true tears 〜兄妹と恋愛の物語〜

四話まで視聴。
いいねえ、この作品。毎回々々ドキドキさせてくれる。
各人が結構複雑な恋愛感情を抱えているし、それでいて、その心が手に取るように分かる。
それに、なにより、誰もが相手の気持ちを察しようと一生懸命だ。つまり真心がある。
この、「真心」というのが、結構利くんだよなあ。恋愛モノには。
例えば、易い恋愛モノでよくある「すれ違いのドラマ」というのは、そのすれ違いを生じさせる為に、キャラが察しの悪い人間になってしまうことがある。主に、主人公である男などが。その察しの悪さは、単に自分に自信の無い事から生じる程度のものであれば可愛げもあるが、たまに、作品によってはドラマチックな展開を描かんとするために、犯罪的なほど他人の事情を理解しようとしないキャラを登場させてしまうことがある。まあ、察しの良すぎるキャラばかり登場させていては、ドラマを作る方も大変なのだろうけれども。
その点、この「true tears」は、本当にバランスが良い。主人公は、結構繊細な少年だ。だから、自分の方に向かう感情もある程度把握することが出来るし、相手の行動の意図も理解しようと必死になっている。その姿勢を見ているだけで、知らぬ間に主人公に感情移入出来てしまう。まあ、絵本作家になりたいなどという「創作活動を将来の夢にする人」は、それくらいの感性を持ち合わせていてほしいものだ。
そんな彼なのに、彼は自身の置かれている複雑な状況が理解できず、いろいろと悩むことになる。そう、彼の置かれた状況の複雑さが、この「察しの良い人達の物語」にドラマを与えているといえるだろう。
例えば、最初は「友人の恋人」として登場してきて、視聴者の誰からも注目されていなかった愛子も、実は主人公に近づきたいが為にその友人の恋人という立場に「なってしまった」らしい。その、この物語が始まる前の込み入ったエピソードは、おいおい語られていくのだろう。
そして、なにより、主人公と同じ屋根の下に住む比呂美の立場こそ、この物語を一番複雑にしているものだろう。
彼女は主人公の想いの人だ。けれども、比呂美の方は頑なにそれを拒絶する姿勢を見せている。しかし、それはどうも彼女の本心ではないらしい。彼女は、同じ屋根の下に住むという事で、自分の主人公に対する心を封印したという。それどころか、別の男に対して恋愛感情を持っているという事すら主人公に告げている。
そこまで頑なになる理由は何なのか。それは、なぜ、よりにもよって同じ年頃の男の子の住む家に彼女が引き取られたのか、そして、どうして主人公の母親が比呂美の事を憎悪するのか、という事を少し考えれば分かってくることだろう。「それ」が真実かは未だ未確定だが。とにかく、この恋愛感情は、実に切ないものだ。
そんな、切ない恋愛模様の中に、この作品の象徴とも言える「涙をなくした少女」乃絵が入り込んできた所から、この物語は始まる。彼女に「も」兄が居る。兄は、乃絵の事を案じ、それでもなお自分の手元に何時までも妹を留めて置けないことを理解して、乃絵の事を主人公に託す。その際の、家族愛と恋愛の狭間を垣間見せる仕草が、実に繊細に描かれていた。
まだ、この物語はどのように転がるのかは分からない。けれども、そこで描かれているものは、とても繊細で、心が通ったものばかりだ。美しく正統的な画作りと併せて、これからも楽しんでいきたい。