茅原実里、武道館へ

タレントを応援するという行為は、どういった意味が有るのだろう。それはやはり、大きな夢を持っている人の気持ちに共感し、その夢を叶えようと努力する姿に自分の気持ちを乗せ、代わりに夢を叶えて貰う事で夢や希望をおすそ分けしてもらうということなのだろう。自身の応援するスターやタレントが夢を叶えた瞬間は、それが自分の事ではなくてもとても嬉しい。感動を貰えて感謝したいくらいだ。
茅原実里の事を最初に知ったのは、おそらく東京アニメフェアでの事だろう。それは、2004年のエイベックスブース、一騎当千のステージだった。その時の彼女の事は、あまり良く覚えていない。ただ、その覚えていない理由は判っている。当時のエイベックスという企業に強い反感があったから。金になるという理由でアニメ産業に乗り込んできた大企業、そんなイメージ。茅原実里はその尖兵としてしか見ることが出来なかった。
おそらく、その感覚は他の多くのアニメファンにとってもそうだったのだろう。彼女の才能が正しく評価されない期間があったに違いない。その間約2年。強いバックがありながら鳴かず飛ばずで、路上ライブとかをしながら細々とライブを続けていたらしい。
世間が手のひらを返すきっかけになったのは「ハルヒ」の長門。自分もただ、長門の「ハレ晴れユカイ」を生で聞きたいという想いだけで、彼女のライブに初参加した。そのライブが、彼女にとってとても大きな意味を持つライブになるとは全く知らずに。それが2006年のバースディライブ。
そこで聞いた彼女の夢や希望。音楽に対する想い。そこにいる個人は、当然個人の夢を持っている。それは企業などとは関係なく純粋なものだという事にその時やっと気付いた。その後、世間の視線が彼女に向かい始めていく様子をやっとフラットな目で見ることが出来た。
彼女の夢を積極的に応援しようと思ったのは、おそらく「Message 01」を見てからだろう。これはとても良いフィルムだった。彼女の心の内が沸き立つように見るものに伝わってくる。あの伝説の2006年バースティライブから、彼女の夢への再挑戦がスタートした。映像でその過程を追っていると、それがまるで自分の夢の様に思えてくる。それは、偶然あのライブに参加した者の責務のようにすら感じてしまう。
これはある意味必然なのかもしれない。以前、ある声優が武道館で歌い、大泣きをしている姿を見た事がある。彼女自身のライブではなく、ただイベントの一部として歌えただけで、念願の夢が叶ったと言って泣いていた。それを見て、嬉しさと同時に寂しさを感じざるを得なかった。その声優の夢は、その時ついえた。いや、今でもその声優は夢に向かって頑張っているけれども、その時一つの波が終ってしまった。ファンとは貪欲なもので、タレントとの関係は「感動の享受」でしか築けないのだ。残念ながら。そんなファンとしての無念の想い、宙に浮いた気持ちを、別の誰かに依託したいという感情が残ってしまった。そして、誠に勝手ながらその「矛先」をどうしても茅原実里に向けざるを得なかった。
本当に声優オタクの身勝手だとは想う。けれども、やはり嬉しい。本当に全く心が離れた所から、徐々に近づいていき、今では彼女の夢を自分の夢の一部の様に感じる事が出来るまでになっている。そんな彼女が一つの夢の到達点に達しようとしている。こんな嬉しい事は無い。
茅原実里の武道館ライブ決定。これを聞いて、一種「宿願」の達成と捉えてしまうほど気持ちが高まっている。
是非成功させて欲しいものだ。

Message 03 [DVD]

Message 03 [DVD]