NANA MIZUKI LIVE GRACE 2011 -ORCHESTRA- 横浜アリーナ

非常に珍しいオーケストラライブ。アニメイベントではたまにある劇版のオーケストラコンサートとかではなく、あくまで水樹奈々のライブにオケが伴奏として付くという。一体どんな雰囲気になるのか。もしかしたら、結構しっとりした感じのライブになるのか、と思ったりしていたのだけれども・・・
蓋を開けてみれば、いつも以上に豪華で重厚な伴奏である事以外はほぼ同じ雰囲気の、飛んだり跳ねたり光ったりの水樹奈々ライブだった。
それにしても、これだけオケが揃うと、流石に素晴らしい。80人の大編成。それで水樹奈々曲の伴奏をしてくるのだから、重厚な音圧それだけで魅了されてしまう。
最初、オケのチューニングだけで気分が高まり、気勢をあげる観客w。そしてチャイコンと共に空から白いドレスで降りてくる歌の女神の如くの水樹奈々。そして、空に浮いたまま「天空のカナリア」のような大音声の曲を歌い上げる。素晴らしい。というか、その存在自体が奇跡過ぎる。
今日の水樹奈々は、いつも以上にはしゃいでいたように見えた。いつも以上に声の張りが強く、少し抑制仕切れない部分もあり、音程をこぼしてまで歌をつむぐ。けれども、それにまるで怯むことなく、逆に楽しくてたまらないといった風情で、更に声を張り上げていく。
終ってみれば、20曲弱。オーケストラ編成としては贅沢すぎる曲数ではあるが、水樹奈々ライブとしては、今ではこの曲数は少ない部類と認識されるだろう。恐ろしいほど強い喉を持つ水樹奈々にとっても、物足りないのかもしれない。このオーケストラライブという、おそらくは今後もそうそう巡ってこない豪華なコンサートに、彼女は持てる力の全てを出しきって臨もうとしていたのだろう。
ただオケ伴奏というだけでも贅沢なのに、それと相乗効果で、水樹奈々の歌声においても、最高級のライブであったといえると思う。なんとも贅沢な時間だった。
そんな水樹奈々にとっても素晴らしい時間だったのだろうと、さらに思わせるのが、彼女の涙。先日出版された「深愛」では、父への思いが綴られているというが、その父との月日の結晶が「紅白」であり、このような「ごほうびのような」オーケストラライブであり。このような豪華なライブを開けるという水樹奈々の成功を目の当たりにし、その彼女が自身の幸せを全力のライブで返してくれるという、なんともいえない幸福感。
奇跡のような成功は、それを見ている他人にも幸せを分け与えてくれる。そして、その奇跡が奇跡でもなんでもなく、ごく普通の父娘による地道な努力の賜物である事を知って、さらに熱いものを感じさせてくれる。このライブは、そんな水樹奈々という成功者の、一つのメモリアルライブだったのだろう。

深愛 (しんあい)

深愛 (しんあい)