劇団劇作家 劇読み!  vol.3「時はおもちゃ箱に詰めこんで」 TACCS1179

本来なら2度目の観劇になる予定だったのだけれども、前回は台風で辿りつけなかった。参加してみて、清水愛の活躍が実に素晴らしい劇(ドラマリーディング)だったので、嬉しかったのと共に、二公演見れなかった残念さも感じたり。
ドラマリーディングは、舞台背景は作られてなく、役者も台本をもったまま。ト書きも誰かが読む。けど、演技者のやっている事は結構普通の舞台と同じ。通しリハを見せているみたいなものか。役者を見たいものとしてみれば、これで充分だ。
20歳になった女性が、少女と大人の心の狭間で揺れ動くという話で、その揺さぶりをかけに来るのが、清水愛演じる「少女の心の化身」とも言える少女「桃」。他にも、「天使」とか「先生」とか「レディ」とか「リカちゃん人形」とか、ヒロインの内面の具現化見たいなキャラが登場し、内面を暴きだすような行動を取る。
しかし、一番重要なのが「桃」。彼女こそがキーパーソンで、ヒロインにしてみれば一番の問題で、「最も怖い存在」とも言える。言わば、「大人になりたくない」という彼女の心を具現化した「魔」と言ってもよい。
有る意味、非常に怖い。
対するのは、実は「天使」として出てくるさえない男。どうもオタクっぽいが、最後には理性で「桃」の暴走を止める役に回る。
けど、「桃」は最後まで「桃」のまま、その後どうなったのかは不明。これが非常に怖いw。物語上、一応現実のヒロインの幼馴染として登場しているのだけれども、その行動の一貫性、目的の為に周りに与える影響の大きさ、そしてその後の行方も不明と来ているのだから、その存在自体、何かの象徴、ファンタジー世界の住民としか思えない。リカちゃん人形が動いていたのも桃の力だった。きっと作者の中では、桃だけは超常の存在なのかもしれない。既に死んでいる幽霊だとか。(はっきりと書かれてはいないけれども)
そんな彼女が泣き叫ぶ。「大人になりたくない!」「歳をとりたくないよお!」もう、鳥肌モノの怖さだ。
清水愛という存在、彼女のオリジナル楽曲の世界観からすると、正に、この「少女心の魔」は当たり役だ。直接的には描かれていないけれども、彼女の世界観の中には、正に「この問題」から発生する「闇」が存在する。それを自覚的に演じている辺り、凄みを感じる。そういえば、先日のお渡し会でも、自身の作品についてかなり神妙に話していたなあ。もしかしたら、「この問題」をさらに突き詰めて、自身の世界観を深めていこうと考えているのかな? そんな事を妄想させてもらえる点でも、非常に興味深い劇だった。
ちなみに、この物語、閉じ方が面白い。このシナリオ、作家は二十歳の時に書いたという事だけれども、これは今の感性で書かれた閉め方か。けど、後から見ればさらにラストを変えたくなるのでは無いだろうか。本当はもっと悲しくも愛おしいものだと思う。それだけに残酷。