灼眼のシャナ

劇場版製作決定か。よしよし。
シャナは今期最も面白いと思って見ていたアニメの一つ。シャナのツンデレキャラクターとしての魅力はかなりのものだし、全体の、ジュヴナイル伝奇物とラブコメ物のバランスも実に上手く、単純に面白いといえるアニメだった。こういう、気楽に楽しめる作品はやはり2クール無いと、本当の面白さにたどり着けない。よく最後まで作りきってくれたものだ。ある意味、今期最も成功した作品だったのではないだろうか。
監督の渡部高志は多少大雑把ながらも瑞々しくも壮大な演出をしてくれる人で、ファンタジーブームの時には「スレイヤーズ」シリーズで随分と楽しませてくれたものだ。しかし、その後TVアニメ史上最悪の作画崩壊といわれた「ヤシガニ事件」を起こし。(ただし、「ヤシガニ事件」を起こした「ロストユニバース」自体は決して悪い作品ではない。特に第24話「乙女還る」は林原めぐみの熱演もあってかなりの傑作だ。)、「宇宙海賊ミトの大冒険」より後の作品では演出の瑞々しさもバランスを崩し、悪評ばかりが先行していた時期もあったように思う。それが、この「シャナ」で見事に復活を果たしてくれた。実に嬉しいかぎりだ。ただ残念なのは、これが地方局の深夜でやっていたという事。やはりこういう作品は12chの6時台にやって欲しいもの。映画が大きく外れさえしなければ、次のTVシリーズは確実にあるだろう。その時は是非もっと多くの人に見られる様にしてもらいたいものだ。
最後に、物語自体についても一言。
このアニメの最大の魅力はやはりシャナのキャラクター性による所が大きいが、それに併せて、主人公の設定が実に上手いと思う。主人公坂井悠二は最初に登場した時に「既に死んでいる。」今いる自分は、ある目的の為に存在する、死んだ自分の記憶を留めた、ただの物体に過ぎない、と言う事を知る。自身は平凡な人間なのに、生命としてこの世界とつながっているわけではない。正に「世界が外れる」感覚。感情移入先である主人公にこのような設定をするのはかなり刺激的だ。
この「命の枠から外れて生きている実感も無く生きている」という感覚は、自然の無い都会に住み、常に人工的な刺激を与えられ続け、自分の意思すら何処にあるのかわからなくなっている、そんな現代の人間に共感を与える。(この感覚を最初に表現したのは、やはり「ブギーポップ」だろうか。ある意味、ライトノベルの王道ともいえる感性を引き継いでいる。)そんな存在が、戦いの中で、自らの中に強い使命を持った人間に出会うなどして、自分の存在している街=世界を再認識していく過程は、強い共感を与えてくれる。この主人公の設定がある以上、この作品は魅力を保ち続けるだろうし、この後いくらでも物語を続ける事が出来るだろう。ある意味シャナのツンデレよりも重要なのかもしれない。