宮崎のどかの「変身」 〜今までの、のどかのイメージは正しかったのか〜

280時間目ののどかは凄かった。
今までの彼女の、トロくて貧弱で頼りないイメージを一気に吹き飛ばすほどの大活躍。身を翻し、瞬動とも思える動きを見せ、あの楓すら遅れをとった闇使いデュナミスからの攻撃を凌ぎきって逃げる事に成功したのだ。
これは、どう考えても今までの彼女のイメージでは無い。こんな急激な変身が可能なのか。彼女の活躍に大いに喜ぶと共に、それが「本当にあり得る事なのか」という疑問すら湧いて来てしまう。
しかし逆に、いままでのそののどかのイメージが本当に正しかったのか、という見方もある事に気付いた。
今回は、その辺りを検証してみる。

  • トロいのどか

まず、以前ののどかのトロさを確認しておこう。
物語に絡んだ最初のシーン、その時からのどかはトロかった。本を抱えて、ふらつきながら階段を下りようとして、階段から落ちてしまう。それをネギが助け、さらにそこを明日菜が見て、ネギの魔法がばれてしまう。物語が動き始める、最初の最も印象的なシーンで、のどかのトロさが描かれている。
この時から、のどかのイメージは決まったと言ってよいだろう。ネギに魔法で助けられる側の女の子としてのイメージだ。
その後も、彼女のトロさ、運動音痴ぶりは折りに触れ描かれている。6時間目のドッジボールでは相手に背中を見せて狙われている。55時間目のボーリングでは、ボールをまともに投げることさえ出来ていない。

トロくて運痴、そんなイメージのどか。しかし、本当にそうなのか。実は彼女には、少し違った側面もあるのでは無いかと思える要素がある。
最初に気になったのが、彼女が図書館探検部に入っている、という事。図書館探検部の活動が描かれた時(8時間目)、のどかはその探検に参加はしていないが、その活動がかなりハードである事が、夕映の行動からも判る。バカレンジャーの支援が無い中でも、普段からある程度厳しい環境で探検活動していたようだ。
そして、その活動にのどかも普段から付き合っていたであろう事が判るのが、35時間目の「ラブラブキッス大作戦」。この時、のどかは夕映のサポートがありながらも、旅館の屋根伝いに目的地(ネギの寝室)に達している。それは、二人の言動からしても部活で普段からやり慣れている行動のようだ。
のどかは、図書館探検部員として普段から冒険慣れしているのだ。

  • 図書委員のどか

そして、彼女の要素としてもう一つ忘れてはならないものがある。それは「図書委員」であるという事。
図書委員と言っているが、おそらくは司書的な活動をしているという事だろう。
司書のイメージと言うと、一般的には知的な仕事として女性などはお淑やかなイメージになるのだろうか。しかし実際には違う。司書は基本的に肉体労働だ。毎日大量の本を右から左に動かし整理する仕事。体力や筋力がなくては到底勤まらない。本は結構重たいものなのだ。
のどかは、学校総合図書委員と図書委員を兼任している。つまり、あの超巨大学園麻帆良学園に行き来する図書を管理する立場にあるのだ。最初の階段落下シーンで大量の図書を抱えていたが、それは校舎と図書館島で図書を移動させていたようだ。他にも同様の描写があり、それが彼女にとっての日課なのだろう。
普段から重たい本を大量に抱え、広い学園内を移動する日々。かなりの体力を必要とする活動である事は間違いない。身体を鍛えまくっているようなものだ。そんなのどかが、ひ弱であろう筈がない。下手な運動部員より体力があってもおかしくないくらいだろう。
そう考えてみると、今までの彼女のイメージは全て覆ってしまう。体力があるけれどもトロい。それは、単に普段から本を扱う事以外しないので、スポーツ的な身体の動かし方を知らないだけなのではないだろうか。今までの描写も、球技などまず慣れないと形にならないものを苦手として描いていたのかも知れない。その裏には、しっかりとした体力を隠していたのかも。

  • トレジャーハンターのどか

そんなのどかが、魔法世界に来て自分の力で生き抜かねばならない状況に置かれる。大好きなネギせんせーの為に、自分の能力を上げねばならないと、自身の能力開発に邁進する。
のどかは、エヴァの別荘における修行で魔法の才能が無い事を思い知らされている。ならばどうすればよいか。そこで思い至ったのが「身体強化」だったらしい。
彼女のアドバンテージは、アーティファクト「いどのえにっき」による読心術だ。それはつまり、戦闘時に活用するには相手の行動よりも早く行動する身体的能力が求められるという事だ。その身体的能力が上がるほど、読心術活用の幅が広がる。相手の心理の死角をつければ、瞬動よりも効果的な事が可能になるだろう。
トレジャーハンターの仲間になったのどかは、その事を念頭において修行に励んだのだろう。身体強化の効果は、ダンジョンから逃げる際仲間の誰よりも先を走れる程だった。崩壊する回廊で、人ひとりを片腕で持ち続ける事もできる筋力も身につけた。
これらは、単に魔法があったから出来る事では無いだろう。身体強化魔法に伴う実際の身体訓練もしたに違いない。それは、もしも鈍っている身体が下地では難しい。しかし、図書館探検部員であり麻帆良学園図書委員であるのどかには耐えられた。身体強化こそ、のどかと相性のよい技術だったのだ。
そして、凄腕の賞金稼ぎとの戦いで大きな敗北を喫した後、格上の相手との戦い方も検討していたようだ。
それらの、今まで蓄積してきた努力が、仲間を目の前で消され、自分の身にも危険が迫る絶体絶命の土壇場で実を結んだ。人にはスタイルというものがある。自分にあった方法を選択し、それを如何に活用するかによって、他の人間には真似できない境地に至る事ができる。のどかの読心術と決して屈しない精神力と思考力、そしてもともとあった充分な体力に身体強化魔法を組み合わせる事、それらのコツをつかんだ事によって、のどかの戦闘スタイルというものがここに確立したのだろう。
のどかのこの活躍は、ある意味必然だったのだ。