TVソードアート・オンライン総評 〜TVアニメAWとSAOの違いは何だったのか〜

やはり、この作品だけは感想を書いておこう。原作から好きで、アニメ化されても充分付いていけて、かなりはまっているから。これだけ「はまっている」という感覚は久しぶりかも。なんというか、いつまでもこの世界に浸りたい、現実に戻りたくない、という感覚。最近ではそう無いよ。
それにしても、おかしなものだ。ほぼ同じくらい好きな、同じ原作者のアクセルワールドではこういった感覚にはなれていないのに、SAOでは、はまっている。世間の評価も大体同じ様なものなのでは無いだろうか。BDの売り上げとかにも現れているし。その違いは何だろう。
実際の所、話の構成とか脚本とかを考えると、実はAWの方が良いのではないかと思える。原作を水増しする番外編の挿入もバランスが良かったし、全体の流れも実にスムーズだった。話の盛り上げ方とか、カタルシスの感じさせ方とかも的確だったと思う。更にいうと、作画自体も安定していたし、演出も悪くなかったと思える。・・・なのに、どこかはまれなかった。
それに対して、SAOのシリーズ構成はというと、はっきり言って少しギクシャクしたところが多かった。特にアインクラッド編については、元々大骨格があるものの少し性急な作品だったところに、後で原作者が構想した「プログレッシブ」部分を半端に付け足しているので、大きくバランスを崩している。後半に入り段々と「整って行った」印象はあるものの、最後の最後まで、「物語の描き足りなさ」みたいなものを感じ続けていた。
しかし、それでもSAOの方が断然「はまれて」いる。
その理由はと考えるのだけれども、おそらく、作品において描こうとしている対象が違うからでは無いかと思う。
アニメAWで描かれていたものとアニメSAOで描かれていたもの。それは、AWで作り手は「物語」を描くことを重視し、SAOでは「世界」を描く事を重視していたのでは無いだろうか。
AWの物語は実にスムーズに展開し、誰もが主人公の境遇とかにも有る程度感情移入できるものだっただろう。しかし、そこで描かれている電脳世界「ブレイン・バースト」の世界には、あまり入りたいとは思えなかった。その世界を魅力的に描こうという意図が感じられず、その世界で戦う事に対して「ワクワクする」感覚なぞは、ついぞ感じる事は出来なかった。
それに対して、SAOの「アインクラッド」は、最初のシーンから魅力的に描かれている。その世界に入る事のワクワク感がとても丁寧に再現されている。それは、その世界が殺人ゲームの世界である事が分かった後もそうであり、その世界から出た時には、強い郷愁を感じるほどだ。
おそらく、AWの作り手は、電脳世界を物語を作る手段の一つ程度でしか考えていなかっただろう。しかし、異世界を舞台にした物語では、それは考え違いというもの。異世界こそが主人公と考えても良い。そこに魅力がある事がまず第一であり、その後に物語がつづいていても、その作品には魅力が表れるということもある。
AWでは、モブバーストリンカーに視聴者の素人デザインが入っていたのを見て、げっそりとしたものだ。なぜ、作品の魅力の根本であるデザインに、素人のデザインを使うという発想が生まれるのか。その他、まるで現実の物体と変わらない「デジタルならこうなるだろう」的な納得を呼び起こす描写が無い、魅力に乏しい世界観に終始していたと言って良い。
対して、SAOでは、徹頭徹尾デザインには凝っていた。デジタルの異世界で生活する事について、必要最低限ではあるものの、しっかりと考えてデザインされていた。そこに存在するはずなのに、デジタルでしかない、その儚さを感じさせることで、それゆえそのデジタル世界に生きる人の価値観を強く感じることが出来た。
このデジタルの異世界という発想は、まあ所謂昔ながらのサイバーパンクSFの一種といえるのだけれども、それでも、現実と地続きな感覚が、何故か新しさを感じさせる。それは、これから来るであろうと信じる事が出来る未来像であり、「来て欲しい」と思える世界だからだ。
それ故に、来て欲しいと思えるようなデザインの世界観である事は、絶対優先条件だったのに、AWではその部分が疎かになっていたのが実に残念。SAOについては、その魅力有る世界観が存分に表現されていて、その一シーンを見ただけでも、その世界に入ってみたくなり、そしてはまってしまうw。
ソートーアート・オンラインには、とても魅力的な世界に誘ってもらって大満足。原作もまだまだ続きが沢山あるし、今後とも制作を続けて欲しいものだ。
対して、アクセル・ワールドについても、原作はいくらでもあるし、是非リベンジしてもらいたいものだ。この二つの世界は、アニメ化によって、きっとより魅力を増すものと感じている。
今後の展開に期待したい。

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