豊かな物語としてのアニメ「ラブライブ!」 〜ココロの伝播とキャラの象徴性〜

いや、実に素晴らしい。もう、見ていてワクワクが止まらない。さすが、公野櫻子原案だけの事は有る。それとも、花田十輝の力なのかな。
素晴らしい点は多々あるけれども、その中で、脚本構成の部分で2点だけ挙げておきたい。
構成の良さのまず第一として、主人公達の目標=アイドル活動に対する、「抵抗」の設定が絶妙であるということ。
やはり、目的を達成させる物語には、その「抵抗」の設定があるのだけれども、それは普通、現実的な問題のクリアとなるだろう。例えば、ここではダンスを鍛錬したり、歌を作ったり、メンバーを集めたり。
しかし、それは物語の中で当然描くべき事であり、ある意味予定調和でしかない。実際に、それを描いているだけでは物語としての「感動」には届かないだろう。
なので、感動を呼び寄せるもう一つの抵抗が、その予定調和の裏でしっかりと設定されているのが、この構成の良い所。そのもう一つの抵抗が、普通の高校生にアイドルなんて出来るはずは無い、というココロの抵抗。
主人公、高坂穂乃果は少し考えなしの性格で、唯一そのココロの抵抗が存在しない。そんな彼女が起爆剤となって、本来であれば普通の高校生ではありえないアイドルへの道へ進みだす。まず、彼女の親友達が彼女に感化されてココロの抵抗を剥ぎ取られる。そして、周りの人間も心の中にさざなみが生まれ、ありえないと思いつつも、穂乃果達の活動にどこか期待し始めている。
最大の壁となっているのが、より真摯に学校再生を考えている生徒会長なのだけれども、実際には彼女が後のラブライブメンバーの一人である事は周知の事実だから、彼女をクリア出来た時、本当の意味でアイドルグループが生まれるという、未来の希望への展望すら、このココロの抵抗で表現させている。
物語における感動とは、実はココロの伝播に他ならないのだから、それが目に見えて分るように展開するこの構成は、実に秀逸といえるだろう。
そして、もう一つ素晴らしい点が、そうしたココロの伝播していく、メンバー達の配置。これはもう、公野櫻子マジックとしか言う他無い。
やはり、一つのグループがあったとした場合、そのメンバーは自分の持ち味を発揮し互いに補完し合う、有る意味象徴的な存在となっていく。その「象徴性」が実に素晴らしい。
まず「ココロ」の中心である所の高坂穂乃果は推進剤であり、とにかく前へ進む存在。次に園田海未は、そんながむしゃらに進む穂乃果のココロの「制御役」であり技術的補佐役でもある。もう一人の親友南ことりは、海未とは逆に、基本的に穂乃果のココロの「肯定者」であり、彼女のメンタル的補佐役になる。この三人のバランスがまず素晴らしい。
そして、そんな三人の上位として、生徒会長、副会長が居る。彼女達は、学校という「世界」を管理しようとする存在でありながら、その「世界」は、廃校という「崩壊」が予言されている。そんな「世界の危機」に対して責任を持つ絶対者である権威の象徴「王様」の生徒会長と、それをサポートし、まるで「神官」のように神秘の力でその絶対者に助言を与える副会長。
他にも、世界を危機から救う力であるアイドルの世界により近く「知識」を持った存在らしい3年生や、アイドルの世界からは遠いけれども、音楽という「技術」を持ち合わせた1年生、また、そんな世界の危機を救う存在に憧れを抱き、自分でも知らずに彼女達にグループ名という「魂」の一端を与えたらしい1年生など、一人一人のメンバーが、実に上手く、自分達の「役職」にはまっていくような感覚が、実に気持ちいい。その一人一人が、まるでタロットカードの様だ。
こうした、精神的な世界の構築が上手く決まっている作品は、ほんの少しの情報を与えられただけでも、そこから幾らでも独自の発想をすることが出来る。つまり同人誌的な空想が幾らでも広がるという訳だ。
こういう物語こそを「豊かな物語」と言えるだろう。もう、来週が待ち遠しくて仕方が無い。

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