ストーリーライターズ・ナイトvol.3 ジ・オリジン ロフトプラスワン

このイベント、企画動機としては「脚本家志望の人へ」というものらしく、単なるアニオタとしては気が引けたりもしたのだが、行ってみて、内容が実に濃く、参加して良かったと思えるものだった。というか、既に3回目であり、1回目では大河内一楼が出演していたのを今更知って、実に惜しく思っていたり。
で、今回のゲストは辻真先大先生。もうアニオタにとっては伝説上の人物と言っても良い。アニメ脚本家としても、ラノベ作家としても、大先達というか、創造者と言っても良いだろう。こちらはただただそのお言葉をあり難く頂戴するだけ、といった様相だった。とはいえ、実に気さくな人物であり、人を楽しませる事を大切にするエンターティナーでもあり、実に楽しいお話を沢山してくれた。
また、ホストである佐藤大自身、実に思索に富んだシナリオを書く脚本家である事もあり、当然辻先生の偉大さを最も理解している人物として、先生のあまりにも巨大な創作活動の全てを丸裸にする勢いで、様々な点から質問を浴びせており、実に濃い時間を作ってくれていた。「30分で30分の脚本執筆伝説」の真相とか、「アンドロメダストーリーズ事件」についてもしっかり語ってくれていた。手塚治虫永井豪などの漫画原作者や富野監督などのアニメ演出家とのエピソードも沢山語っていた。
先生の創作の秘密は「自ら楽しむ事」。今現在でさえ「桜庭一樹」「種とディスティニー」「シグルイ」「ひぐらし」「夢使い」なんてワードがぽんぽんと出てきて、観客として自分で楽しむ事に関して実に貪欲な姿勢が感じられた。実際、これだけのものをしっかりと吸収している若い「オタク」なんて、どれだけいるのだろうか。そして、「演出」。演出家としての思考があるからこそ、「脚本」も生きたものが書けるという事なのだろう。
それにしても、これだけの大人物の、これだけ素晴らしい公演が、こんな場末の居酒屋(失礼!)でひっそりと行われるというのはあまりに勿体無い。いや、この雰囲気だからこそ、聞けた話でもあるのかも知れないが。とにかく、実に貴重な時間を得た事を幸運と思う事にしよう。出来れば、次の機会も作って欲しいものだ。