シスター・プリンセス Re Pure キャラクターズを語る(暫定版)鄴 〜亞里亞〜「不思議世界を読み解く」

  • ストーリー

亞里亞のお屋敷にサーカスがやってくる。しかしそのサーカスは亞里亞の空想なのか。空想から醒めるとそこには兄やがいる。兄やとピエロを重ね合わせて喜ぶ亞里亞

  • 解説

この解説は一度別の所で書いた事がある。突飛な解釈なので、あくまで仮説の一つと捉えてもらえるとよいだろう。
まず、この話のどの部分が亞里亞の空想なのか検証する。
幾何学模様の絵画と飴から庭園に車がやってくる事を、ピエロの絵からサーカスがやってきたことを空想している。そしてそれらの絵画自体も後に亞里亞が自室で読んでいる本の中である事が判る。つまり本から顔を上げるシーン以前は全て亞里亞の空想なのではないかと推測出来る。
しかし、この空想は亞里亞のものとしてはいかにも突飛過ぎる。亞里亞が連想したピエロや庭園以外の、檻の中の動物達や、風船の入った箱の山、空中ブランコ、球乗りは何処から連想したのだろうか。実はこの中で一つ気になるシーンがある。風船の入った箱の山、これが目を転じると雑然とした唯のダンボール箱の山になるのだ。まるで引越しの家の中の様に。これは一体何を意味するのか。
サーカスの空想、これらは実は亞里亞が見たモノを、しかしそれを現実と認識したくなくて置き換えたものではないだろうか。そのモノとはつまり「引越し」。雑然とした引越しの風景を、まるでサーカスのようだと亞里亞の感性で空想化したのかもしれない。しかし、お屋敷に住む亞里亞の引越しとは、つまりはお家の没落を意味する。これは一体どういう事なのか。
そこで気になるのが、亞里亞自身が、サーカスを指揮するピエロこそが兄やであると認識していると言う事である。そして、亞里亞の部屋の家族の写真はいくつにも分かれていて、もしかすると複雑な家族構成ではないかと推測出来る。
これらから、一つの物語を想像する。
妾腹の子が屋敷から勘当される。その後、嫡子である妹に取り入って屋敷に舞い戻り、事業と屋敷を乗っ取る…。
亞里亞にとって兄やは大切な存在。だから裏切られた事実を受け入れる事が出来ず、全てを空想の中に閉じ込めているのだ。
物語の最後、亞里亞は雪の中にその身を横たえて眠る幻想的なシーン。これも空想ではなく現実。亞里亞は感受性が強すぎるだけの女の子。本心では全てを知っている彼女が最後にとった行動なのかもしれない。
そして、亞里亞を象徴する「青い薔薇」が消え、物語は終了する。

  • 音楽

「Sweet Dreams」
一聴すると、甘く穏やかなだけの曲に思える。しかし、そこが岡崎律子マジック。独特な言い廻しの歌詞により、単純にそうとる以上の意味を与えている。
明日は素敵の始まりなのか、知らない事が素敵なのか。明日を喜ぶ歌のようにも、哀しむ歌のようにも取れる。歌詞の中に深い哀しみが感じ取られ、それを夢によって癒そうとしているようにも感じるのだ。さらにそれが映像と合わさると、眠り=死にすらなってくる。実に奥行きの深い曲といえるだろう。