NANA MIZUKI LIVE FORMULA 2007-2008 東京厚生年金会館

水樹奈々恐るべし、その一言に尽きる。
前回、その当時の頂点とも言える横浜アリーナのプレミアムライブを体験した時に、彼女の次のステージ、更なるステップは、彼女に奇跡的な何かがあれば可能だろうと思った。逆に言えば、これからさらに上に行くのは難しいと思った。けれども、考えてみれば、水樹奈々に今まで奇跡的な事など一度も起こった事はない。シスプリにしろ、なのはにしろ、彼女にとって相応の作品であり、声優である水樹奈々が作品によって「奇跡的に」引き上げられたという印象は無い。それなのに今この地位にいるのは、やはり彼女の力によるものだ。確かに、前回のライブではなのはの追い風が凄かった。けれども、それが終息した現在も、水樹奈々は自分の力でさらに上に昇ろうとしている。
先日リリースされた6thアルバム「GREAT ACTIVITY」の楽曲は、実はCDとして聴くと、あまり感銘を受けなかった。あまりに激しく、叩き付けるような楽曲は、聴いていて息苦しくなるくらいだったからだ。
けれども、それをライブの、生のパフォーマンスを体験してみると、その「意味」が嫌というほど分かってくる。このアルバムは、ライブでこそ完成する楽曲なのだ。水樹奈々のパッションが「歌」という存在を超えて、ライブパフォーマンスにまで広がっているものを、あえてアルバムCDに落とし込んだだけなのだろう。本来音楽とはCDの中に納まるものではなく、ライブであるからこそ、その意味があるものだと思う。水樹奈々は、その歌唱力の高さから、今までCDとしても完成度の高い物を作り続けてきたが、CDの世界で広く世間に認められた今だからこそ、その枠を超えたものにチャレンジしたいという欲求に抗えなかったのではないかと推測してしまう。
ライブは、熱く、激しく、情熱的だった。
一瞬の緩み無く、正に「 LIVE FORMULA」の名にふさわしいほどに、徹頭徹尾全力疾走していた。
横浜アリーナの、水樹奈々にして「かつて無いほど長い」ライブの経験は、彼女に、さらに強い力を与えたのだろう。ライブ中何度も何度もクライマックスが来るかのような構成の中、水樹奈々はその時その時で全ての力を出し尽くしているのではないかと思えるほどだった。けれども、水樹奈々のパフォーマンスに、最後の一瞬まで疲れの影が見える事はない。ステージ上を駆け回り、歌声を出し尽くすほどの激しい楽曲の後も、何事も無かったかのように次のパフォーマンスに移っている。だいたい、あんなに小柄な女性にして、観客の歓声を煽る為、マイクスタンドの一番下を持って客席上方45度の角度に軽々と振りかざす事すら驚異的な事だろう。
水樹奈々は、今この瞬間も上昇している。それは、今も昔も変わらない。なのはの追い風とかそんな物がなくても、彼女自身の力で成し得ている。自分自身がその身体の中に力を蓄え、それをファンに返し続ける事だけが、唯一つの道だという事をしっかり認識し、それを忠実にやり遂げているだけなのだ。その事を、嫌というほど見せ付けられたライブだった。
正に、水樹奈々恐るべし、だ。彼女は一体どこまでいけるのだろうか。

GREAT ACTIVITY(2007年限定製造盤)(DVD付)

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