それが結論?ONE PIECEヒットの理由

たまにヤフートピックスでアニメ漫画系の記事が載ることもあるけれども、そういうのに限って結構トンチキな記事が多かったりする。今回もまた、唖然としてしまった。

  • ONE PIECE>ヒットの理由は悪魔の実? 1万人アンケートで産業能率大が分析

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130310-00200006-mantan-ent
一体、何をどうすれば、この結論に達するんだろう。w
少なくとも、「ヒットの理由が悪魔の実」では無い事だけは、断言できる。
なぜなら、他に同様の設定の作品がゴマンと有るから。いわゆる「異能力者バトルもの」として、一つのジャンルというか、少年漫画誌のバトルものの定番だ。
キャラと悪魔の実が別々に人気がある事が理由ともしているけれども、別に他の作品でも、キャラ人気と技人気が合致しているという訳でもないし、技にキャラのイメージとは別の意外性を持たせるのは、よくあるパターンだ。
じゃあ、ONE PIECEのヒットの理由をお前が言えるのかというと、・・・それほど難しいことじゃ無いと思うのだけれども。
ONE PIECEがなぜ多くの人に売れているか。それは「読んでいることを人に自慢したくなる作品」だから。
読んでいることを少しだけ人に自慢したくなるような作品だからこそ、人に勧めてみたくなり、その勧められた人もまた人に勧めるという連鎖を作る。
では、その自慢したくなる要素は何かというと、大きく二つある。
一つはデザインの良さ。ONE PIECEのデザインは、心象を表現する傾向の強い日本の漫画というよりも、あくまでデザイン重視の、洋風のバンド・デシネの雰囲気がする。ちょっとおしゃれなイメージがある。
そしてもう一つは、リベラルな内容であること。ある意味、これこそがONE PIECE最大の魅力かもしれない。
主人公ルフィーの強さの秘密は、実はゴムゴムの実の力「ではない」ことは、読んでいる読者ならば誰もがわかっているだろう。彼の本当の力は、何よりも「自由を重んじる心」にある。
彼の選ぶ仲間も同じ。別に能力があるから選ぶのではない。自由を求める心があるかどうかで選んでいる。例えば仲間の一人で、ある意味世界で一番「自由ではない」かもしれない人物ニコ・ロビンが居るけれども、だからこそ彼女は誰よりも自由を欲していて、そこをルフィーは見込んでいると言える。
このルフィーのリベラル思考は、物語を進めても全く変わらず、全くぶれない。これだけ長く物語を続けているのに、彼が誰よりも大きな自由な心を持っていると思わせる完璧な人物造形だからこそ、この作品のリベラルさは維持され続ける。
これは、あらゆる困難に対する解決の糸口とも思える爽快なもので、だからこそ、この思考に触れるだけでも誇らしく感じるし、とても大きな魅力となっている。
これらに加え、後追いでディズニー映画「パイレーツオブカリビアン」の大ヒットが被ったり、さらには、最近では作品世界自体が全地球規模のとても大きな広がりを見せていて、他のどのエンタメ作品よりもスケールが大きいと思える作品になりつつあることも、この作品を自慢したくなる要素だろう。
・・・これって、ONE PIECEを少しでも読んでいる人にとっては、ある意味常識でしょう?
悪魔の実は、そりゃ普通の読者にアンケートを取れば、最初に思いつきやすいワードだし、作品の魅力の一つだろうけれども、「大ヒット足らしめる理由」にはならないだろう。
なんだか、滅茶苦茶大変な調査をして分析した結果、全く見当違いな答えを出すなんて、本当に可笑しな話だ。

ONE PIECE 69 (ジャンプコミックス)

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