「魔法世界」と、異界・楽園・理想郷

ゆえゆえが解説していたように、世界には「異界」とか「楽園」とかの伝説は数多い。しかし、それらは夕映の言うとおりその性格や意味合いは様々である。
例えば、ジパングやエルドラドなどはどちらも黄金郷であるが、いわば「理想郷」としての意味合いが強い。これらは、伝説や噂などで伝えられる実在の都市をベースに人々が想像したものなので、かなり即物的な、それだけにプラスのイメージしか持たない、正に「理想のくに」となっている。
対して、今回夕映が主に説明したケルトの「異界」などは、若干趣が異なる。
ケルトの異界、アブァロン、ティルナノーグに加え、日本の常世などもこれにあたるだろう。
これらの国の特徴は死後の世界との関連が深い。これは、古代人が未だ「天国」など完全に現実と隔絶した死者の国を想像できなかった頃に、死後の魂のある場所として便宜的に(英雄物語上必要とかで)考え出させた世界といえる。言わば、観念的な、人の心の中から考え出させた世界だ。
これらの世界の特徴は、この現実と地続きの所にありながら、ある特殊な条件をクリアしないといけないなど、どこか現実と隔絶しているという事。死者なども居るわけだし、それが無条件に開かれているはずが無い。そういう点では、この「異界」は、現実と隔絶している「天国」と「現実世界」の「狭間の世界」ということが言えるだろう。これは、この現実世界のどこかにあるはずなのに見つからないだけの「理想郷」との大きな違いである。
夕映が「魔法世界」を指して「異界」を引き合いに出したのは、単にケルトの地だからという事に加えて、このような「特殊な条件をクリアしないといけない」という特徴を備えていたから、という事もあるのだろう。「異界」が元々人間の心から生まれた世界であるはずなのに、それが「魔法世界」として存在しているという設定は、とても魅力的だ。
ただそうなると、やはり気になるのが「異界」の特殊性を「魔法世界」が持っているのか、という事。
ひとつは、「死者がよみがえる場所」としての「異界」。
もしかしたら「魔法世界」には、人の生き死にに関わる、特殊な力があるかもしれない。例えばナギなども、その力によって「まったく別の形で」生き永らえているのかも。
それに「アスナの不老」も、いわば「命に関わる力」だ。不老にする方法、それを解除する方法も、この「魔法世界」のどこかにある特殊な力によってなされたのかもしれない。
それから、気になっている事がある。これら「異界」のもう一つの特徴として、「現実世界と時間の流れが違う」という事が多いのだ。例えば浦島太郎の「竜宮城」のような。少なくともメガロメセンブリアではそのような事は無い様だが、もしかしたら「魔法世界」のどこかには、そんな「時間の流れの速い場所」とかがあるかも知れない。
「魔法世界」から帰って来て、周りを見渡したら夏休みが終わってた、なんて事にならないよう、気をつけて欲しいものだ。w