ローブに込められた想い 〜ネギ、その戦いの記録〜

「そのローブは買い替えねーのか?」By千雨(201時間目)
216時間目において、ネギはトサカにかなり危険な弱みを握られてしまった。そのきっかけとなったのが、ネギがいつも着ている「ローブ」。このローブを「ナギ」が大事にしている事を知っていたトサカが、それを着込んでいるナギを偶然見つけ、結果、ネギへの変身シーンを見られてしまったのだ。ネギがこんな穴の開いたボロいローブを持っていなければ、こんな事態にはならなかっただろう。
ネギは案外物にこだわる性格だ。それも、その裏にかなりしっかりした意志が隠されていたりする。この使い古され、ボロボロで穴も開いているローブについても、ネギの想いが込められているように思う。今回は、このローブについて少し遡ってみてみたい。
まず、最初にネギがローブを着たのは麻帆良祭二日目の武道会本選。(92時間目)
この時「お父さんと同じ格好で」と、このローブを着た動機を語っている。「同じ格好」とは、京都で見た紅き翼の写真(53時間目)のナギの姿を言っているのだろう。ほんの気まぐれのような口調だが、もちろん、ネギの胸中では強い憧れによるものだったのだろう。その後、武道会ではこのローブをずっと着ることになる。
このローブは、元々は裾がしっかりと揃っていた。つまり今みたいにボロボロではなかった。この裾が何時ボロくなったのかというと、対高畑戦の時(98時間目)。居合拳の猛攻に曝され、裾が千切れている。以降、ネギが着るローブは、必ずと裾がボロくなっている。
その後の重要なシーンとしては、やはり対ナギ戦だろう。ネギにとって思い入れの深いであろうこの戦いでは、ナギの一撃により右袖が半分千切れている。因みに、この時ネギは右腕にかなりの深手を負ったが、その傷跡をわざと残している。(ネギが残したかった傷はこの腕の傷であり、左頬の傷跡ではない。頬の傷は刹那が付けたもの。)
そして武道会が終わり、ネギが再度ローブを着たのはその数時間後の超との会見時。(133時間目)実際にはその間時間跳躍とかがあり、ネギにとってはもう少し時間が開いているが。この時、右裾は綺麗になっている。もしかしたら新しいローブに取り替えたのかとも思うが、下裾がボロのままの所を見ると、おそらくは右裾だけを直したらしい。つまり、同じローブを着ているのだろう。
この後、ネギは下裾のボロいままローブを着続ける。対超戦の時もそうだし(151時間目)、アルのお茶会に招かれた時(163時間目)もそうだった。ネギにとって、このローブを着るときは一種の真剣勝負の時、正に「正装」なのだろう。
そして魔法界に旅立つ時も。(182時間目)その魔法界の入り口、メガロメセンブリアゲートポートにおけるフェイトとの宿命の再会は、ネギチームにとって危険な戦闘になり、ネギは右胸を貫かれる。(186時間目)
その後、ネギはお尋ね者として魔法界に指名手配され、「ナギ」として行動するようになるが、このローブは大事に持っていた。それも、右胸の穴をそのままにしながら。
ネギにとって、このローブは何なのだろう。対高畑戦の時には下裾をボロボロにし、対ナギ戦の時には右裾を直している。そして、フェイトの開けた右胸の穴はそのままだ。
きっとネギは、自分の戦いの記録を、自身の身に付けておきたいのだろう。それは、自分の戦いの理由が、過去の「村の惨劇」によるものであり、犠牲になった村人に対する一種の贖罪であり、それを自身に刻み付ける事によって、自身の「罪」をいくらかでも軽くしたいという想いが、どこかに有るからなのかも知れない。だから、対ナギ戦時に、自分の身体に直接傷跡を得た時などには、右裾半分という機能性に問題の有る部分でもあり、ローブを直す気になったのかもしれない。
今、右胸についている穴も、後に残すとしてはあまりに目立って好ましくないだろう。普通ならば直すべきだ。事実、お尋ね者としての立場を悪くする原因にすらなってしまった。
しかし、この穴を受けた時、ネギはクラスメイト達を巻き込んだという更なる「罪」を感じてしまった。ネギにとってこの穴は、自身に対する罪の証拠でもある。もしこれを直すとすれば、クラスメイト全員と無事麻帆良学園に戻った時になるかもしれない。
ネギにとっての戦いは、今後もまだ続くだろう。その時、ネギはきっとこのローブを着込むに違いない。そしてこのローブには、ネギの戦いが「記録」として刻まれ続けるのだろう。