていない事を露呈してしまっていると思える。

  • どうすればよかったのか

この場での脱出方法だが、パルのように特殊な方法を考えなければ、二つの方法があっただろう。
一つは、パーティの人ごみにまぎれて逃げる事。
非常に正攻法ではあるが、さよによる時間的優位、千雨による電脳支配、そしておそらくは侮られているであろうパーティの個人戦闘能力により、かなり勝率の高い方法だったと思われる。逆に言うと、ゲーデルがこの舞踏会を罠を仕掛ける場所にしたという事が、彼の隙の一つだったと言える。彼にはネギを取り込めるという自信があったかも知れないし、幻想空間に閉じ込めておけるという計算もあったからこその隙だったのだろう。それを付く作戦として、かなり有効だったと思える。
そして、もう一つの方法は楓のマントに全員が入って逃げるというもの。
上記の計画には、一つだけ欠点がある。それは、パーティの中にかなりの率で非戦闘員が含まれているという事。実際には、これが大きな失敗に繋がる危険性がある。しかし、このマントはそんなパーティの弱点を解決する為に存在しているといっても良い、実に有効なマントだ。
実際、このマントを活用する事によって、パルや朝倉など自身の戦闘能力を持たない者が危険地帯の冒険を完遂させている。つまり実用試験済みなのだ。これを使わない理由など何一つ無いであろう。
唯一問題があるとすれば、あまりにすばやく逃げ出せてしまうので、ネギ達と離れてしまうという事だろうか。しかし、そのネギ達の脱出の為にくーやタカミチが応援に駆けつけたのだし、そちらは別に行動すると判断すべき。今は、まき絵達完全な一般人をどうやって逃がすかを最優先させるときなので、この事を考える必要は無いだろう。
ついでに言うと、威嚇射撃を受けたときパルがすべき支持は、即座にこのどちらかの計画に切り替える事だろう。しかし、その際どうしても犠牲にしなければならないものが生じてしまうが。それはグレート・パル様号。つまり、パルはあの時、即座に自分の脱出計画の失敗を認め、パル号の廃棄を決定すべきだったと思われる。もしそれが出来なければ、仲間の命を危険に曝してしまう状況だったと言えるだろう。

パルが楓に指示を出したとき、楓の顔は曇っていた。おそらく、その指示では皆を危険に曝す可能性が高いと判断していたのだろう。もし、パルがパル号での脱出を強行しようとした時には、それを止めねば成らないと覚悟していたかもしれない。
しかし、その直後、状況は一変する。最大の脅威だった戦艦を捕らえる大怪獣が登場し、大混乱に陥ったのだ。それは、フェイト一味の闇使いの仕業で、今は目的も定かでは無い。しかし、その混乱に乗じる事により、グレート・パル様号は逃げ出す事に成功する。ただし、仲間の多くがバラバラになってしまい、乗せる事が出来なかったのだが。
もしくは、こう考えることが出来るかも知れない。パルのお祭り好きがこの様な混乱を招いたのかも知れないと。この混乱は「完全に想定外」といいながら、案外織り込み済みだったりして。
パルの能力は何より漫画を描くことだ。物語の神様の思惑に乗ってしまい、利用されてしまうというのも彼女の能力が招いた結果かもしれない。そう思えば、致し方ないことなのだろう。
さて、面白い展開に成ってきて次回が楽しみだ。