オタク期の終焉

宇宙戦艦ヤマト2199」を見ていて、感じたことがある。
エヴァ」の頃から続いていた「オタク期」が、ここに来て、ついに終焉の時を迎えたということ。
本来、アニメは広く世間に受け入れられるために作られていたものだ。もちろん、子供向け、青年向け、少年向け少女向けなど、年齢や性別のカテゴリーはあるだろうけれども、そのカテゴリーにはまる者全般から、より多く共感を得ようとして作られていたはず。
しかし、1980年代のアニメ暗黒期において、テレビのアニメ放映本数は激減し、個々の嗜好に向けたOVAが作られたりしていた。それが、1990年代、「エヴァ」が世間に受け入れられ、「個々の嗜好」を全面に押し出して作る作品が評価された。
それが、今も続くアニメオタクブームの始まりだろう。それはつまり、「個々の嗜好に向けた作品」を広く世に出して売る時代の始まりであり、「個々の嗜好」を強く持つ、いわゆる「オタク」と呼ばれる者の為の作品を、大っぴらに作ってよい「オタク期」の始まりだったと言える。
しかし、今ここに至り、「オタク」という言葉そのものが死語に成りつつある。結局、「オタク」という存在は、その言動の痛さだけが記憶に残り、そうした言動が「中二病」という言葉に集約されて、「オタクという存在」そのものが消えかかっている。
世間には、過去、ライトオタクと呼ばれた感覚を持つ者が広く存在し、「中二病」を発症しなければ「リア充」に成れる、みたいに思っている者しか見当たらない。つまり、特異な嗜好を持つ「オタク」は絶滅寸前と認識されても仕方が無い。
ならば、そんなニッチな者に向けた作品を作るのは無意味。より幅広い層へ、「エヴァ」以前の作品のような、「当たり前の」作品作りをする必要があるだろう。こういった認識で作られた作品が主流を占めはじめている気がする。
その象徴的な例が、正にオタクが生まれる前のアニメの代表作「宇宙戦艦ヤマト」であり、それを世間に受け入れてもらおうとしていること。個々の嗜好に向けた、つまりオタク向けの作品作りをしようという姿勢は、そこにはない。
もちろん、未だ「オタク作品」と呼べるものは沢山あるし、今後も作られていくだろう。けれども、それはもう先に進めない気がしてならないし、少しずつ数を減らしていく気がする。
1990年代半ばから始まった「オタク期」が、20年弱の期間続き、そして今、終焉の時を迎えている。
この20年弱という時の長さを改めて認識すると、こう感じる事自体、ある意味当たり前の事なのかもしれない。

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※約5年前に感じた、ブームのターニングポイント

※1年前に書いた、終焉の予兆。

※半年前に書いた、具体的な終焉の感覚。

※オタクと中二病の関係について語ったもの。