アイカツ、トライスター以降の展開における不可思議さを読み解く 

  • トライスター結成後の不可解さ

アイカツにおいて物語が大きく動き始めたとも言える美月提案によるトライスターの結成だが、その後の展開にはかなり不可思議な点が多い。
まず後を追うように学園長の指示によるソレイユの結成。これ自体はトライスターの話題性との抱き合わせ企画としてありだが、いささか行き当たりばったり過ぎる。まるで、美月の選択の結果によって初めて決めたみたいだ。
蘭がトライスターを辞めることを美月自身が勧める。これはかなり不思議な事だろう。美月の普段の言からすれば、個人の努力こそが全て。蘭を見限ったと言う事では無く、メールを送った時点で美月の本来の趣旨とは違う価値観を認めている。
そして実力主義のトライスターとはかけ離れた自主ユニット「ぽわぽわプリリン」との合流による「スターアニス」結成。この提案も学園長のようだが、なぜあそこまで能力にこだわっていたいた美月がその提案を飲んだのか。
流れ自体はトライスターの話題性に乗じた企画が続いたとして不思議では無いが、当初の美月のトライスターの構想からすると真逆の展開とも言え少し奇妙だ。だがこの奇妙さは、この流れの裏に様々な意図や思惑が隠されていて、物語上で語られていないとすれば理解出来るかもしれない。

  • いちごを中心とした流れ

トライスターは元々美月の提案によるものだったとされている。しかしそれは必ずしも彼女一人の思惑だけから来た案ではなかったとすればどうだろう。美月以外の思惑、それは実質トライスター結成以降の流れを作っている学園長のこと。
美月と学園長はある意味互いの趣旨で対立していて、云わば「賭け」をしていて、その結果によって流れが出来ているとすれば、この不可解な展開を説明することが出来る。
美月はアイカツという物語の初めから自分の相方を探している様子が描かれている。いちごの編入に対しても強い関心を示していた。しかし同時に、美月はそのなるべき相方に相応の実力も求めていただろう。そして、その事は学園長にも認識されていたようだ。
その後、学園長と美月はほぼ結託するような形で学内のアイドル達全員の実力を伸ばす方策を展開していく。その最もたるものがフレッシュガールズカップだが、実際には、その前に一つの大きな決定をしている。それは美月のライブのOAとしていちごを選んだこと。いちごはその経験によって実力を大きく伸ばし、FGCで美月に次ぐ準優勝という好成績を残したと言える。
そして発表されたのがトライスターの結成。流れとしては、いちごの美月ライブのOA、FGC、そしてトライスターメンバー選抜戦。このことからも、トライスター結成は、いちごが選ばれなかったにも関わらずいちごの存在をかなり意識してその前準備がなされていたという可能性がある。

  • 美月と学園長、二人の「賭け」

このいちごを中心とした流れ。そして美月の自身の相方を求める態度。この二つから連想されるのは「マスカレード」の存在だろう。
美月は実力主義を信奉する一方、そこからくる孤独も強く感じていた。そんな彼女が実力があって孤独でもない、伝説のデュオマスカレードという有り方に強い憧れを感じていたとしてもおかしくはない。だからこそ元マスカレード、ヒメの学園長と結託もするし、ミヤの・・・であるいちごにも強い関心を示す。
しかし、学園長には別の認識があったのかもしれない。それはマスカレードが絶頂期に解散した理由を知っているからこその認識。一見美月の趣旨を承認しているようでいて、ただそれだけではない別の道を指し示したいという想いを持っていたのかも。そして、その別の道を自ら指示してくれる存在として、いちごに期待をしている。
美月は伝説のデュオマスカレードに憧れを抱き、それをより強めたユニットとして実力者を3人集めたトライスターの結成を目指す。しかし、学園長はそのただマスカレードの方向性を強化しただけのトライスターとは別のものに期待していた。そして、美月はその学園長「マスカレード本人」の認識には正面からの反発は出来ないし、学園長もかつての自分の認識に憧れる美月を否定出来ない。
そんな認識の違いと立場の複雑さから、2人はその認識の違いをひとつの「賭け」としてその後の展開に張っていたと考えることが出来る。

  • トライスター結成後の「賭け」の流れ

まず、美月がトライスターにいちごを招き入れるかどうか。この選択権は美月にあった。いちごは既にFGCに準優勝するほどの実力をつけているのだから、充分選択に値すると思われるのだが、美月は面接を重視し、認識の違いを理由に蘭を選ぶことになる。
次は学園長のターン。いちごとあおいのユニット「ソレイユ」を結成させ、美月といちごの直接対決が可能な状況を作り出す。
しかしこれが思いもかけない効果を発揮する。蘭は「ソレイユ」を見て、真の実力を出せなくなってしまうのだ。云わばこの時、既に美月は最初の賭けに負けたと言える。美月は蘭を放出し、いちごという存在にあり方について様子を見ざるを得なくなる。
となれば学園長のターンは続く。学園長は更なる手として、実力ではやはり劣るであろう「ぽわぽわプリリン」にも目を付ける。このユニットといちごとのつながりの深さにも着目しているだろう。その「ぽわぽわプリリン」と「ソレイユ」、そして「トライスター」という、実力も人気もバラバラな存在を合わせて「スターアニス」を結成させる。その学園長の行動に、美月も付き合わざるを得ない。
これが今のところの流れだ。美月が最初に張った「いちごを使わない」という賭けに敗れ、その後、それを効果的な反撃の糸口に繋げた学園長のターンが続いているという状況だろう。

ところで、その学園長の張っている「星宮いちご」という存在は、一体どのような存在として学園長に認識されているのだろうか。それこそが、ある意味この「アイカツ」という物語の命題と言えるかもしれない。
星宮いちご」とは何者か。その答えの一端は、物語になんども出てくるセリフに顕われている。
「いちごはいちごだから」
この言葉には、とても多くの意味が含まれているような気がする。
これを読み解き始めるとさらに多くの言を重ねる必要があるので、今はここまでにしておこう。