魔法先生ネギま! 262時間目 チュ〜チュ〜カーニバル(ハートマーク) episode2

ふむふむ、予定調和どおり進んでいるかな?
今回もパクティオー回。夏美編。これもまあ、ありだよね。夏美もコタローも魔法世界編で結構厚めのエピソード積んできたし、ここでやらないと機会を逃しかねない。祭りの後の後夜祭って、そういうムードがどうしても漂うから、このタイミングって一番この手のエピソードを進ませるべき時なんだよね。
それにしても、かなり変則的なパクティオー。ネギとではない事。主人が魔法使いではなくイヌガミ遣いである事。互いに「好き」だと明言しながらであること。けど、その「好き」は、片方からは姉弟の感情であるという事。特に、この「肉親の情」と「恋愛感情」のすれ違いは、後々厄介な展開を生み出しかねないw。とにかく、非常に面白いパクティオーで、ネギまの物語として、決して単調な展開ではなく、つまりは「バーゲンセール」的な印象は受けない。二人の今後の展開にわくわくだ。

  • 夏美のひととなり

さて、折角なので、ここで夏美のひととなりについて語ってみたい。いやあ、良いよね、今回の描写は。彼女の本質が良く出ている。
彼女は、特異なキャラクターの多い3‐Aの中にあって、最も平凡で目立たない生徒だと自分自身思っている。その劣等感はそれほど大きい訳ではないが、それは逆に、普通である自分を受け入れ、自分が脇役であると思い込んでいるという事。だから、何か特別な事、人前に出る「ドレスアップ」とかしても、それは自分には似合わないと尻込みしてしまう。
そんな夏美が何故演劇部なのか結構疑問だが、彼女にとって、それ程矛盾は無いのだろう。演劇とは、一面、自分の平凡な部分を隠し、少し特別な存在にしてくれるもの。「自分はどうせ主役は出来ないけれども、普段の平凡な自分から開放してくれる演劇が楽しい」という気持ちでいるのかもしれない。
しかし、そう思うのは彼女自身の方だけであって、実情は少し違っているに違いない。
なぜならば、彼女は実に魅力的だから。
平凡な家庭で幸せに過ごし、微妙な劣等感を持ちながらも、常に自分の心に素直に反応する彼女。平凡で幸福であるが故の、健全な心の在り様が常に見え隠れする。「チモチワルイ」と言われたら泣いて逃げるし、イケメンに迫られたらボッとするし、子供に対しても飾りなく怒りをぶつける。こんなにも素直に感情を表現する人が魅力的でないはずが無い。
彼女は、自分が平凡であるという立場を隠れ蓑にし、それだからこそ、自由にその豊かな心を育んで来たのかもしれない。言わば彼女は、「幸福の魂」を抱え持つ、未だ羽化しない卵のようなものなのだろう。「みにくいアヒルの子」みたいな。彼女の演劇部におけるシーンはまだ描かれてはいないが、案外、既に他の部員から一目置かれる存在かもしれない。本人だけが気付かない中で。
そんな彼女がコタローに会い、彼からまっすぐな心を伝えられる。
夏美にも、もちろん体面というものがある。10歳の恋愛を知らない子供に感情を向けるのは、決して平凡とはいえないし、表面上は否定するだろう。
しかし、その場の雰囲気に満たされた時、実に簡単に、彼女の中から素直な心が零れだす。自分の心を素直にカタチにしてしまう。
これは、なんと強い力であるものか、と思う。
この「暴発告白」は、そのすぐ後、彼女が強烈に否定したように、倫理的に見ても、今やるべきではないだろう。しかし、同時に、「この時絶対にやるべき」重要な暴発でもあった。なぜなら、夏美はコタローから真摯な告白を受けているから。それに対して同じく真摯に答えなければ、夏美は「ずる」をした事になってしまうから。
強い抵抗の中で、しかしその時大切な事を、自分の素直な気持ちを、そのまま口にする。これほど難しい事はそうは無い。それが出来る彼女は「強い力」を持っているといえる。彼女は「状況がそうさせた」と弁解するが、それが出来る状況に自分を置くのも彼女の力だろう。彼女の強い魂がそうさせたのだ。
ともあれ、夏美とコタローの結びつきは、この互いの告白によって、単なるパクティオーを超えて繋がっている。二人の心は未だ幼いが、その繋がりは今後もより強いものとなっていくだろう。

  • 夏美とコタロー

ついでに、二人の関係性についても。この二人、その関係性についても、色々考えさせられる。
夏実を「幸福の卵」と称したが、対して、コタローは「虚無の子供」と言える。
コタローは、かなり悲惨な子供時代をすごしてきた。実際の彼は結構明るい、屈託の無い性格をしているが、それは彼生来の強い心がそうさせているのだろう。しかし、それでも彼の心には虚無が存在し続けている。「言えない仕事」を、言えないままなのは、その表れだ。彼の心の強さは、つまりは子供としての屈託の無さ、善悪に対する価値観の薄さが、その虚無の大きさを外から感じさせなくさせているだけだろう。彼は今のところネギの脇役を演じきっている。それを受け入れるのも、やはり自分に何かが足りないという漠然とした想いがあるからなのだろう。
コタローは、強い心を持ち、何事にも屈託なくあたるが、その心には虚無がある。そして、夏美は、自身が誰よりも平凡だと思い、何事にも控えめだが、その心には幸せの魂を宿している。二人は、自分達が人生の主役にはなり得ないと思う気持ちでは共通しているが、その魂は、まるで合わせ鏡のようだ。
ただ、そのコタローの「虚無」は、ネギや夏美達との出会いによって、人知れず解消されている最中のようだ。ラカンに憧れを持つというのも、その大きな変化の一つだろう。
そして、その大きな指針「女を守る」の象徴として夏美が選ばれたのは、偶然ではない。二人は、引き合う様にして出会ったといえるだろう。
二人の心が互いに触れ合い、補完しあうという展開は、非常に楽しみだ。なぜなら、それは脇役人生を歩んできた二人が力を合わせる事によって、二人揃って主役の舞台に立ち得るかもしれないから。いや、互いにパートナーとして認識した時点で、既に人生の主役になっているともいえるのか。ともあれ、今後の二人の活躍に期待したい。