ネギの未来は、先生業を全うした先にある

何かに躓いた時、何か違和感を感じた時、何はともあれ一番最初に戻ってみると、進むべき先を取り戻せるものだ。
ネギは何を求めているのか。それは、父ナギの様に立派な魔法使い「マギステル・マギ」になる事だ。
そして、それになる為にはどうすればよいのか。それは、麻帆良学園で先生になる事。これは、第一話の冒頭でネギに下された「神託」であり、ネギの運命そのものだ。ネギま!という物語は、この絶対的な運命の流れの中で、物語が動かなくてはならない様に出来ている。
そして事実、今のネギは先生として、多くの生徒に慕われている。その生徒達の信頼を裏切ったら、それは立派な魔法使いになる人物として失格だろう。つまり、ネギは先生として、生徒の事を何よりも大事に考えなければいけない立場にある。これは、ネギまという物語の、最重要課題なのだ。
だからもネギは本来無茶を出来る立場では無い。「オラ、わくわくするぞ」とか言って、バトルにすっ飛んでいくような事は、ネギには出来ない。
ネギが戦う時。その一つは、先生業に余裕があるとき。授業の合間を縫ってエヴァに修行をつけてもらったり、夏休みを利用して父の情報を求め魔法世界旅立ったのも、それに当たるだろう。
そしてもう一つが、生徒達を守る必要があるとき。魔法世界に入ってすぐ、生徒達は最悪の状態に陥った。こうなると、ネギは何が何でも生徒達の身の安全を回復する為に、ただそれだけを目的に全力を尽くさざるを得ない。今のネギは、それ以外の事を「やってはいけない」のだ。だからこそ、ネギの心は頑なになり、物語は閉塞感に満たされる。それは、この状況から脱するまで、決して消えることの無い重圧だろう。
ただ、それだからこそ、この状況下でネギは無茶が出来るともいえる。本来、死を賭しての修行など、責任ある先生が生徒を危険な地に残してやって良いことではないのに、それしか道が無いとなればやらざるを得ない。ネギは強くならざるをえない状況を得たおかげで、強くなることが出来たのだ。

それは、実は残酷な事なのかもしれない。ネギは元々10歳の子供であり、強い父に憧れて自身も強さを求める少年だ。ネギの心は、本来強くなりたいという思いを常に抱えているのだ。しかし、ネギは今のこの状況で、その自分の欲望を満たそうとする事が自分の生徒達にとっての裏切りにならないか、常に考えなければならない。自分の本来の「欲」を、「義務」として制御しなければならない。これは大いなる不幸だろう。
さらに、周囲の人物が追い討ちをかける。ナギの戦友ラカン。魔法世界の統治者の一人テオドラ。彼らは、ネギのそんな複雑な状況に関知しない。ラカンは、ネギがただ単に父のように強くなればよいと考えているだろうし、テオドラは、ネギが世界を救った英雄の息子として、ネギを世界の守護者候補としか見ていないだろう。彼らにとって、ネギのクラスメイトは、取るに足らない存在なのだ。ネギにとって、強くなりたいという欲求を満たしてくれる存在であるにも係わらず、ネギの基本的な立場に対する「敵」とも言える存在だ。これは、ネギの「運命」に対する敵と言っても良い。
状況は未だ悪い。ネギ達のテロリスト容疑は未だ晴れていない。あんな、身元も定かにしていない人物を、映像一つで容疑者にするなど、魔法世界の司法組織、警察組織の行動は、それこそ一番大きなまやかしだ。真面目に付き合うに値しないし、もしやるなら、権力で正すしか処置が無い。

だからこそ今のネギは、激動する状況の中で、自分の最も大切なものが何かを、もっと冷静に、真剣に、激情に流されずに考えなければならない。
「熱くなって我を忘れ 大局を見誤るとは… 精進が足りぬでごさるよ ネギ坊主」楓の言葉を思い出せ。
例えば、フェイトに言わされそうになった、あの屈辱的なセリフと似たセリフを言う必要があるかもしれない。「今、僕はフェイトに関わるつもりはありません」と。確かに、それは辛いかもしれない。しかし、ネギにはもっと大切な事が有り、それをネギ自身が思い出す必要がある。優先順位を取り違え、運命に背いた道を行ってしまうと、何時か辿り着くのは決定的な破滅かもしれない。あの時道を正してくれた楓のようにネギを正せる者は、ネギ自身のパワーアップと共に限りなく少なくなっているのだから。
ネギの未来は、先生をやり遂げた後にこそ続いている。その道が閉ざされるような事に、心を動かすべきではない。
今、ネギが考えるべき事は、神のように強くなることではない。ネギの役に立ちたいと思うが故に魔法世界に来てしまったネギチーム、そして、麻帆良学園に残っている生徒一人ひとりの顔のはずだ。そうであって欲しい。
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すみません。最近、コメント多く戴いているのですが、ほぼ一つ事に対して様々な意見を戴いているので、一つの記事としてまとめざるをえませんでした。これにてレスとさせていただきます。