シミュレーテッドリアリティ〜世界の終わりと始まりの魔法「リライト」を考える為に〜

271時間目にフェイトが行使した魔法「リライト」は、衝撃的な魔法だった。
フェイトは言う。「この世界全てが幻なのだ」と。そして、その力は、ラカンの力をもってしても全く歯がたたない。なぜなら、あったことすべてが「書き換えられて」しまうのだから。
この魔法「リライト」は、大戦末期に世界を滅ぼす魔法とされ、「完全なる世界」によって行使されかけた「世界の終わりと始まりの魔法」と同じ、その魔法の別名だという。
これらから、考えられる事は唯一つ。フェイトの言葉は「例え」とかでは無い。少なくともこの魔法にかかれば、「魔法世界は幻も同然」という事になるだろう。
この設定は衝撃的だ。魔法世界の謎の、その最も大きな部分が明かされたと言えるのかもしれない。
しかし、この設定、案外難物だ。「世界そのものが幻想」「書き換え可能」という設定は、取り扱いがかなり面倒だからだ。
「世界そのものが幻想」という設定は、通常「シミュレーテッドリアリティ」などと呼ばれている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3
概念的にはかなり昔からあり、「概念」と言えるほど奥深い、というか「何でもあり」にも通じる設定と言える。なので、ここでこのウィキで紹介されている用語を使って、魔法世界の「シミュレーテッドリアリティ」の内容と照らし合わせてみたい。

  • 仮想市民型

まず、ラカンを含め、ヘラス人など魔法世界の亜人たちは、フェイトから「人形」と呼ばれている事から、この仮想市民である可能性が高い。少なくとも、しっかりと自我を持っていると思われるので「NPC」「ボット」ではないだろう。

  • 移民型

そして、フェイトが現実世界から来たアーニャなど魔法使いを「人間」と呼んでいることから、仮想市民ではないという事が考えられる。ゲーデルが「地上を追われた」と言っていたように、6500万人の魔法使いが魔法世界に移民してきたと考えられる。
とはいえ、この「人間」を「シミュレーテッドリアリティの移民型」と出来るかは微妙な所。SFの世界において、仮想現実は通常シミュレーションプログラム=実体のない仮想現実という位置づけになるのだろうが、ネギまは魔法が存在する世界である。「実体のある仮想現実」がありえる世界観なのだ。それは、ダイオラマ魔法球で証明されている。
今まで、物語の中では、魔法世界は位相の異なる世界に火星を触媒として作られた人造世界であるらしい、という描写であった。つまり、少なくとも魔法世界は実体があるという前提があった。だから、現実世界からきた人間にとって、魔法世界は「シミュレーテッドリアリティ」とは言い切れないのだ。魔法世界という異世界を旅しに来た事を自ら知っているのだから。

  • ブレイン・マシン・インタフェース

しかし、ここで疑問が生じる。「本当にそうだろうか?」と。
亜人達にとって幻である魔法世界。実体すら生み出す力のある魔法による技術。そんなものがあるのなら、魔法によって魔法世界という共同幻覚を見せるくらいは簡単という事は考えられないか。ブレイン・マシン・インタフェースと同じ感覚だ。
実体はゲートをくぐる際眠りにつかされ保存され、精神だけが魔法世界という実体のない仮想現実の世界にいるのかもしれない。精神を操れるという事は記憶を操れるという事であり、今まで魔法世界の実存を証明していた事すべてが嘘である可能性があるという事になる。
魔法世界は本当に実体のある世界なのか。もしくは、ダイオラマ魔法球と同じジオラマ世界なのか。もしくは、全て幻想の巨大なペテンなのか。「書き換え可能」「仮想現実」などという設定が出てくることにより、このあたり、どのようにでも解釈できるようになってくる。

  • 再帰的シミュレーション

そして、さらに発想を広くめぐらせる事もできる。つまり魔法の存在する魔法世界が仮想世界であるのならば、その魔法の使える現実世界は、実は仮想世界である可能性は無いのか。ネギま世界は夢では無いか、クラスメイトも、ネギの苦労も全て夢ではないか、という事になる。
そして、ザジがそれら全てをバクの様に食べて、ネギま終了とか。
・・・
すごいがっかりな最終回を想像してしまった。(^^;)
先日「夢落ちは三文安」と言ったが、正に、少しでも夢落ちに通じる設定が挿入されるだけでこの様な思考展開が出来てしまう、という事を意味している。
おそらく、ネギまはこの様な展開は見せないだろう。この「リライト」という魔法も一種の方便で、実際にはこちらが想像しているものとは違う性質のものである可能性もある。
魔法世界にはまだまだ謎が多い。「リライト」という魔法の設定が明かされた事は、その魔法世界の謎を更に深めただけと言える。ネギま世界の謎解きの、真の衝撃はこれからやってくるのだろう。