あの日の「彼」と同じ様に 〜魔法世界の地獄絵図を見て思うこと〜

ネギまの277時間目は、とんでもない展開になった。
クラスメイト達と心を通わせた魔法世界の住人が、それこそ目の前で次々と消されたのだから。のどかを庇いながらクレイグとアイシャが、亜子を庇いながらトサカが、夏美達を庇いながらチーフが、そして、夕映を庇ったエミリィは、夕映の腕の中で消えていった。
なんてひどい、恐ろしい、悲しい展開だろう。クラスメイト達の仲間、恩人、そしておそらくは親友であった存在が、それこそ正に「消去」されてしまったのだ。こんな展開などありえない。
彼ら魔法世界の住人を消した魔法は「リライト」。つまり書き換え。事実を書き換える魔法という事か。いや、この魔法は魔法世界の住人にしか効かない様だ。だとすれば、魔法世界の住人そのものが、なにか特殊な存在だったのか。フェイト達の言葉によれば、彼らの存在こそが幻。だからこそ、簡単に消える。
ならば、もしかしたら、そんな特殊な存在をどうこうする特別な魔法で消えたのならば、特別な魔法を使えば復活できる?そんな期待も強まってくる。いや、そんな「救い」にすがりたくなる。
ただ、それはあくまで読者の認識。目の前で大切な人たちが消えたクラスメイト達にとって、彼らの消滅は「死」として受け止めざるを得ないだろう。なんて苦しい、辛い展開なのだろう。
しかし・・・、
実を言うと、ネギま読者として、もう一つの感情が湧き上がって来るのを抑えることが難しかったりする。
そのもう一つの感情とは・・・期待感。
ネギまという物語の展開の中で、それが魔法世界編に移って主人公ネギを中心にハードな展開が見え始めたりする中で、どうしても気に掛かっていたことがある。それは、ネギとクラスメイト達の温度差。
クラスメイト達は、どんなに頑張ってもその意識は普通の中学生だ。しかし、そんな普通の中学生が、ネギに心惹かれたからという理由で魔法世界というハードな世界に迷い込んでしまった。そこで、奴隷にされたり、命を賭けた戦いに巻き込まれたり。それは、あまりに理不尽に思える。彼女達の人生が奪われている感覚がする。
前例で言えば明日菜。彼女は元々クラスメイト達の中でも少し独特だ。孤児で幼い頃の記憶も無く、何処か特殊な能力を持っていた。そんな彼女ですら、魔法世界のハードな世界に入る事を認識するのに、エヴァの激しい修行と言うイニシエーションが必要だった。
しかし、他のクラスメイト達には、そのような体験は無い。正確に言いば、刹那と龍宮とおそらくは楓を除いたクラスメイト達には、そのような「動機」は無いと考えてよいだろう。
だから、例えのどかがトレジャーハンターとして逞しく成長したとしても、なんだか寂しい感じがした。それは、のどかの頑張りが、彼女の心の動機(ネギが好き)に見合わない感じがしたから。夕映にしても、記憶を無くした中での頑張りは、それこそ理不尽そのものだ。今までの彼女の人生の記憶と直接繋がっていないなど、勿体無さ過ぎる人生の使い方だろう。
しかし、だからこそなのだ。彼女達には実はもっと強い動機が必要なのだ。ネギまの物語の中でもっと強く生きていくには、より強い心と動機を持って、彼女達の人生を切り開いていく事が必要。何時までも理不尽に人生を奪われているだけの存在ではつまらない。
期待感とは、彼女達、大切な者を目の前で奪われたクラスメイト達が、そこで新たな動機を手に入れて、より強く成長していくことへの期待感だ。
大切な人を奪われて、クラスメイト達はどう思うのだろう。誰よりも強い心を秘めているのどかは?自身を平凡な存在と決め付けている夏美は?記憶が封印された中でも深い情熱を保ち続けている夕映は?
特に興味深いのは亜子だ。彼女はどう思うのだろう。亜子は誰よりも人が傷付くのを恐れる。血を見ただけで気絶してしまう。それはおそらく、彼女の過去に秘められた「人の死に対する恐れ」からくるものだろう。そんな彼女が目の前で人の「死」を見た。今までと同じ様に気絶するだけだろうか。彼女の心に一体何があるのか、それはこれらか明らかになるのかも知れない。
魔法世界編に入って、どこかもやもやしていたもの。それはこの魔法世界編がクラスメイト達の物語では無いという事だったのかもしれない。今までの魔法世界編は、ネギが成長するためだけに機能していた物語でしかなかなかったのかも知れない。
けれども、これからはそれも違ってくるだろう。なぜならば、これからクラスメイト達は自分達の動機で動く存在となるのだから。
そう、彼女達はここに来て初めて、幼い日にあらゆるものを奪われた、あのネギと同じ立場に立ったのだ。
・・・
在留組との差が開く一方だなあ・・・。
しかし、それはそれでドラマになるかもしれないと、ポジティブに考えておこう。