Minori Chihara 1st Live Tour 2008 〜Contact〜 品川プリンスホテル ステラボール

茅原実里の「強さ」は一体なんだろう。
彼女の歌が「強い」のは、このツアーライブで、もういやというほど理解した。この「歌の強さ」だけで、彼女のライブは今後も参加する価値は充分ある。
しかし、それだけでない。彼女には、なにか「人格的な」強さを感じる。
茅原実里は「みのりん」の愛称で呼ばれている。その大人びた容姿からすると少しギャップを感じるような一寸子供じみたところがあり、そこが可愛らしく、ファンから「みのりん」と呼ばれているようだ。その「子供っぽさ」や、その言動の端々から感じる頼りなさは、単純に考えると彼女の人格面の「か弱さ」の様に思える。
しかし、彼女にはそんな表面に現れている「か弱さ」を補って余りある「強さ」を感じる瞬間がある。それは、その「強さ」を持っていれば少々のか弱さを問題にしないような、なにか根源的な強さだ。
彼女は、ライブ中のMCで母への感謝の気持ちをとつとつと話す。また、ツアーコンサート完了を受けて、自らの想いを、心から湧き出る言葉をそのまま形にするように話す。
彼女の言葉が途中で途切れる。そうすると、決まって観客席から「頑張って」の掛け声がかかるものだ。しかし、おそらく茅原実里は、そのような掛け声をまったく必要としていない。
彼女には「伝えたい想い」がある。確固とした想いが胸の内に渦巻いている。それを彼女自身、しっかりと認識しているのだろう。掛け声とはまったく関係なく、次の一言を紡ぎ出しているように思う。「自分には伝えたいものがある」という確信は、例え言葉が拙くても、最後には言葉に出来るはずという「信念」として、彼女の中に存在しているようだ。
また、彼女は、スタッフへの感謝の言葉を述べ、特にバンドメンバーには「観客に背を向けたままで」深々と礼をする。自分が行うべき「誠意」をしっかり認識しているのだろう。その姿に、人に阿って自分の芯をぶらす事の無い、確固たる何かを感じることが出来る。
茅原実里の中に感じる「強さ」は、実に朗らかで、人間的で、誠実なもの、のように思う。しかし、それはこのような言葉にすると、実に他愛の無いもののようにも思う。何故なら、まるで「小さな子供が普通に持っているもの」ばかりだから。
けれども、そんなものを持ち続けているからこそ、彼女は強いのだろう。胸に童心を持ち、だからこそ感じる大人としての想い。もしかしたら、彼女の「伝えたいもの」とはそんなものなのかもしれない。
茅原実里の歌声を色に例えると、「澄み切った青色」だろう。ライブ会場は、その青色のサイリュームで真っ青に染まる。
しかし、「純白サンクチュアリ」が歌われるとき、会場は純白の輝きに満たされる。この曲は、茅原実里が再出発を開始した最初の曲だ。数年前に歌の活動が止まり、最後にリリースした「まけない・・・」を歌い続け、長い我慢の時を過ごした彼女がついにたどり着いたのがこの曲だった。
茅原実里の童心のような純粋さは「純白」に例えられる。彼女が「純白サンクチュアリ」に万感の想いを込め、歌詞を詰まらしそうになりながらも、決して感情に流されずに歌い切る。その時、純白に染まった会場は彼女の心そのものだろう。正に「純白の聖地」がそこに現れたかのように。
この公演をもって、茅原実里初のライブツアーは終了した。しかし、これは「終わり」ではなく「始まり」だろう。茅原実里がこのツアーで残したものはあまりにも大きい。彼女の今後の活躍に、大いに期待したい所だ。