花澤香菜 live 2013 “claire” 渋谷公会堂

ついにやってきた、花澤香菜のライブ。この日をどれほど待ったことか。
花澤香菜と言えば、ある意味、生ける伝説とも言える存在だろう。彼女が出る萌えアニメはヒットする。彼女が居たからこそ、萌え作品として注目された・・・。「花澤香菜出演作品ヒット神話」とでも言うべき状況を生み出し、彼女自身も引っ張りだことなった。若手ヒロイン声優の、正に筆頭とも言える存在だ。
彼女の声の魅力は何なのか。この疑問について未だに謎だと思っているが、一つ推測を立てている。
彼女が多くの作品に求められ、例えば女性主人公として主演したとしても、決してそれだけでは作品が売れると言う事にはならない。花澤香菜の声は、「ある一つの状況に」はまったとき、途轍もない魅力を放つ。その「状況」とは何かというと、それは「自分の意思を手放した少女」を演じた時。
意志ある強い女とは真逆の、「男性の為に自分の行動の全てを許してしまった少女」みたいな存在を演じるとき、花澤香菜は途轍もない魅力を発する。その自我の解放感と相手への依存感を声に込める能力がピカイチなのだと思う。花澤香菜は、そういった場面を演出するセンスに長けているのだろう。
・・・演技論になってしまったが、もちろん、花澤香菜の声質も素晴らしい。
実際のところ、彼女の「声質そももの」について、驚くほどの素質を感じたりすることは無い。なのに、彼女の声は素晴らしい。とても魅力的だ。基本はチャーミングな澄んだ高音ながら、それでいて、甘え、霞む様な吐息も多く含んだウィスパー系でもある。その相反する少女的な声の魅力を同時に持ち合わせる、絶妙に制御された声だ。
結局、彼女はその声質も、自身の制御によって、絶品級の声質を「作って」いるのだろう。演技のセンスも含め、その感性たるや他の追随を許さない恐るべき能力の持ち主だ。
そして、歌だ。(ここからやっとライブの感想ですよw)
結局、彼女の声質そのものは、彼女の類まれなるセンスによって制御されたものであり、その魅力が発せられるのは、演技の時だけかもしれない、という予想もあった。それであっても、基本がアニメオタクの私としては、別に何の問題もなく、よりキャラ寄りの歌を歌ってくれるのならば、より良し、くらいに思っていた。
しかし、彼女は、こちらの予想を大きく超えてきた。彼女の声の魅力、霞む様な声の輝きが、彼女の歌声の全てに感じられた。歌の中の歌詞の内容による演技の魅力はもちろん、曲の音程すら完璧に仕上げてきていた。それは、アーティストとして十分世間に通用するレベルであり、それを上回る、伝説の萌え声優としての魅力を纏っていた。これは、彼女の声優としての活躍を嬉しく思っているファンとしても、望外の喜びだった。
そして、このライブで花澤香菜が語ったことで、もう一つ喜しい事があった。それは、彼女がアーティスト活動で「より上を目指す」事を明言したこと。具体的には、彼女の往年のマネージャーの夢である「武道館」を目標としていること。そして、ファンに対して「ついてきてくれますか?」と語りかけてくれたこと。
花澤香菜は、以前はアーティストというイメージではなかった。子役出身として、ステージの空気を読んで受けを狙う「芸人」の気質を持っていた。それは、イベントでは重宝する態度だが、花澤自身がアイドルとしての立場に行くには、マイナスだっただろう。そんな時代を過ごしたからか、いざアーティスト活動をしても、過去の自分との整合性をつけられず、しばらくは落ち着かない、控えめな態度を取っていたように思う。
しかし、そんな彼女もデビューして一年。彼女のアーティストのとしての面は、既に定着しているだろう。そして、自身のアーティストとしての目標をファンに示した事により、彼女がこのアーティスト活動に対しても本気であることが明確に伝えられた。
今こそ、花澤香菜は、アーティストとしての出発地点に立っているのだと言う事を感じさせれらた。
ライブの途中、彼女はライブパンフレットを取り出し、そこに描かれた、今まで彼女が演じてきた、そしてこれからも演じていく多くのキャラを紹介していた。
花澤香菜には、そんな、とても魅力的な持ちキャラが沢山存在する。声優である彼女は、既にして途轍もない力を内に秘めている。
花澤香菜が、今後とも積極的に活動をしてくれさえすれば、いつかきっと彼女の夢も叶うであろうと確信できるし、もしくはそれ以上のところまで行けるのではないか、と思えるライブだった。
今後の彼女の活躍を、大いに期待したいところだ。

claire

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