超人ロックの“絵”伝子


超人ロック SPECIAL NIGHT 2011」に参加してきた。
超人ロックは、漫画を買う習慣の無かった私が、最初にコミックスをそろえた作品であり、非常に思い入れが強い。そんな作品のイベントがロフトで有るというのだから、それこそ勇んで参加してきた。
超人ロックの影響を受けた漫画家さんたちの話も面白かったし、なにより聖悠紀先生の人柄に接する事が出来たのが非常に嬉しかった。MCを務めた小林治が先生に結構深く聞いてくれて、超人ロックという特異な作品が如何にして作られているのか、なんとなく理解出来た。一言で言えば「泰然」といったところだろうか。
そんな興味深い話の中で、心に引っかかった話題が一つ。
それは「超人ロック」という作品が後の作品に与えた影響について。
先生自身は「それは全く気にしていない」という事だったが、実際、この事を深く考えてみると、結構面白いかもしれない。
先生にして、「超人ロックの一番の魅力はキャラのデザインでしょう」と言っていたが、実際にその通りだろう。超人ロックの少女マンガ的な繊細なデザインは非常に魅力的。というか、超人ロックという作品が発表された当時は、かなり衝撃的とも言えることだったらしい。
超人ロックという、男性が描く本格的なSF漫画でありながら、少女マンガ的な繊細なキャラデザイン。これが後世にどのような影響を与えたのか。
まず、少女マンガとSFの距離を縮めた。これは、竹宮惠子24年組との関連性を考えなくてはいけないが、例えば「テラへ…」への影響とかを考えると、聖悠紀の存在の方が先なのではないだろうか。以降、「SF絵」のキャラデザと言えば、少し女性的で繊細なデザインというイメージが付いているように思える。
また、丁度同じ頃、アニメがロボットモノを中心に一つのブームとなっている。ロボットモノもSFの一つだ。聖悠紀ボルテスV闘将ダイモスなどのキャラデザを務めたのもそんな雰囲気があったからではなかろうか。
そして、その頃はテレビ漫画=ロボットもしくはSFというくらい、ロボットモノやSFがアニメの主流を担っていた。それがアニメキャラのデザインの主流にもなっていた。つまり、「アニメ絵」のキャラデザというと、少し少女マンガ的で繊細なデザインが主流になっていた。
それだけに留まらない。さらに、そんな「アニメ絵」がアニメやゲームで持て囃され、その勢力を拡大していった結果どうなったかと言うと、それが漫画のデザインに逆輸入されてくる。その繊細さ、勢力の多さによる親しみやすさから、それらは漫画やイラストの最先端として認識され、漫画、イラスト、アニメ、ゲーム全ての主流になる。それが今で言う所の「萌え絵」として、オタクカルチャーの中で最も親しまれているデザインとなる。
つまり、「超人ロック」のデザインは、最先端のありとあらゆるキャラデザに影響を与えているのではないだろうか。
・・・とまあ、風が吹けば桶屋が儲かる的な、世界の悪事は全て秘密結社のせいとか陰謀論者的な電波論を展開してみたわけだが、最新のキャラデザの中に見られる、「顎のとんがり」とか、「省略された鼻」「大きめの目」「キャラを特徴付ける尖がった髪型」を確認するに、案外的外れでも無いのではと思えてくる。
今主流のキャラデザの中には、超人ロックの遺伝子、ならぬ“絵”伝子が含まれているかも知れない。「超人ロック」という作品が、繊細ながらも40年もほぼ変わる事の無いキャラデザで連載を続けているという事実を思うに、そんな事を考えてしまうわけだ。