10年目のインセスト 〜「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」最終巻〜
読んだよ。
いや、良かった。素晴らしかった。
実際のところ、この作品にはあまり関心してなくて、旨味はあるけれども何処か中身が無い、大衆迎合的ないわば「合成甘味料だけで出来た駄菓子」みたいな印象が最後まで拭えなかった。
けれども、この最後の決着のつけ方によってやっとこちらの心に達した気がする。本物の心が感じられたような。
どんなにヒロイン達が誠実な行動をとっていても、主人公の行動がどうにもそれに追い付いていない。その理由は何なのか、結局はこの最後の決着をある程度見据えていたからだと今になれば納得することが出来る。
そして、その主人公の行動の決着は「インセスト」。なんというか、もしそれを表明していない内は、この主人公は「妹思い」を口実にあらゆる不誠実な行動の理由を妹に押し付けているようなものだった。妹ブラックホール。
しかし、それはダメだよねという話。もしダメならばそのブラックホールを叩き壊さなくてはならない。その際、その超重力に吸い寄せられて周囲を周っていた全ての恒星を吹き飛ばすことが有ろうとも。
実際インセストは魅力的なもの。道ならぬ恋。それは、上面だけを舐めて甘美さを楽しむ事も出来るだろうけれども、どっぷりと浸ってあらゆる世間から敵視されつつ二人だけの世界を作るのもきっと魅力的。
それをラノベの軽い感じで上面だけで終わらせることも出来ただろうけれども、それではブラックホールになってしまった妹は浮かばれない。ならば、どっぷりつかった魅力に落ちていくのが、全ての人間が正しい方向に行ける結末だと思う。より魅力的な世界を作りながらね。
インセストの反道義性については、実は社会的なものであって生物学的なものではない。慣習的と言ってもよい。これに反旗を翻すのは社会への反逆でありそれってさらに魅力的でしょ。
オタク的文化が大衆化されるにつれて、こういった「反逆」は受け取る側の多くの部分からも批判が出てくる可能性は高い。大衆は大衆迎合しか出来ないものだからね。だからこそこういった反逆が活きてくる。物語に意味を与える。
その昔、オタク文化、萌え文化の中心に「シスタープリンセス」というコンテンツがあり、それは結果的にインセストを題材にしていた。その反逆ぶりたるや今思い出しても身震いする思いだw。
その「シスタープリンセス」の活動が完全停止してからほぼ十年。オタク文化の大衆迎合に力を与えたともいえるこの「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の中に、そういった反逆の意志が潜んでいたということには、正直驚いたとともにとても嬉しくもあった。
こういった作品があるからこそ、まだまだ他の作品の中にも反逆の意志が潜んでいるのだろうと信じられる気がする。とても痛快な作品だった。
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- 発売日: 2013/09/26
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