新世代魔法少女は、未だ冒険しない〜スマイルプリキュア雑感〜

先日スマイルプリキュアが終了した。作品的には、とても楽しい作品であったことは確かなのだけれども、実際に最終回を迎えたとき、いま一つ物足りなさを感じたシリーズでもあった。
プリキュアシリーズが、反復を繰り返している作品であることは、もうある程度共通の認識になっているだろう。つまり、より幼児向けのファンタジー色の強いシリーズと、少し大人向けのリアルを含めるシリーズを繰り返している。一度作品に触れた児童の年齢上昇に合わせるためにか、次のシリーズでは少し大人向けの要素を加えたりするのだけれども、そのままだとどんどん高学年向けになってしまうので、次の次のシリーズではそういった考慮がリセットされることが多い。
スマイルプリキュアの前シリーズ、スイートプリキュアは、結構大人向けの要素も含まれていた。他人や大人との関係性が存在したり、敵である悪にも受け入れるべき要素があったり。ある意味、児童に付き合って見る大人、もしくは好きで見る大きなお友達(w)も、ある程度関心させられる内容だったりした。
そして、今回のスマイルプリキュアは、ある意味リセットされた世代向けのプリキュアシリーズだったと思う。
物語は5人のプリキュア同志の関係性に終始し、あまり他人や大人が物語に絡んでこない。そのため、世界の危機とかになっても、非常に抽象的な描写でしか危機を描けず、リアリティが不足がち。実際には、リアルに嵌められていない設定なので、その様式美などはそれなりの見応えがあるけれども、反面、内容的には結構薄いものであったように感じられる。スマイルプリキュアでは、特にリセット期作品であることを考慮しても、その度合いがかなり強いシリーズだっただろう。
実は、このスマイルプリキュアについて、気にかけていることがあった。
というのも、プリキュアシリーズは変身戦闘魔法少女モノとして、現在ほぼ唯一その属性が継続している作品であり、そんなシリーズが、あの東日本大震災を超え、さらに、変身戦闘魔法少女モノ史上でもかなり大きなターニングポイントと言える「まどか☆マギカ」という作品を超えたのちに初めて作ったのが、このスマイルプリキュアであったから。それがどのような内容になるのか、結構気にしていた。
結果としては、よりファンタジー色の強い、非常に「保守的」とも言える作品であったといえるだろう。
東日本大震災を超えた後に、逆によりファンタジー色の強い、保守的な方向に走るという判断は、理解出来なくもない。しかし、それが本当に正しかったのか?というと、どうしても疑問符が付く。
アニメを、単なる「逃げ道」にして欲しくはない。子供たちに対して発するものであるのならなおのこと、もっと攻めて、少なくとも子供たちの状況に寄り添うものにして欲しい。
東日本大震災の影響はまだ誰の心にも残っているだろうし、それを受けた人たちに発する作品が、単に保守的であるのは、作品としての逃げととられても仕方ないだろう。
そして、一つのターニングポイントと言えるまどかマギカのような作品も提示されたのだから、なにか、より新しいものを作るという意志を示して欲しかった。
今はおそらく「新世代」といえる時を迎えているだろう。その中で、今までと同様の反復の繰り返しでは、何かが足りないと思える。
プリキュアシリーズには、今を生き抜く唯一の魔法少女シリーズとして、その新世代に見合う冒険を作品中でして欲しいと思っている。
ドキドキさせてくれるかな。

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