ローゼンメイデントロイメント

結論から言うと、いまだ継続中の原作につなげられる様に描かれたTVオリジナルの外伝といった所なのだろう。前シリーズで独自の解釈を取り入れた部分をかなり修復している。たとえば、ジュンの引きこもり原因の、TVと原作の違いからくる齟齬も、今後修正できるように台詞がちりばめられている。つまり原作の継続に合わせた第3期シリーズを明らかに狙っている。それでいて、このシリーズ自体でもそれなりに見られるものにしている。これはかなり高度な構成だろう。
ただ、今シリーズ単体の評価としては、前シリーズと比べて若干低いと言わざるを得ない。前シリーズは、引きこもりとプライド、人形と夢、という魅力的なキーワードがとても上手く取りこまれていて、見るものを深く惹きこむ力を持っていた。ジュンの引きこもりと真紅のプライドを表裏一体として表現し、人の心の弱さへの理解と励ましを与え、動く人形と、ひきこもり部屋の閉鎖空間、そして夢の世界「nのフィールド」という虚実綯い交ぜの作りが、虚構の物語に現実味を与えていた。しかし、今シリーズでは、その内の「引きこもり」と「夢」という要素がかなり薄く、魅力を減じている様に思う。
ただ、その分各キャラクターの描写には力を入れており、外伝としての価値は充分あったと言える。コテコテのツンデレ描写の第4話や、泣かせる事を前提に作られた第1110話などは、「あざといなあ」と思いながらも結構楽しんで見た。最終話も、水銀燈の最後や、真紅と薔薇水晶の倒された人形達の力を総動員した戦いなど、見所が一杯。薔薇水晶は最後に登場したのが本物なのだろう。白薔薇を強調していて、真紅との対比が明確になっている。これは第3期も期待したい。
もし第3期以降が作られ続け、原作に合わせた本当のシリーズ終了を迎えた時には、このトロイメントも見直されて評価が高まる様な気がする。