鍵姫物語 永久アリス輪舞曲 第7話

秀逸だ、秀逸すぎる。奇妙に絡み合った男一人、女3人の四角関係が、一つの出来事を契機にさらにもつれ、そして一つの所に落着いていく。ラブロマンスの醍醐味を見事に味わせてくれた。
今回活躍したのはやはりキサ。有人とありすはキスを契機に不器用ながらも着実に互いの気持ちを確かめ合い、少しずつ恋人らしくなっていく。妹であるが故に恋人候補になれず、有人達を傍観するしかないきらは。あんなにも明るいきらはが深い悲しみに沈んでいく。そこで行動を起こすのがキサ。実は彼女は対人恐怖症できらは以外の人間とはまともに話す事が出来ない。それでも彼女はきらはを誘い、人ごみに連れ出してきらは用特製ジェラートを注文してくる。しかし、それが彼女にとってどれほどの苦行なのかは直接的に描かれない。この回の冒頭、彼女がきらはを勇気付ける為にこのような行動に出ることを決意するシーンも同様。その前その後のシーンだけを切り取って描き、彼女の決意の深さ、痛みの深さは読者の想像に任せるようにしている。
なお、キサが自分の心を例えて人に語る場合のイメージは「水」。彼女のアリス能力と同じである。水の性質は他からの影響に左右されやすい。人一倍感受性が強い心が彼女を対人恐怖症にし、また、それだからこそ「水」のアリス能力を持つことが出来ているのだろう。物語としても全体を通じて水による印象的な演出がちりばめられている。
結局キサの行動は全て失敗し、きらはに喜びを取り戻す事はできない。しかし、それでもきらははキサの必死の献身に気付き元の自分を取り戻す。悲しみは人生における必然。その事を受け入れ、きらはは少し大人になったのかもしれない。そしてその事を「最初から知っている」キサは、またいつもの様にきらはコレクションを続けるのである。それは可笑しくも哀しいシーンだ。
冒頭から最後のギャグシーンまで完全に計算し尽くされ、一つにつながっている。実に秀逸な回といって良いだろう。