ひだまりスケッチ×365 第1話「はじめまして! うめてんてー」

力入っているなあ。
先のイベントで言われていたとおり作画が凄く、作品その物から「これで駄目なら何が良いんだ!?」という叫びが伝わってくるような回だった。
感想書く方も気合が入っちゃいそうw。

  • 新構成

前シリーズ「無印」では、ひだまり荘のある1日を描いていて、その時系列が各話ザッピングされていたけれども、今回は数日にわたる1エピソードを描いている。とは言え、次回予告を見るとザッピングはするようだが。前回も日を渡る回があったし、基本は変わらない?

  • 新キャラデザ

前シリーズよりも、若干原作寄り? 前作のシンプルなデザインより女の子らしく、可愛らしく、ちょびっと生っぽくなった感じ。1エピソードを描くというコンセプトだと、キャラにはより深い感情移入が求められる訳で、その受け皿の情報密度が濃い方が没入出来る事と思う。これは正解かも。
ゆのっち、かわいい。宮ちゃん、天然グラマー。

  • ストーリー

正に第1話として、原作でも最初のエピソードとして単行本に載っているゆのがひだまり荘に来るまでが、より密度濃く描かれている。原作では平行して宮子のエピソードも挿入されているのだけれども、それはあえてカットされ、今回のメインはあくまで、ゆの。力の入った作画で、ゆのの様々な表情を見せてくれるのが、最大の見所だろう。

  • 演出 その一

実はこの「ゆのがひだまり荘に来るまでのエピソード」、原作においてかなり淡白に描かれている。それはそうだ。この原作は四コマ漫画なのだから。ゆのの様に子供のようなキャラが、親元を離れ単身下宿するエピソードとなれば、その心境をもっとベタベタに描く事も出来るだろうに、ひだまりスケッチではそれは無い。実際のエピソードとして、ゆのが心境を誰かに語ったり、モノローグが入ったりする事は無い。
とはいえ、実際のゆのの心の中で「何も無い」のかと言うと、そうでは無いはずだ。
例えば、このような原作のエピソードがある。ゆのが最初にひだまり荘に着いた時、まったく平然とした表情をしている。しかし、自分の入るべき部屋に他人の表札があるだけで、激しく動揺する。
これは、自分の「居るべき場所」が不安定な状況にある為、一寸した事で心境が脅かされる事を描いてるエピソードだろう。つまり、ゆのはこの時、表面上はとても穏やかな表情をしているが、内心とてもデリケートな状態に居るのだ。
このゆのの心理状態は「ゆのがひだまり荘に来るまでのエピソード」全てにおいて、その裏で進行しているのだろう。このエピソード全体を、四コマ漫画ではなくアニメーションとして描くのであれば、このような部分をもっと丁寧に描きたい衝動に駆られるのは当然だし、視聴者としても見てみたい。
それを×365では、かなり上手く処理していると思える。
体育館に一人佇むゆの。それは母親の手から離れ、一人入試試験会場に入った時からゆのの心象風景なのだろう。例えば、運動が苦手で、体育で仲間が作れなかった時の過去の記憶などが元になっているのかもしれない。この心象風景は、この後、度々挿入される事になる。
しかし、その風景が破れる時が来る。それは、宮子と「みやちゃん」「ゆのっち」と呼び合った時。
天真爛漫な宮子は、人の心にどんどんと入ってくる。そして、人一倍素直なゆのは、それを当たり前のように受け入れていく。2人の性格のバランスが合致しなければ、ここまで短期間で2人は意気投合しなかったはずだ。こうしてゆのは、この瞬間に「親友」と呼べる存在を手に入れたのだろう。
繋がれていた母の手から離れ、実際の心境として硬くなっていたゆのの心が、この瞬間に解き放たれる。その描写が克明に描かれている。
後に描かれる事になるだろうが、ひだまり荘はある種「擬似家族」として、その構成員が機能している。ゆのは本来の家族から離れ、新たな家族の一人と出合った。そんな心の変動期を、とても上手く表現している。
また、この裏演出とも言える描写によって、表のストーリーの表現を変えずに済ませている。つまり「ひだまりスケッチで有る事」を大切に残している。それは、アニメ制作側の原作に対する誠意を感じさせる。
いや、もっと言えば、うめ先生への敬愛を感じさせる。本当に、惚れられているのだなあw。

  • 演出 その二

この、ゆのが心を硬くし、ひだまり荘という新たな世界にその一歩を踏み出す時、後一つ、一寸した面白い描写がある。
引越しトラックの中、ゆのは寝てしまい、気が付くとひだまり荘に着いている。
これは、一種の「死と再生」を意味しているだろう。「本当の家族と共に居たゆの」はここで死に、「ひだまり荘にいるゆの」に再生したのだ。
走るトラックの通る道路には「HEAVEN→」の文字も見える。
つまり、ひだまり荘は天国=楽園でもあり、家族という俗世から離れ、学生時代の、人生における最高のモラトリアム期間、楽園と呼べる世界に入った事を意味している。
ひだまりスケッチ」は、そんな「永遠の楽園」の物語といえるだろう。

ゆのと共にひだまり荘にお引越し。
たった一つのセリフで全て持っていかれたような気がするw。

?でわっしょい

?でわっしょい