シスター・プリンセス Re Pure キャラクターズを語る(暫定版)酈 〜花穂〜「象徴で形作られた世界」

  • ストーリー

赤い靴を買ってもらった花穂はそれをお兄ちゃまに見せたくて外出する。途中、雨に降られたり、黒い犬に出会い驚いたりしながらも、お兄ちゃまの元に辿り着く。

  • 解説

実に暗喩の多い作品である。
まず、母に買ってもらった「赤い靴」だが、これは初めて履いた「赤い靴」と母からの贈り物ということから「初潮」を意味する。次に、彼女が外に出て、女のマネキンの前で爪先立ちをする。これは正に女性として背伸びがしたいという表れ。また、人の描写の無い街にパラソルの花が咲く。これは、少女が他人を認識せずに綺麗な物だけを見ているという事であり、彼女の幼い精神の表現。
つまり、体は大人になり、背伸びがしたいのに、精神は未だ子供ということ。
そして、「黒い犬」に出会う。これは「男性の象徴」もしくは「性への恐れ」。
最初、花穂はそれに恐れを抱くが、後に受け入れる。後に続く水溜りに空の映った世界を走るシーンは、空を飛ぶ事を連想させ、快楽、つまり性行為そのものを意味している。
しかし、最後には転ぶ。これは性行為の失敗、男性体験の失敗。お兄ちゃまの事を想い、背伸びして大人になろうとした報いだろうか。
 そして花穂はお兄ちゃまの所に辿り着き救いを求める。裸になって、白いシーツに包まり眠る。「裸になる」は「無防備な心」「安心」を、白いシーツは「純潔」を意味する。お兄ちゃまの元で癒され、自分らしい幼さを取り戻す。
そして精神的に成長した少女は「黒い犬」(異性)と対等に、穏やかに付き合っていく。
 こうして見ると、この物語は、花穂の他愛のない日常の一幕を描きながら、同時に「少女の性の成長物語」の象徴的な作品になっている。
また、それは花穂の男性に対する無防備さ、依存性を感じさせる性格から、彼女が後に体験するであろう事を予言しているかのようだ。

  • 音楽

「笑顔にはかなわない」
歌詞の1番を聞く限り、花穂らしい無邪気で幸せな感じの曲の印象を受ける。
しかし、2番以降を聴いていくと必ずしもそうではない。かなりストレートに男女の深い関係を表しているようにも感じられる。
その中で、笑顔にはかなわないという歌詞は聴くものによって様々な解釈が出来るようになっている。無邪気な女の子に対する言葉なのか、恋人である男に対しての女の言葉なのか。喜びなのか、哀しみなのか。
どうしても、この曲は辛い境遇に立った恋する女性の哀しい歌に聞こえてくるのだ。