朗読劇 私の頭の中の消しゴム 銀河劇場

この企画には参った。実は、私はこの「私の頭の中の消しゴム」という物語が大嫌いなのだ。声優の朗読劇、それも茅原実里主演と言う事でマストイベントだとは思っていたものの、それでもどうにも気乗りがしない。それが無意識に行動に出てしまったのか、気が付いたら遅刻していた。演者には本当に申し訳ない事をしてしまったものだ。
こういった物語が嫌いな理由は、簡単に言えば直球のお涙頂戴ものがダメだから。別に悲劇がダメという訳ではない。もっとひどい悲劇であっても良い。ただ、この悲劇は現実で当たり前に存在するものであり、物語にする意味が無いと思っているから。まあもっと理由はあるけれども、とにかくこういった物語はダメ。なので、あくまで脚本構成美と演出・演技のみ堪能するという感じだった。実際、脚本構成的にはとてもよく出来ているんだよね。それだけに辛い。
朗読は、それはもう素晴らしいものだった。朗読劇との事だけれども、実際のところピンマイクを使って幾らでも体を動かせるので、台本を読む動作以外は体も演技が出来る状態。その台本もあるときは手紙になったり、メモになったり、スケッチブックになったりと、場面場面の演出に加わっているので、どんどん物語に引き込まれていく。この、朗読劇だと思っていたものに、思いもかけない目で見える演技が加わっていく演出が実に憎い。
そして演者も、こうした体も使った「演技」として、とても真に迫った実によい舞台を作り上げていた。いや、みのりん途中で物語に入り込みすぎて、マジで泣いてしまっている場面があったような。もちろん、演技のクオリティも最初から最後まで完璧だった。
茅原実里が持つどこまでも幸福を感じさせる声が、悲劇に飲み込まれていく過程で、時に生々しくもあり、しかし、時にまるで女神の様な神々しさを感じさせる場面もありと、正にキャラクターに合った迫真の演技だった。
やはり、声優の朗読劇は素晴らしいなあ。まあ、今回は個人的に運が悪かったとして、もっと色んな演目を演じる機会を増やして欲しいものだ。